寄稿・インタビュー
日本とペルーの伝統的な友好関係
-架け橋としての日系社会-
APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議に先立ち、2024年11月14日にリマで開催されるAPEC閣僚会議の機会に、初めてペルーを訪問できることを大変嬉しく思います。
日本とペルーは、昨年、外交関係を樹立してから150周年を迎えました。今年は、日本人がペルーに移住してから125周年に当たります。長きにわたる友好関係を有する両国は、自由、民主主義、人権、法の支配等の価値と原則を共有する戦略的パートナーです。国際社会において大きな役割を担うペルーとは、今後とも、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて共に取り組んでいく所存です。
価値と原則を共有する両国間では、近年、経済分野でも緊密な連携が進んでいます。特に、現在の国際情勢において、世界的なサプライチェーンの強靱化に向けて、銅、亜鉛等エネルギー移行に必要な鉱物資源の生産国としてのペルーの重要性が一層増大しています。また、先月リマで開催された第15回日本ペルー経済協議会では、二国間で協力関係を緊密化すべき分野として、「持続可能な経済発展と経済安全保障」、「経済強靱化」、「人的交流」に関し、活発な議論が行われたことを歓迎します。日本政府としても日ペルー間の協力関係を一層緊密化させていきます。
日本はこれまで、インフラ整備、格差是正、環境・防災対策の分野を中心とした協力により、ペルーの開発努力を後押ししており、ペルーに対するODAの累積額は中南米で最大規模となっています。「新マカラ国際橋建設計画」や「感染症対策及び保健・医療体制整備のための支援」などがその代表例です。特に、防災分野においては、両国は地震、森林火災等の共通した自然災害の経験を有していることから、過去60年以上にわたり日本の知見や技術を活用した防災協力を実施しており、ペルーにおける災害に強い社会の構築に向けて引き続き支援していきます。
また、文化の面においても、ペルーの方々、とりわけ若い世代が、アニメ、漫画、コスプレといった日本のポップカルチャーに関心を抱いていることを嬉しく思います。今後、観光や留学を通じて両国の人的交流が促進され、日本とペルー間の理解が深まることを期待しています。来年は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに日本において大阪・関西万博が開催されますが、ペルーもパビリオンを出展予定です。ペルーの多くの方々の来場を心より歓迎いたします。
このような両国の未来に向けた新たな関係強化や協力の根底にあるのは、やはり日系社会を通じた長い友好関係です。ペルーの日系社会は約20万人、中南米ではブラジルに次いで二番目の規模であり、日本とペルーの架け橋として、大きな貢献を果たしていただいています。皆さんご存じのとおり、昨年12月から、ペルーの最高額紙幣である200ソル紙幣に、日系人女性画家のティルサ・ツチヤさんの肖像が使われています。彼女は、ペルー先住民の神話に欧州の要素を取り入れた独特の作風で知られ、「20世紀のペルー美術に最も影響を与えた人物の一人」とペルーでは称されているということですが、こうした日系人の活躍を私としても誇らしく思います。また、ペルー日系人協会が運営している神内先駆者センターは、高齢者のレクリエーション施設として多くの方に利用され、高齢者福祉の向上に寄与しています。さらに、コロナ禍において、日本人ペルー移住百周年記念病院が、コロナ患者用に国内最大の病床数を提供し、ペルー社会に貢献しました。この機会に、これまでのペルー日系社会の方々の御尽力に改めて敬意を表するとともに、日系社会を温かく迎え入れ、ともに歩んでいただいているペルー社会に感謝申し上げます。
日本は、アジア太平洋地域における最も重要な経済協力の枠組みのひとつであるAPECを非常に重視しており、1998年のペルーのAPEC参加を後押ししたことを誇りに思っています。ペルーが設定した議長年のテーマ「エンパワーメント(Empower)」、「包摂(Include)」及び「成長(Grow)」の実現に向けたペルーをはじめとする関係国・地域との協力を惜しみません。近年、益々重要となっている地球規模課題への対応や女性の経済的地位向上、能力構築を含む包摂的成長について議論し、地域の持続可能な成長と繁栄のための取組を進めていきます。
最後に、ペルー国民の皆様のご多幸と、相互理解と相互尊重に基づく友好関係がこれまで以上に発展し末永く続くことを心より願っています。
日本国外務大臣 岩屋毅