中南米
中南米日系社会ネクストリーダーズフォーラム
6月29日,JICA市ヶ谷ビル国際会議場において,JICAとの共催にて,「中南米日系社会ネクストリーダーズフォーラム」が開催されたところ,概要は以下のとおりです(司会:アルベルト松本氏(イデア・ネットワーク代表),参加者約180名)。
1 全体概要
本フォーラムには,「次世代日系人指導者会議」プログラム被招へい者,JICA招へい者をはじめ,在日日系社会に関心を有する若者など約180人が参加しました。昨年実施した「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」の有識者,メディア関係者,在日日系社会支援者,在京外交団も参加したほか,分科会も活発な議論が行われました。
2 堀井学外務大臣政務官挨拶
冒頭,主催者側を代表し,堀井学外務大臣政務官より,中南米地域と日本との関係の根底には日系人の存在があり,日系人が現地で獲得した信頼が日本への信頼に繋がっている,日系社会との連携についてより多くの関心を集め,本フォーラムによって様々な交流が深まることを期待している,在日の日系社会は日本の発展と中南米地域との交流に重要な役割を果たしていますが,地域社会との共生や子どもの教育等で困難もあり,日本の社会が彼らをより温かく迎え入れることが期待される旨挨拶しました。
3 有識者4名による講演
続いて,各々の分野で活躍する代表4名(ヘンリー・ユウゾウ・アリムラ・IKEEN社CEO,吉田・ジオゴ・えいじ・筑波大学大学院生,長尾晴香・Viva!!おかざき代表,黒木壕・日本体育大学国際交流センター硬式野球部助監督)による講演が行われました。講演においては,豊かな文化的背景や広い世界観といった,日系人が受け継いできた遺産を次世代に引き継いでいくことや,その遺産を社会にアピールしていくことの重要性について言及がありました。また,外国人住民をコミュニティに受け入れていくための秘訣や課題に関する議論が行われた他,ブラジル社会に対する日系人の貢献が認められていることを実感しており,日本においても移民の歴史をもっと知ってもらうことが重要である旨の発言がありました。
4 各分科会に分かれた議論
(1)グループ A
テーマ:地域社会の発展に向けた貢献 日系社会が出来ることは何か。日本文化の発信やスポーツ交流の役割。非日系社会との連携のあり方
日系人は,「日系である」という強固なアイデンティティを持ちつつ,日本の文化と居住地の現地の文化の双方に通じており,各地で日本的価値を伝えるとともに,日本に中南米各地の文化を伝えている役割がある旨発表しました。また,海外日系社会と日本のつながりをより強固にしていくには,双方の文化交流を通じたネットワーク形成が重要であるという意見が出されました。
(2)グループ B
テーマ:中南米日系社会の更なる活性化に向けた取組 国境を越えた連携や世代間の連携を深める具体的な方途は何か
重要なのは異なる世代間の双方向の交流であり,交流を通じて幅広い世代を取り込むことができる事業を模索していくことである,さらに,他国の経験を共有し,新たな事業やワークショップについてのブレーンストーミングを行うことが重要である旨発表されました。
(3)グループ C
テーマ:中南米日系社会を通じたビジネス連携 WIN WINの関係を如何に構築するか
ビジネス連携促進には,まずは幾つかの具体的なステップを踏み,距離を縮める必要がある旨発言しました。日系人の間で勉強会を行い日系人間のネットワーク構築を促進する他,日本人も含めた大きなネットワークを構築する必要がある,人間的な付き合いも深化させていくことが重要である,また,そのためにはオールジャパンでプラットフォームを構築させていく必要もあると考える旨発言しました。
(4)グループ D
テーマ:日本の日系社会との連携 多文化共生の実現に向けて求められるものは何か
まず日本に来る前の日系人の取組としては,予め日本社会によりよく溶け込めるよう,日本滞在の目的に合わせ,文化や言語等の面の研修を行うことが有益であるとの意見が出ました。また,就労目的の訪日であれば,人材派遣会社がそうした社内教育を強化させることが重要であるとの意見が出されました。
(5)グループ E
テーマ:小規模日系社会の発展のありかた 消滅の危機に直面する日系社会の反転攻勢は可能か
小規模な日系社会が,そのアイデンティティを次世代に伝え,さらに強固なものにしていくためには,コミュニティの構成員がコミュニティを大切にしていくことが必要である,日系社会という存在,実情について関心を集め,周知するためにも,各地の日系社会について日系人が情報発信をしていくべきであるとの意見が出されました。また各地の日系人が,こうした場により積極的に参加し,交流を図るべきであるとの指摘がなされました。
5 越川JICA副理事長による挨拶
日系社会は国際協力の重要なパートナーである,在日の日系社会による日本や各国の日系社会への影響を分析し,JICAがすべきことを実施していく,また,日系社会の皆様との絆をこれからも大切にしていきたい旨挨拶しました。