寄稿・インタビュー
エクアドル紙「エル・テレグラフォ」への林外務大臣寄稿(令和5年1月6日)
~共に歩み、共に未来を築く~
林日本国外務大臣のエクアドル訪問
今回、初めてエクアドルを訪問します。この美しい国エクアドルを訪問することができ、大変嬉しく思っております。温かく迎えてくださったエクアドル政府及び国民の皆様に心から感謝します。
日本とエクアドルは、太平洋を介した隣国として、長年に亘り、政治、経済、開発協力、文化及びスポーツと幅広い分野で、広く深く着実に友好関係を育んできました。これは、両国の多くの人々の善意の交流と相互理解の醸成により積み上げられたものです。2018年には、エクアドルと日本は外交関係樹立 100周年を迎え、両国において、多数の記念行事が開催されたほか、新しい交流が芽生えました。
また、現在、約300人の日本人・日系人がエクアドルに滞在し、両国を結ぶ友好と親善の礎となっています。この地に根付いて活躍されている彼らを温かく受け入れたエクアドル国民の皆様に深い謝意を表したいと思います。
このような長い友好関係を持つ両国を繋ぐ重要な日本人がいます。日本の千円札の肖像画にも採用されている著名な野口英世医学博士です。野口博士は、両国の外交関係が樹立された1918年、当時エクアドルで大流行していた黄熱病などの感染症研究のため、グアヤキル市の黄熱病研究所(現在の国立熱帯衛生研究所)で研究を行いました。野口博士は、目の前で苦しむ多数の人々の命を救い、その功績によりグアヤキル大学などから名誉博士号を授与されました。キト市やグアヤキル市の道路にノグチの名前が付けられ、また、キト市郊外にはノグチの名を冠した学校があります。
奇しくも、約100年後に世界は新型コロナ感染症拡大の脅威にさらされ、感染症対策の重要性を再認識することとなりました。野口博士の遺志を継ぐ人々の貢献により、日本は様々な地域の感染症対策に尽力し、人間の安全保障の実現にも貢献してきました。そして今、日本とエクアドルは連携してこの新型コロナの脅威に立ち向かっています。
日本は、エクアドルの最大の資源である人材の育成に貢献すべく、国際協力機構(JICA)の研修事業を通じ、教育、農業及び環境等幅広い分野において、研修生の受入れや日本人専門家・海外協力隊の派遣を実施してきました。また、地下水開発、上水道整備や医療分野などについても、地域の皆様の生活水準向上のため、エクアドルの隅々まで行き渡るよう、無償資金協力を実施してきました。
最近では、新型コロナ感染症対策の無償資金協力により、CTスキャナー等の医療機材、また、ワクチン保冷機材等のコールドチェーン整備を支援し、さらには、感染拡大により深刻な影響を受けた社会保障分野や子供の低栄養改善を含む保健分野の改善や、経済・社会の安定及び開発努力の促進に寄与するための協力も進捗しています。今後もエクアドルの持続的開発のため、寄り添いつつ共に歩んで行く考えです。
両国経済関係にも大きなポテンシャルがあります。近年、日本のスーパーでは、エクアドル産のバナナ、ブロッコリー、カカオを目にする機会が増えてきました。また、2019年末には健全な投資・経済交流促進の基盤となる租税条約が発効しました。エクアドルには豊かな資源もあり、外に開かれた経済政策をとっておられますので、こうした環境を活かし、更なる経済関係強化に向けてエクアドルと共に取り組んでいきたいと考えています。
エクアドルの方々が日本文化や伝統に高い関心を寄せられていることを大変嬉しく思っています。特に若者の間では、アニメ、漫画、コスプレといったポップカルチャーが人気を博しているほか、武道、生け花、茶道、折り紙、盆栽などについて、習いたい、日本文化の精神を勉強したい、知識を深めたいと願う人がとても多いと聞いており、とても光栄で、皆様の御要望に応えるべく、日本文化を皆様に紹介していきたいと思います。
日本とエクアドルは、地理的に遠く離れていますが、国民の間の心の距離は非常に近いものがあります。日本は、このような人的交流を一層促進し、両国の絆を次世代にも引き継いでいきます。
日本とエクアドルの協力は、国際的な舞台でも拡大しています。今月から2年間、両国は国連安保理非常任理事国を務めます。この激変する国際情勢の中、自由、人権、法の支配等の基本的価値及び原則を共有する民主主義国家として、また、お互いにとってかけがえのないパートナーとして、インド太平洋地域のため、国際社会の平和と安定のために、オルギン外務・移民大臣と連携してその責務を共に果たしていきたいと思います。
今回の私の訪問は、エクアドルとの関係を、二国間関係の文脈で一層強固なものにするとともに、国際場裡においてもエクアドルと強固に連携したいとの、日本としての強い意志の表れです。
最後に、日本とエクアドルの関係が、一層の成長と発展を経て、両国国民に幸福と信頼の果実をもたらすことを祈念し、私のメッセージとさせていただきます。