寄稿・インタビュー
外交関係樹立120周年を迎えるパナマとの新たな連携の針路
日本の中南米外交イニシアティブ
パナマの皆様、私の外務大臣として初めての中南米訪問先で、パナマを訪れることができることを大変嬉しく思います。
私の今回のパナマ訪問の目的は二つ。歴史的二国間関係の一層の強化、そして、その礎の基に、地域諸国を巻き込んだ、日本の新たな中南米外交イニシアティブのスタートをパナマと共に切ることです。
120年目の二国間関係、そしてその未来へ
120年前、日本はパナマにとってアジアで最初の外交パートナーとなりました。以来、日パナマ関係は、共有する価値と原則、パナマ運河を軸とする経済関係、そして人と人との交流により発展してきました。この歴史的二国間関係を、本年の日パナマ外交関係樹立120周年であることも契機としつつ、さらに「フトゥーロ(将来)」に向けて具体的に強化していく必要があります。
今年4月から、パナマの一般旅券を持つ方には、日本での短期滞在査証が免除されます。国民相互間の理解の基礎となる人的交流が、これを機に一層進むことを期待します。日本からは、昨日まで若者10名が青年交流事業でパナマを訪問していました。パナマの皆様に温かく迎えられた彼らは、両国関係の「フトゥーロ(将来)」の担い手となることでしょう。
そして日パナマ協力の新たな象徴であるパナマ・メトロ3号線事業が着実に進んでいます。パナマ市の渋滞や大気汚染の緩和に貢献するこのプロジェクトは、日本にとって中南米地域で最大の円借款事業であり、パナマの持続可能な経済発展や環境保全への日本のコミットメントを象徴しています。先月、シウダ・デル・フトゥーロ(未来都市)駅に日本からの車両が到着しました。日パナマ関係の「フトゥーロ(未来)」がパナマの皆様のより良い生活に貢献する日を楽しみにしています。
中南米外交イニシアティブを通じた地域・国際協力
今回の訪問の中で、日本と中南米諸国の協力の新たな一章、「中南米外交イニシアティブ」のスタートをパナマと共に切りたいと考えております。
日本はこれまで中南米諸国との間で、「共に」未来を切り開く外交を展開してきました。共有する価値や原則を基に「共に」世界を導き、互いが互いを必要とする経済関係を通じて「共に」発展し、人的交流によって「共に」啓発するという3つの指導理念に基づく協力です。
今回の私のイニシアティブは、このパートナーシップの理念を堅持しつつ、今日の国際社会で重要性を増すテーマを切り口とした新たな連携を積み増そうとするものです。そこでは、地域横断的、あるいはグローバルな課題の解決に向けた「多様なネットワーキング(ミニラテラル)」も駆使したいと考えています。 そして、私が中南米諸国と連携したいテーマに含まれる「海洋」と「ジェンダー」において、パナマは鍵となる協力パートナーです。
まず「海洋」。言うまでもなく、日本とパナマは太平洋で結ばれ、海のもたらす恩恵によって共に栄え、自由で開かれた海洋の重要性を誰よりも知る海洋国家です。日本は、インド太平洋を「自由で開かれた海」とするための取組を推進してきました。パナマは両大洋を結ぶ海運の要衝として、運河の安全な利用環境を確保し、発展させてきました。地域・国際社会の海における「法の支配」の強化に、日本はパナマと共に取り組みます。
「ジェンダー」。日本は主要外交政策の一つとして、WPS(Women, Peace and Security)を推進しています。これは、女性自身が指導的な立場に立って紛争の予防や復興・平和構築に参画することで、より持続可能な平和の実現に近づくことができるという考えに基づく政策です。パナマでも、女性省が創設され、政府を挙げて女性の保護、女性の活躍を支援していることに敬意を表します。今般、日本政府は、UN Womenを通じ、パナマを含めた中米移民女性の保護のために総額2.1百万ドル相当の拠出を決定しました。中米地域、そして国際社会におけるWPSの具現化に向け、パナマとの連携を一層強化していきます。
120年前にパナマ運河建設に携わった日本人技師として知られる青山士氏は私と同じ静岡の出身です。同氏はチャグレス川周辺の測量からガツン閘門の側壁の設計に尽力され、その経験は、帰国後の治水事業にも存分に活かされたと聞きます。
私も外務大臣として、先人が育んできた友情と信頼に支えられる両国関係の更なる飛躍、そして中南米地域、国際社会の発展に向けたパートナーであるパナマとの新たな連携の可能性を拓いて行くべく、堅実に取り組んでいく決意です。