パナマ共和国
ラ・プレンサ紙(パナマ)への茂木大臣寄稿 (令和3年7月17日付)
パナマと共に自由で開かれた国際秩序の維持と強化を目指して
このたび、日本の外務大臣として8年ぶりにパナマを訪問できることを大変嬉しく思います。
歴史を紐解くと160年前、1860年に日本が米国に派遣した使節団の侍たちが、サンフランシスコに寄港した後にパナマ地峡を列車で通過し、米国の首都ワシントンに向かいました。これが日本とパナマの最初の交流と言われています。その後、1904年の外交関係樹立以来、両国は良好な関係を維持し、国際場裏でも協力しています。
パナマは、南北米州を結ぶ地点に位置し、太平洋とカリブ海、その先にある大西洋を結ぶパナマ運河を擁しています。特に海洋国家であり、パナマ運河の主要な利用国である日本とパナマは深い協力関係にあります。
このようなパナマとの関係の一層の強化に向けた新たなページを開きたい、そして私が外相就任以来進めている「包容力と力強さを兼ね備えた外交」をパナマで自ら推進したいと考え、今回の訪問を決めました。この訪問を通じて、日本とパナマを結ぶ友好の絆を強化し、国際社会が直面する課題に連携して対応していくことを確認したいと考えています。
パナマと日本の間では幅広い分野で協力関係が進展しています。そのうちいくつか特筆すべきものは次のとおりです。
国際社会の変動が加速化、複雑化する中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持し強化していくことは、かつて無いほど重要です。このような中、日本は自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する伝統的友好国であるパナマとのパートナーシップをさらに強化したいと考えています。
世界が直面する新型コロナ問題への対応には、国際的な連携が不可欠です。先月、日本はGaviとCOVAXワクチン・サミットを共催し、計10億ドルの拠出を表明しました。本年末までに、ワクチン18億回分のために必要とされる資金目標(83億ドル)を大きく超える額の確保に貢献しました。パナマに対しては、保健・医療体制強化のために540万ドル(決裁注:6億円)の支援を実施してきています。
数々の自然災害に見舞われつつも困難な課題を克服した経験を有する日本は、気候変動問題にも真摯に取り組んでいます。パナマも、豪雨や、厳しい干ばつによる運河の水位低下など、気候変動の影響を深刻に受けています。日本は昨年、「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、今年4月の気候サミットでは、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%削減の高みに向け挑戦を続けていくことを表明しました。日本は、気候変動の影響が軽減された地球を次の世代に引き継ぐために、国際社会が直面するこの課題にパナマと共に取り組んでいきたいと考えます。
貿易・投資は持続可能な発展の鍵です。パナマには戦略的な地の利、パナマ運河、政治・経済的な安定に支えられた金融ハブなど多くの強みがあります。両国の更なる発展のためにも日パナマ経済関係を後押ししていきたいと考えています。
7月23日には東京オリンピックが開幕し、パラリンピックがそれに続きます。世界が新型コロナという大きな困難に直面する今だからこそ、世界が団結し、人類の努力と叡智によって難局を乗り越えていけることを、世界に発信したいと考えています。「スポーツの力」を通じて、未来をになう、子どもや若者にも、夢と感動を伝えたいと思います。また、東京大会実施にあたって、パナマと、そのホストタウンである愛媛県と今治市との交流が更に発展することを期待しています。
東京オリンピックには、パナマから陸上、ボクシング、自転車などの選手が参加されます。パナマ選手団が活躍され、素晴らしい成績を収められることを願っています。
日本国外務大臣 茂木敏充
ラ・プレンサ紙(パナマ)への茂木大臣寄稿(令和3年7月17日付)(スペイン語)(PDF)