平成17年11月22日
11月21日、小泉総理大臣は、20日から22日までの日程で来日中のプーチン・ロシア連邦大統領と約2時間半会談した。同会談の概要は以下のとおり。(共同記者会見記録はこちら )
なお、大統領の訪日は2000年9月以来約5年振り、小泉総理との会談は11回目である。
(1)2003年1月に小泉総理とプーチン大統領が採択した「日露行動計画」に基づき、日露関係が幅広い分野で順調に発展していることを確認した。
(2)「日露行動計画」に基づく協力の更なる強化のため、12本の実務文書(一覧・本文)を作成した。
(1)来年のサンクトペテルブルク・サミットの際の小泉総理のロシア訪問、フラトコフ首相の日本訪問、防衛庁長官及び海上保安庁長官のロシア訪問を始めとする、様々なレベルの政府間協議を活発化することにつき合意した。また、プーチン大統領より小泉総理に対し、モスクワを公式に訪問するよう正式に招待があった。
(2)両国を巡る国際環境の大きな変化にかんがみ戦略的協力関係を確立する必要があるとの観点から、我が国外務大臣とロシア安全保障会議書記の間の戦略的対話を開始することにつき合意した。
(1)小泉総理より、1956年の日ソ共同宣言、1993年の東京宣言、2003年の日露行動計画等の諸合意はいずれも極めて重要かつ有効であり、これらに基づいて平和条約締結交渉を継続していく必要がある、日露両国には、四島の帰属に関する問題を解決して平和条約を可能な限り早期に締結するとの共通の認識がある、その意味で真剣な話合いを行うことは重要である、日露双方が受け入れられる解決を見いだす努力を続けていきたい旨述べた。
(2)これに対してプーチン大統領より、この問題を解決することは我々の責務である、ロシアは本当にこの問題を解決したいと思っている、平和条約が存在しないことが日露経済関係の発展を阻害している、その一方で、この問題は第二次世界大戦の結果であり、他の問題への連鎖という難しい問題がある旨述べた。
(3)両首脳は、平和条約締結問題につき、これまでの様々な合意及び文書に基づき、日露両国が共に受け入れられる解決を見出す努力を行うことで一致した。
(4)小泉総理より、国後島沖で拿捕された「第78栄幸丸」の速やかな解放を要請したのに対し、プーチン大統領より、解決できない問題はない旨述べた。
(1)両首脳は、日露間の貿易高が拡大している(今年100億ドルを突破する見込み。)ことを歓迎した。
(2)両首脳は、ロシアのWTO加盟に関する日露二国間交渉の妥結を確認した。
(1)小泉総理より、太平洋パイプラインは日露双方にとって戦略的利益があり、是非協力していきたい旨述べた。
(2)これに対しプーチン大統領より、太平洋までパイプラインを繋げることについては政府決定がなされている、太平洋に繋げるからこそバイカル湖北回りルートを選択した、是非日本と協力していきたい旨述べた。
(3)両首脳は、太平洋パイプライン・プロジェクトを早期かつ完全に実現するための日露の協力について、来年のできるだけ早い時期までに政府間の合意を目指すことで一致した。今回、この内容を盛り込んだエネルギー協力に関する文書を、麻生外務大臣・二階経済産業大臣とフリステンコ産業エネルギー大臣との間で署名した。
(1)両首脳は、日露間の人の交流を今後3年間で3倍に増加し、約40万人を目指すことで一致した。
(2)日露青年交流事業を拡大強化していくことで一致した。
(3)両首脳は、来年、日本で「ロシア文化フェスティバル」が開催されることを歓迎した。
(1)小泉総理より、高齢化が進むシベリア抑留者の方々の心情に配慮し、記録開示、遺留品の返還等についてロシア側が今後一層協力を強化することを期待する旨強く要請した。
(2)これに対しプーチン大統領より、仮に支障があるとすれば官僚主義によって対応が遅いということであり、支障の克服は可能である、協力したい旨述べた。
(1)小泉総理より、露中共同軍事演習について透明性が重要である、また、対中武器輸出は慎重に対処する必要がある旨述べた。
(2)これに対しプーチン大統領より、露中共同軍事演習について透明性が重要であることにつき同意する、ロシアは武器輸出のリーダーではないが、自らの責任は十分感じている旨述べた。
(1)小泉総理より、北朝鮮の核問題、我が国にとって重要な拉致問題の解決に向け協力していきたい旨述べたのに対し、プーチン大統領より、先般の六者会合で合意が達成されたことを評価する、金正日総書記と会談した際に拉致問題を提起した旨述べた。
(2)小泉総理より、来年のサミットでロシアが初の議長を務めることへの協力を表明した。
(署名者:小泉総理大臣、プーチン大統領)
(テロとの闘いにおける両国の決意を確認し、テロ関連条約の履行呼びかけ、両国の実務者間交流の促進等の協力を実施。)
(署名者:麻生外務大臣、二階経済産業大臣、フリステンコ産業エネルギー大臣)
(石油、ガス、電力、エネルギー効率・省エネ、気候変動等の分野における日露協力の基本的方向性。)
(署名者:麻生外務大臣、二階経済産業大臣、フリステンコ産業エネルギー大臣)
(「東シベリア-太平洋」パイプライン・システムに関する協力を含め、上記(2)の文書に基づく協力の実施細目。)
(署名者:麻生外務大臣、レイマン情報技術通信大臣)
(情報通信分野における情報交換を行い、両国の専門家間の交流や民間企業間の協力の促進を提唱。)
(署名者:野村駐露大使、シャローノフ経済発展貿易省次官)
(ロシアのWTO加盟に関する日露間の交渉終了をWTO事務局に報告。)
(署名者:野村駐露大使、アレクセーエフ外務次官)
(ビジネスマン、旅行者、報道関係者等への査証発給制度の簡素化を検討。)
(署名者:野村駐露大使、アレクセーエフ外務次官)
(訪日研修、講師派遣等を通じたロシアの公務員養成・企業経営者経営計画への協力事業の拡充。)
(署名者:野村駐露大使、柴田国土交通審議官代理、ストルジャルコフスキー観光局長官)
(観光分野におけるインフラの整備とサービスの向上を目標とし、日露の観光当局間の協議等を実施。)
(署名者:野村駐露大使、アレクセーエフ外務次官)
(地震、津波等非常事態発生時の日露間及び多国間での協力推進。)
(署名者:野村駐露大使、アレクセーエフ外務次官)
(刑事共助条約を締結するための日露間の協議を2006年に開始。)
(署名者:野村駐露大使、アンティポフ原子力局副長官)
(ロシア極東地域における5隻の退役原潜の解体を支援。)
(署名者:原田欧州局長、ヴヌコフ外務省第一アジア局長)
(日露双方が、大使館の定員を30名、総領事館2公館の定員をそれぞれ10名増員。)