東京、2005年5月26日
小泉純一郎日本国内閣総理大臣及びルイース・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ・ブラジル連邦共和国大統領は、
両国の伝統的友好関係及び緊密な経済関係、ブラジル連邦共和国(以下「ブラジル」という。)における約140万人の日本人移住者・日系人の存在、及び、中南米地域におけるブラジルの政治的・経済的重要性を念頭に置きつつ、
日本国のブラジルとの経済協力が両国関係の発展に大きく寄与してきたことを想起して、
ブラジルが貧困問題、とりわけ社会的不平等及び地域格差の解消のため懸命に取り組んでいること、並びに、日本国が社会開発分野を対ブラジル経済協力の柱の一つと位置付けていることを確認し、
両国が、極度の貧困及び飢餓の撲滅などを目標とするミレニアム開発目標(MDGs)の達成のため一層の努力を傾注することを確認して、
以下のとおり、日本国がブラジルに対し引き続き草の根・人間の安全保障無償資金協力、技術協力及び円借款のスキームを有効に活用して協力していくとの認識で一致した。
日本は、ブラジルの草の根レベルに対するきめ細かい援助として、地域の発展等に直接裨益するプロジェクトを従来より数多く実施しており、過去5年間の累計では、件数として185件、金額として9.44億円に上る。
日本政府は今後も引き続き、基礎教育、保健・医療、貧困救済・所得向上等の分野において、ブラジル政府の取り組みを支援する形で草の根レベルでブラジル国民への援助を継続していくことを確認するとともに、特に学校建設等基礎教育に資する支援については、ブラジルに対する草の根・人間の安全保障無償資金協力全体の半分程度を当該分野に振り向けるべく配慮する等、重点的に実施する。その際、ブラジル側は、国内の基礎教育改善のための全体計画の中に本件草の根・人間の安全保障無償資金協力を効果的に取り込んでいくべく、日本側と緊密に連携していく。このような目的のために、日本国政府は、以下の案件に対する支援を実施する用意がある。
日本は、ブラジルに対し、人材育成・技術移転を目的とした技術協力を実施してきた。日伯パートナーシップ・プログラム(JBPP)を通じ、ブラジルと共に第三国に対する技術協力を実施してきた。ブラジルに供与された技術協力の事業総額は、累計で921.63億円(JICA経費実績ベース)に上る。
日本は、環境の保全、社会格差の是正、社会インフラ整備への貢献に重点を置き、引き続きブラジルに対する技術協力を実施するとともに、両国はJBPPのさらなる活用に向け努力する。
日本は、ブラジルに対し、これまで累計で3,265.60億円(E/Nベース)の円借款を供与しており、我が国にとってブラジルは中南米カリブ地域ではペルーに次いで第2位の円借款供与先国となっている。とりわけ、92年のリオでの国連環境開発会議(UNCED)を機に、日本は環境分野へのODAを拡充・強化することとし、環境案件を中心に円借款を供与してきており、これらはブラジルにおける環境改善に大きく貢献してきた。
中でも、ブラジル経済の中心地である大サンパウロ圏でのチエテ川流域環境改善計画は、チエテ川の慢性的な洪水を根絶し、地域住民の防災、生活環境改善に大きく貢献している。
日本政府は、こうした環境分野への支援に加え、ブラジル政府が教育セクターを重点分野の一つとしていることを踏まえ、人材育成への円借款支援の可能性についても今後ともブラジル政府と協議を続けていく。国際協力銀行(JBIC)は、伯教育セクター調査を進めているところ、当該調査の一環として、伯政府・教育関係者等の出席を得て、教育セクターの課題等に関するワークショップを9月に開催することとする。