
小泉総理大臣の国際連合首脳会合出席
(概要と評価)
平成17年9月20日
小泉総理は、第60回国際連合総会の冒頭に開催された首脳会合に出席するため、9月15日にニューヨークを訪問したところ、概要は以下の通り。
1.日程
- 9月15日(木曜日)
- ニューヨーク着
核テロ防止条約署名
アナン国連事務総長との会談
国連首脳会合演説
ニューヨーク発
2.概要
国連首脳会合は、2000年に開催された国連ミレニアム・サミットのフォローアップとして開催されたもので、開催期間は9月14日(水曜日)~16日(金曜日)。170ヶ国以上から元首・首脳等が参加し、演説が行われ、首脳会合の成果として、ミレニアム・サミットをレビューする成果文書の採択が行われた。
我が国からは小泉総理が参加し、演説を行ったほか、この機会を捉え、アナン事務総長との会談や核テロ防止条約の署名を行った。
(参考)国連ミレニアム・サミット
2000年9月に開催。我が国よりは森総理(当時)が出席。平和、安全保障及び軍縮、開発と貧困、人権、国連の強化等広範なテーマを扱った「国連ミレニアム宣言」を採択。
(1)国連首脳会合演説
- 小泉総理は、国連総会首脳会合の2日目に演説を行った。その中で、小泉総理は、開発、平和構築やテロとの闘いに国連は指導力を発揮すべきであり、また、国連は今日の世界の現実を反映すべきであることを訴えた。
- より具体的には、小泉総理は、ミレニアム開発目標達成に向けた努力の強化とその実行の必要性、新しく設立されることになる平和構築委員会を含め、平和構築の分野で日本として役割を果たす用意があること及び包括テロ防止条約の交渉の早期妥結等を訴えた。さらに、過去60年間の国際情勢の劇的な変化及び平和を愛する国家としての我が国の発展と国際貢献を踏まえ、我が国の安保理常任理事国入りの意思を改めて表明するとともに、安保理改革についての今次総会会期における早期決定や、国連憲章から「旧敵国条項」を削除する等、今次総会を国連の包括的な刷新を達成するための行動の会期にするよう訴えた。
(2)アナン国連事務総長との会談
- 国連改革について、小泉総理よりアナン事務総長のこれまでの努力に敬意が表され、日本は、安保理改革を含めた国連改革全体を実現するということで努力を継続しG4を基にこれまで取り進めてきており、今後は米との協力も必要となってくる、また、G4決議案は廃案になったが、これまでの努力は決して無駄ではなかったと考えており、これまで得られた成果を基に更に努力が必要である旨述べた。
- アナン事務総長より、成果文書に関しては大変困難な交渉であったが、相当良い結果が得られた、安保理改革が実現しなければ国連全体の改革が実現せず、今年末までに完結させることが必要、日本がこれから米国ともよく協議してきたいと述べたのは大変良いことであると述べた。
- 最後に、アナン事務総長より、訪日の希望が述べられるとともに、日本のアジアにおける経験を是非アフリカの開発、特に雇用創出における民間・中小企業の育成、下請けの活用等に活かして欲しい旨の発言があった。
(3)核テロ防止条約署名
- 本首脳会合の開催に併せて署名開放された「核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約(仮称)」に、我が国を代表として、小泉総理が署名した。
- 小泉総理は、署名後のステートメントで、9・11同時多発テロ以降採択された最初のテロ関連条約に率先して署名したと述べるとともに、我が国としても今後とも積極的にテロ対策に取り組んでいきたいと述べた。
(参考)
(1)本条約は、平成8年12月に採択された「国際テロリズム廃絶措置」に関する国連総会決議を契機として、平成9年2月から国連の下で交渉が開始され、本年4月13日(水曜日)、国連総会で採択された。本年9月14日から署名開放(現在未発効)。
(2)本条約は、放射性物質又は核爆発装置等を所持、使用する行為等を犯罪として定め、その犯人が刑事手続を免れることのないよう、締約国に対し、裁判権を設定すること、犯人を関係国に引き渡すか自国で訴追すること等を義務付けている。
3.評価
- 多数の首脳級がNYに集まる中、我が国からも、短時間の滞在ながら、小泉総理が出席して演説を行い、我が国の安保理常任理事国入りの意思を改めて表明するとともに、早期の安保理改革の実現を含む国連の包括的な刷新のための行動の必要性を訴えたことにより、高まっている国連・安保理改革実現への機運を今後の具体的進展に繋げていくという我が国としての決意を示すことが出来た。
- 首脳会合で採択された成果文書は、長い交渉の末、バランスと妥協の上にコンセンサス採択されたものであり、全ての国にとって、必ずしも全ての事項に満足のいく内容とはなっていない。特に、我が国にとっては、軍縮不拡散分野に関する言及が行われなかったことは残念である。他方、安保理改革の実現に向けて本年末までに国連総会で検討を行う旨の記述が盛り込まれたほか、旧敵国条項の削除、我が国がイニシアティブを取る「人間の安全保障」への言及、平和構築委員会や人権理事会の設置、事務局・マネージメント改革についての改善措置等が盛り込まれ、国連創設60周年の機会に、開発の問題と国連改革の問題について方向性を示すことが出来たことは大きな成果である。
- アナン事務総長との会談では、国連改革につき率直で緊密な意見交換を行い、特に安保理改革の早期実現につき認識が一致し、我が国の立場に理解を得ることができた。さらに、我が国の、特にアジアへの開発への取組に対しても、高い評価が得られた。
- テロ対策が今回の安保理首脳会合のテーマの一つであったこととも関連し、小泉総理自らが署名開放直後との時宜を得た形で核テロ防止条約に署名することにより、テロ対策への我が国の積極的な取組を国際社会に示すことができた。