小泉総理大臣

小泉総理とコナレ・アフリカ連合(AU)委員長の会談等(概要)

平成18年7月26日

 7月25日、公邸において、小泉総理とコナレ・アフリカ連合(AU)委員長の会談、野口英世アフリカ賞に関する記者発表、及び、小泉総理主催夕食会がおこなわれたところ、概要次のとおり。

1.小泉総理とコナレ委員長の会談(18時00分~19時00分)

(1)冒頭

 小泉総理より、AU訪問の際のコナレ委員長による歓迎に感謝する旨述べた。これに対し、コナレ委員長より、むしろわざわざ日本より訪問してくださったことに感謝する、小泉総理からは二つのメッセージを頂いた、一つは総理が訪問してくださったことそれ自体がメッセージであった、もう一つはAU本部で小泉総理が行われた日本の対アフリカ政策に関するスピーチである、これらはどちらも大成功であり、日本とアフリカの関係を更に強化するものとなった旨述べた。

(2)野口英世アフリカ賞

 小泉総理より、アフリカ訪問の際に提案した賞が、コナレ委員長及びガーナのクフォー大統領の賛同も得て内容が整理され具体化しつつある、骨格が固まってきたので会談後に記者発表したい旨、サンクトペテルブルク・サミットでも自分(小泉総理)から野口英世アフリカ賞について紹介した旨述べた。さらに、総理より、世界には医学・医療を対象とした賞は多いが、アフリカに限定した賞はそれほどないと思う、日本人は野口英世博士のことをよく知っているが、日本がアフリカに限定した賞を作ることにより日本人のアフリカに対する関心を高めることもできると思う旨、TICADに合わせて5年ごとに授賞を行う旨述べた。
 これに対し、コナレ委員長より、記者発表に参加できることは光栄である、本賞は人道的にも重要であり、全てのアフリカ人、アフリカの大統領が歓迎すると思う旨、また、7月初頭のAUサミットで本賞の創設を歓迎するメッセージを発出しようと思ったが、まだ日本で正式発表されてなかったため行わなかった、今回正式発表されたらAUとしてもメッセージを出したい旨述べた。また同委員長より、野口博士は黄熱病の研究中に亡くなったが、その自己犠牲は、日本及びアフリカの青年にとって献身、貢献の象徴となると思う、本賞は世紀を超えて続いていく歴史に残る賞になると思う旨述べた。さらに同委員長よりは、2008年にはTICADⅣが開催され、野口英世アフリカ賞の受賞が行われ、日本がG8サミットの議長国にもなる、この三つが重なるのは日本がアフリカ支援の種を播いてきた結果である旨述べた。
 小泉総理より、2008年にコナレ委員長が引き続きAU委員長であるか否かにかかわらず、また、クフォー大統領がガーナ大統領であるか否かにかかわらず、お二人を第一回授賞式に招待したい旨述べた。

(3)国連安保理改革

 小泉総理より、G4案は採択に至らなかったが、アフリカにも常任議席を与えるべきというのが我が国の立場であるとしつつ、アフリカでの議論の現状を照会した。
 これに対しコナレ委員長より、日本に対していつも言っているが、我々は日本の常任理事国入りを支持しており、それを支持しないアフリカの国は知らない旨述べた。同委員長は、我々はアフリカに常任議席が与えられ、国際社会の正義が実現されるべきだと考えているが、日本が国際社会、特にアフリカに対して行ってきたこと、国連その他の国際的なシステムを支持していること、国際平和や環境問題に貢献していること、多くの日本人が国際機関の要職についていること等に鑑み、それが同じく日本にも適用されるべきであると思っている旨、アフリカの立場はアフリカに拒否権付きの常任2議席が与えられるべきだというものだが、これが世界のコンセンサスを得るのは難しいことは分かっており、如何にして現状から脱却するかを考える必要がある、いずれにせよ、アフリカ諸国も日本の常任理事国入りが重要だと確信しており、日本に協力していきたいと考えている旨述べた。

2.野口英世アフリカ賞に関する記者発表(19時05分~19時15分)(関連資料別添(和文英文))

(1)小泉総理の発言

 コナレAU委員長は既に何回か日本を訪問し、会談する機会があったが、今回も親しく話した。よい会談だった。コナレ委員長は日本を良く知る友人。このような方がアフリカ全体を代表する立場におられることは心強い。
 会談においては、野口英世アフリカ賞や、国連改革について話した。この後予定されている夕食会においても、意見交換を行いたい。
 野口英世アフリカ賞については、エチオピアを訪問したときにコナレ委員長にそのアイデアを伝えたが、各省打ち合わせの結果、今回コナレ委員長同席の下、正式に発表できることをうれしく思う。野口英世アフリカ賞は、対象者、地域ともアフリカに限定されているものではあるが、この賞がノーベル賞にも匹敵するものとなるよう、世界の平和、医学の発展に貢献できる賞としたい。
 コナレ委員長の今次訪日を契機に、アフリカ諸国と日本の友好協力関係を益々発展させていきたい。「アフリカ問題の解決なくして世界の安定と繁栄はない」との森前総理の考えの下にアフリカの問題に取り組んできたが、これからも日アフリカ関係を強化していきたい。
 コナレ委員長の訪日を改めて歓迎し、森前総理も交えての夕食会に向かいたい。

(2)コナレ委員長の発言

 まず今回訪日を招待頂き、総理に感謝する。
 総理が本年5月にアフリカを訪問された際に、エチオピアにあるAU本部を訪れ、日本の対アフリカ政策に関する重要なメッセージを発信されたことに対し、感謝する。このメッセージは、総理が就任以来実現されてきたこと、また森前総理がアフリカ外交として推進されてきた内容と一致している。
 アフリカには、日本の友人しかいない。34カ国のアフリカ諸国が日本に大使館を置いているが、これがその証拠である。
 AUは、日本の国連安保理常任理事国入りを支持している。私自身、アフリカの国で日本の常任理事国入りを支持しない国は聞いたことがない。日本の常任理事国入りは、日本のこれまでの貢献に正義を与えるものである。安保理改革は容易ならざる状況にあるが、この袋小路(impasse)を脱出して安保理改革を実現することが重要である。
 野口英世アフリカ賞に関する総理のイニシアティブに感謝すると共に歓迎する。今回の賞の創設についての総理のイニシアティブに、アフリカの政府は敬意を表している。なぜなら、この賞は人類やアフリカに対する尊敬を示すものだからである。今回の賞の創設は、保健や医療といったアフリカにとって重要性を有する分野におけるイニシアティブであり、あらゆる人々に対する呼びかけとなるものである。また、今回のイニシアティブは、人間に対する信念の表れ、これまでの取り組みの表れであり、歴史に刻まれ、讃えられるものとなる。今回の賞の創設は、日本、アフリカ、そして世界の政府の模範となるものであり、野口博士は自己犠牲、献身の象徴である。
 総理と日本に改めて感謝する。

3.小泉総理主催夕食会(19時20分~21時00分)(森前総理(日・AU友好議連会長)、高添野口英世記念会会長他参加)

(1)日本の対アフリカ支援

 コナレ委員長より、森前総理が沖縄サミットにおいて初めてアフリカの首脳を招聘したことに触れた上で、小泉総理の下日本政府がアフリカ支援に積極的に取り組んでいることにつき高い評価を表明し、国際社会において引き続きアフリカに対する高い関心を維持するための日本の協力への期待を表明した。また、森前総理がAU議連会長として引き続き積極的な活動を行っていることについて謝意を表明した。

(2)小泉総理のアフリカ訪問

 小泉総理より、本年4月末から5月初旬のアフリカ訪問にあたり、エチオピアとガーナを訪問先として選定した理由につき説明したのに対し、コナレ委員長及び同席の在京ガーナ・エチオピア大使より極めて適切な選定でありアフリカ各国ともその訪問を高く評価している旨の説明があった。

(3)野口英世アフリカ賞

 小泉総理より、当時既に多くの業績をあげていた野口博士が敢えてガーナに赴いた勇気に対し胸を打たれた旨説明した。また、同席の高添野口記念会会長より、野口英世記念医学賞について説明した。これに対し、コナレ委員長より、「野口英世アフリカ賞」はTICAD同様国際的にも直ちに認知されることとなろう旨、同賞は人間の安全保障の考え方にも沿うものである旨、また医学研究者・医療従事者に対する刺激となる旨説明があった。

(4)「アフリカ合衆国」(United States of Africa: USA)構想

 小泉総理より、本件構想についてのコナレ委員長の考え方につき水を向けたのに対し、コナレ委員長より、アフリカの将来、特に開発に関わる種種の問題への取り組みを考えるにあたり、アフリカ諸国は一致団結しない限り強さを発揮できない状況にあるところ、アフリカ各国の多様性を包摂しつつ、アフリカ諸国が統一に向けての努力を続ける必要があると確信している旨述べるところがあった。

(5)アフリカの紛争問題

 小泉総理より、アフリカにおける種種の紛争へのAUとして対応につき質問したのに対し、コナレ委員長より、紛争を解決しない限り開発を進めることは出来ないところ、AUとしては紛争が大規模なものにならないうちに解決しうるよう、場合によっては介入する勇気が必要であると述べた上で、ソマリアの現状につき説明があった。特にコナレ委員長は、ソマリア暫定政権は完全な政権ではないものの、アフリカ諸国の総意として立ち上げたものであり、同暫定政権がイスラム法廷連合と対話を進めていく上でも、同暫定政権に対しアフリカ諸国のみならず国際社会が一致して支持・支援していく必要がある、ソマリアでの現在の紛争が周辺国に波及したり、アルカイーダが同地域に浸透したりしないよう、AUと国際社会が一致して取り組む必要がある旨説明していた。

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