小泉総理大臣

新たなアジア・アフリカ戦略的パートナーシップに関する宣言
(仮訳)

 我々、アジア及びアフリカの首脳は、1955年のアジア・アフリカ会議の最終コミュニケに謳われたバンドン精神を再活性化し、新たなアジア・アフリカ戦略的パートナーシップ(NAASP)に向けた我々の2大陸間の将来の協力の道筋を描くアジア・アフリカ首脳会議のために、2005年4月22、23両日、インドネシア共和国ジャカルタ市に集まった。

 我々は、連帯、友好及び協力を中核の原則とするバンドン精神は、引き続き、アジア・アフリカ諸国間でのより良好な関係を助長し、地球的規模の共通の関心事項の解決にむけた、確固たる適切かつ効果的な基盤であるとの我々の信念を再確認する。1955年のバンドン会議は、依然としてアジア・アフリカの将来の進展を導く指針であり続ける。

 我々は、1955年の会議以来、アジア・アフリカ諸国が著しい政治的発展を達成したことに満足をもって留意する。我々は、植民地主義の災禍と成功裡に闘い、一貫して人種主義と闘ってきた。特に、アパルトヘイトの廃止は、アジア・アフリカ協力における画期的出来事であり、我々は、人種主義及びあらゆる形態の差別を根絶するとの我々の継続的な決意を再確認する。過去50年に及ぶ我々の努力の結果、我々はすべて、人権、民主主義及び法の支配の促進にむけて努力する、独立した、主権を有し、平等の国家となった。しかしながら、これらの政治的成果を獲得したものの、我々は、社会及び経済分野で相応の進展を達成していないことを懸念する。我々は、国家建設のプロセス及び社会の統合を絶えず強化する必要性を認識する。

 我々は、1955年のバンドン会議の最終コミュニケに規定され、また、国連憲章に基づく、自決の原則に引き続きコミットしている。特に、我々は、1955年のバンドン会議以来50年間、パレスチナ人民が独立の権利を奪われたままであることに我々の強い遺憾の意を表明する。我々は、関連の国連決議に則り、パレスチナ人民及び存続可能な主権を有するパレスチナ国家の創設を引き続き強く支持する。

 我々は、国際関係への多数国間のアプローチの重要性及び諸国が国際法の原則、特に国連憲章を厳格に遵守する必要性を強調する。アジアとアフリカは、国際社会の多数を占めており、我々は、多数国間機関の改革を含む、地球的規模の課題に取り組むために、多数国間主義を支持し、強化する必要性を再確認する。

 我々は、現在の世界的情勢及びアジアとアフリカに広まりつつある状況により、グローバリゼーションによる衡平な利益の取分を確保するために、共通認識と共同の行動を積極的に追求することが必要となっていることを認識する。我々は、貧困撲滅、開発及び成長を目指した国際的に合意された目標とゴールを達成することを決意し、全ての関係者が関連のコミットメントを尊重する必要性を強調する。我々は全ての地域との協力を強化する重要性を強調する。

 我々は、平和の文化、寛容、宗教・文化・言語及び人種的多様性の尊重並びに男女平等を促進するために、文明間の対話の重要性を強調する。

 我々は、両大陸における地域内のまたは準地域の統合に積極的な進展があることを確認する。しかしながら、両大陸間で大陸規模の地域間協力が更に発展する必要がある。我々は、経験と最良の慣行の共有を通じて、準地域機関間の協力が、成長と持続可能な発展を推進させることを確信する。

 我々は、共通性と多様性、並びに、新たな好ましい進展から生ずる両地域における優位点の活用を通じて、地域を緊密化させる重要性を強調する。我々は、アジア・アフリカ間の協力を強化するための革新的で具体的な方法と手段を検討する上で、全ての利害関係者が共通の責務と重要な役割を有することを強調する。

 この関連で、我々は、アフリカ開発に関する東京国際会議(TICAD)、中国・アフリカ協力フォーラム(CACF)、印・アフリカ協力、インドネシア・ブルネイ後援南南技術協力のための非同盟運動センター、ベトナム・アフリカ・フォーラム、スマート・パートナーシップ・イニシアティブ及びランカウィ国際対話等、既存のアジア・アフリカ連携のイニシアティブを補完し、活用することの重要性を確認する。我々は、結束と最大限の恩恵のために、また、重複を避けるため既存のイニシアティブを合理化し、整合化させることの重要性を強調する。

 我々は、アフリカの開発のための新パートナーシップ(NEPAD)を貧困撲滅、社会・経済開発及び成長のためのアフリカ連合のプログラムとして認識し、これをアフリカに関与するための枠組みとして認める。我々はNEPADの実現に対する支持を表明する。

 我々は、1955年のバンドン会議で唱われているとおり、アジア・アフリカにおける経済発展を促進することの緊急性につき強調する。我々は貧困、低開発、ジェンダー主流化、感染症、環境悪化、自然災害、干魃及び砂漠化、デジタル・デバイド、不公平な市場アクセス及び対外債務が、引き続きより緊密な協力と共同の行動を必要とする共通の関心事項となっていることを強調する。

 我々はアフリカ・アジア地域が自ら及び世界全体と平和的関係にあり、調和的かつ非排他的でダイナミックな連携の中で、また、我々の歴史的結びつきと文化的財産を意識しつつ、各国とともに一致協力することを思い描く。我々は、衡平な成長、持続可能な発展、並びに、生活の質と人々の安寧の向上に対する共通の決意により特徴づけられる裕福なアジア・アフリカ地域を想像している。我々は更に、安定と繁栄の中、尊厳を有し、暴力と抑圧と不公正から自由に人々が生活する思いやりのあるアジア・アフリカの社会を思い描く。

 この目的のために、新たな政治的意思の表明として、我々は新たなアジア・アフリカ戦略的パートナーシップ(NAASP)を、アジアとアフリカの間で、政治的連帯、経済協力及び社会・文化的関係という3つの幅広いパートナーシップの分野での連携を構築する枠組みとして策定することをここに宣言する。戦略的パートナーシップは、平和、繁栄及び発展を達成するための勢いを与え、以下の原則と理想を基礎とする。

  1. 1955年に開催されたアジア・アフリカ会議のバンドン10原則
  2. 異なった社会・経済体制と発展レベルを含む、地域間または地域内の多様性の認識
  3. 相互尊重と相互利益に基づく、開かれた対話へのコミットメント
  4. 全ての利害関係者による非排他的協力の促進
  5. 比較優位、平等なパートナーシップ、共通のオーナーシップとビジョン、共通の課題に取り組む確固たる共通の決意に基づく、実務的かつ持続可能な協力の達成
  6. アジアとアフリカにおける既存の地域、準地域的イニシアティブを補完し、活用することにより、アジアとアフリカの持続可能なパートナーシップの促進
  7. 公正で、民主的、透明性があり、説明責任を果たし、調和のある社会の促進
  8. 発展の権利を含む、人権と基本的自由の促進及び保護
  9. 多数国間フォーラムにおける共同の統一的な努力の促進

 NAASPは、貿易、産業、投資、金融、観光、情報通信技術、エネルギー、保健、運輸、農業、水資源及び漁業などの分野における両大陸間の実務的協力を促進する必要性を強調する。

 NAASPはまた、平和、安定及び安全の確保のための基盤である、武力紛争、大量破壊兵器、国境を越える組織犯罪及びテロリズム等の共通の関心事項に取り組む。

 我々は、平和的手段により紛争を予防し、解決することを決意し、信頼醸成及び紛争の解決並びに紛争後の平和構築のための革新的なメカニズムを探求する努力を行う。

 NAASPは各地域での改善を可能とする環境を創出するために、人材育成、キャパシティ・ビルディングの強化及び技術協力を促進する。

 我々は、政府間フォーラム、サブ地域機関、及び人的交流、特にビジネス、学会及び市民社会という3つの層の相互作用を通じて、NAASPを持続させることを決意する。

 我々は、4年ごとの首脳会議、2年ごとの閣僚会議開催及び必要に応じた分野ごとの閣僚あるいはその他の技術レベル会合の開催を通じて、制度化されたNAASPプロセスを発展させることを決意する。首脳会議に合わせて、ビジネス・サミットを4年に一回開催する。

 我々は、人々の利益と繁栄のための具体的行動の実施を通じてNAASPを実現させることについて共同の決意とコミットメントを我々の国民に対して誓約する。

 インドネシア共和国バンドンにて、2005年4月24日、1955年アジア・アフリカ会議50周年を記念して署名された。

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