平成17年12月14日
於:マレーシア クアラルンプール
(1)今回この美しいクアラルンプールで、一連の会議が行われた。特に歴史的な第1回東アジア首脳会議を成功に導いたアブドゥラ首相をはじめマレーシア政府関係者のご努力に改めて感謝申し上げる。
(2)我が国とASEAN諸国との間においては、経済連携協定締結の動きが進んでいる。経済関係が緊密化しているほか、協力すべき分野として様々な分野があるが、テロの問題、あるいは海賊対策、鳥インフルエンザ、こういう問題についてはさらに協力を強化してきたいと思う。
(3)今回ASEAN諸国、その他の東アジア諸国と、このような協力関係強化について議論できたことは、極めて有意義であったと思う。
(4)今後東アジア首脳会議において、16か国の首脳が、将来の共同体形成を念頭にして、お互いの関係を緊密にしていくと同時に、様々な課題について共同で取り組む場ができたということは日本にとってもASEAN諸国にとっても、また新しく参加された国にとっても有益だと考えている。
(5)会議の合間に議長国のマレーシアをはじめASEAN各国、またインド、ニュージーランド、オーストラリアの各国首脳と有意義な意見交換を行った。
(6)マレーシアのアブドゥラ首相とは、「日マレーシア経済連携協定」に署名し、「マレーシア日本国際工科大学準備センター」の開所式を行った。
(7)また、ベトナムとはWTO加盟に関する二国間交渉を正式に妥結し、経済連携協定交渉に向けた共同検討会合の開始に合意した。
(8)ブルネイとは、経済連携協定交渉立ち上げのための準備協議開始に合意した。
(9)実り多い一連の会合、さらにこれからASEANの会合、ASEANと日本をはじめASEANと中国、ASEANと韓国、ASEANとインド、あるいはASEANとロシア、いわゆるASEAN+1と、ASEAN日中韓、ASEAN+3、さらにこれに加えてインド、オーストラリア、ニュージーランド、こういう会合が次々に開催されていくようになると思う。これはASEAN諸国にとっても、関係諸国にとって、これからのさらなる国際協力、地域の共同体意識、さらに様々な問題に協力体制を作っていく上で、きわめて有益な会合になると思う。
(10)今回このような一連の会合を準備され、そして第一回の東アジアサミットを主催され、来年に継続されていく。並々ならぬご尽力をいただいたアブドゥラ首相に対し改めて厚く御礼を申し上げる。
(1)(記者)
総理は、去る11月16日の日米共同記者会見において、「日米関係が良ければよいほど、アジアを初め世界各国と良好な関係を築くことができる。」と仰った。ただ、私が理解するところでは、従来の日本外交の方針というものは、日米関係が良好であれば、初めてアジア各国とも緊密な対応をすることができる。」というものであったと思う。そこで二点お伺いたいと思う。先ず一つは、総理のこうしたご発言は従来の日本外交の方針を転換したものと受け取ることができるのだが如何。
(小泉総理)
その考えだが、私は基本的に従来の日本の基本方針に沿って考え方を述べたつもりである。一部に誤解がある。偏見というか。日米関係さえよければ、他の国はどうでも良いということは、私は一言も言ったことはない。日米関係が良ければよい程、各国とも良い関係を築いていくように努力しなければならないし、それはできると。日米関係を悪くして、他の国といい関係を築こうと、そのようなことを思わない方がいいということを言ったつもりである。日米同盟と国際協調。これは日本の基本方針である。外交の。これはこれからも変わりない。
(記者)
追加だが、首脳外交をこのアジアの地で締めくくることになるが、今仰ったように総理が重視されている日米関係と中国や韓国を初めとするアジア外交の戦略的な位置づけについて改めて伺いたい。
(小泉総理)
日米関係も日中関係も日韓関係も日本は重視している。日中関係も日韓関係もこれまでにないほど経済関係も拡大している。相互依存関係も深まっている。芸術、文化、スポーツ、人的な交流、今までにない深い交流、広い交流が展開されている。これからもこの様な良好なお互いの相互依存関係、相互互恵関係を発展させていきたいと思っている。その考えに全く変わりはない。
(2)(記者)
先程の署名式の時に気がついたのだが、(小泉総理は)中国の温家宝首相からペンをお借りになったと、その後握手をされたのだが、温家宝首相が何度も指摘されているように、中国と日本の見方の違いがある。今朝の交流によってこの違いは解消されたのか。日中関改善のための他の措置があるのか。
(小泉総理)
私はもともと日中友好論者だと表明しているし、自分もそう思っている。日中関係はきわめて重要である。そういう観点から私は一つや二つの意見の違いや相違があっても、また対立があっても、この日中関係をさらに発展させようという考えに全く今も変わりはない。ただ靖国神社参拝について誤解があるのではないかと思う。私が靖国神社を参拝するのは、内閣総理大臣である小泉純一郎が一人の国民として、第二次世界大戦の反省をふまえて二度と戦争を起こしてはならない、同時に、戦場に出なければならなかった方々、そして命を落とした方々、こういう方々に対する哀悼の念、それを表明するために靖国神社を参拝しているのであって、かつての戦争を美化したり、正当化しようという気持ちは全くない。一人の国民が、総理大臣が自分の国の一施設に、戦争を起こしてはいけない、平和への祈り、戦没者に対する哀悼の念を表すこと、これを批判する気持ちが分からない。日本国民も私を批判することに、なぜそうなるか私は未だに理解できない。人間として平和への祈りとか、戦没者に対する哀悼の念というのは、いわゆる心の問題である。精神の自由というか、こういう心の問題であり、お参りする、お祈りする、こういうことを批判することが私は未だに理解できない。私は、日本がここまで発展してきたのは第二次世界大戦の反省をふまえて、平和国家として、経済大国になっても決して軍事大国にはならないと、国民生活を豊かにする、さらにその経済力を多くの困難に喘いでいる国々に手を差し伸べていこうと、日本一国の力で発展できるものではないと。日本の持てる力というものをできるだけ各国と協力しながら、お互い発展していこうという、これが大事だと思っている。だから私はこれからも日中関係、日韓関係を重視していく。どの国でも一つや二つ意見の違いや対立はある。それを乗り越えて協力関係を築いていくのが普通の姿ではないだろうか。
(3)(記者)
日中、日韓関係について質問する。今次マレーシア滞在で首脳会談を開くことができなかった。このような事態にアセアン諸国より懸念する声があったところ、総理在任中このような事態をどのように解決するつもりか。自分の在任中は日中、日韓会談は開かれないと、やむを得ないと考えるか。
(小泉総理)
自分は今まであらゆる場面において日中間、日韓間の交流を広めている。自分はいつでも首脳会談を中国とも韓国とも行う用意がある。何のわだかまりも持っていない。しかし、中国、韓国が如何に思うか、これはわからない。自分は日中友好論者、日韓友好論者である。両国にとって必要なことである。現にあらゆる分野において協力関係が拡大、深化している。この関係を発展させたいと思う。
(4)(記者)
ASEAN+3及び東アジア首脳会議について質問したい。両会合の宣言を見るとASEAN+3の宣言の中では、ASEAN+3首脳会議の方は、これから2007年に向けて東アジア共同体に向けての方向性が書いてあるが、東アジア首脳会議の宣言には、それが言及されていない。その理由如何。
(小泉総理)
ASEANはASEANだけで、これが主要で、ASEAN諸国を統合していこうとしている。更にASEANは各国とのASEAN+1という会合を持っている。ご指摘のASEAN+3、ASEAN+日中韓も10年近く続けている。そして今回初めてASEAN+3に加えて、インド、豪、NZ、13カ国から16カ国の会合が持たれた。そして将来、ASEAN自体の統合が先に実現すると思われる。そういうことから、ASEANと日中韓のプラス3、この会議を続けながら、さらに今回、東アジアサミットの第一回が行われた。このようなことを積み重ねるうちに私は、お互いどのような点について協力していけばよいか、どのような分野があるか分かっていくと思う。対話を積み重ねていくうちに必ず協力していこうという機運が出てくる。これをまず、統合ということを視野に入れれば、ASEANだけの統合が先ではないかと。その後、日中韓になるのか、東アジア共同体になるのか、そのような点は、今後会議を重ねるうちに、だんだん、お互いの共通した認識が出てくると思われる。今後開かれた共同体、特に最近は世界の一つの地域の問題は、我々に直接跳ね返ってくる。これから何回かこの東アジアサミットの会合を重ねていけば、同時にASEANの会合、ASEAN+1の会合、ASEAN+3の会合が行われるので、このような積み重ねによって緊密な共同体意識が盛り上がってくると期待している。今回の初めてのASEAN+3に加えてインド、豪、NZが加わった第1回東アジアサミットが開催されたことは、将来のこの地域の共同体形成に重要な役割を果たすのではないかと思っている。