平成17年11月19日
(1)今回、釜山を再び訪れることができ、この活気のあふれる当地で多くの首脳と有意義な会談ができたと思う。ここまで準備され、そして私どもを暖かくおもてなし頂いた盧武鉉大統領をはじめ、韓国政府、国民の皆様に厚く御礼申し上げる。
(2)今回、5年後の2010年には日本でAPECの会議を主催することが合意された。今回の韓国における立派な会議ぶり、そして我々を歓迎してくれた皆様方のこの会議を日本で開催する場合にも参考にさせて頂きたいと思う。
(3)様々な議題が議論されたが、今後お互いの国の発展のためにWTOのドーハラウンド交渉は極めて重要であると、この会議成功のためにお互い努力することで一致した。またテロ対策、そして鳥インフルエンザや感染症対策、エネルギー問題、知的財産権の保護などに取り組むということについてもお互い決意を表明した。特に鳥インフルエンザについては、日本としてもこの問題について強い関心を持っており、過日この対応策を策定した。今後とも各国と協力して、この鳥インフルエンザ問題については世界的な問題であるということから、各国とも協力していきたいと思っていた。
(4)また、会議の合間にそれぞれ各国首脳と意見交換をした。盧武鉉大統領とは、二国間関係、更には北朝鮮の問題など、日韓共通の関心事項について率直な意見交換を行った。チリのラゴス大統領とは、日本とチリの経済連携協定の交渉を開始することに合意した。カナダのマーティン首相とは、日本カナダ経済枠組文書に署名して、本年1月の共同声明で謳った創造的な経済関係に向けて前進していくというお互いの認識を確認し合った。
(5)今回、天候にも恵まれて、盧武鉉大統領のふるさとでもある当地でこのような韓国政府、国民の暖かいおもてなしを受けたことに対し、改めて厚く御礼を申し上げる。
(1)日韓、日中関係について
この間のアメリカ・韓国との首脳会談および今回のAPECの全体会議での御発言から、総理が中国・韓国両国との間で、たとえ靖国神社参拝や歴史認識における問題があろうとも、両国との経済や文化の交流を通じ、また日米同盟を良好に保てば、両国との友好関係を深めていける、というお考えは分かった。
伺いたいのは、総理は来年9月まで残す任期1年を切っているわけだが、おっしゃったようなアプローチで、任期中に両国との関係を現状打開、どのような見通しをお持ちか、展望をお聞かせ願いたい。
(小泉総理)
私は、日中友好論者であり、日韓友好論者である。この考え方には全く変わりはない。APECの会議においても、盧武鉉大統領が議長をされ、てきぱきと各国首脳の議論をさばいておられたが、中国の胡錦濤主席も出席の中で、私は日中関係も日韓関係も将来それほど心配していないと、私も日本政府も日本国民も日中友好、日韓友好、この重要性は十分認識している。たとえ一つの問題で意見の相違とか対立があっても、これを全体の友好関係を損なうようなことにはしてはならないと、私も思っているし皆さん方もそうだろうと。
かつて60年前には、アメリカと日本は敵対関係にあった。しかし今、最良の同盟国、友好国になっている。ベトナムのルオン国家主席も出席されていたが、ブッシュ大統領の隣の席であった。30年前、アメリカとベトナムは敵対関係にあったが、今や友好関係を発展させている。
ロシアのプーチン大統領も出席されていた。ロシアのプーチン大統領にも、日本とロシアの間には北方領土問題という対立している問題があるが、これを解決して、平和条約を締結する、この問題が対立しているから意見の相違があるから、日露間の友好関係を発展させないという考えは持っていないと。こういう意見の違いがあっても、一つの問題に対して対立問題があっても、この日露関係を友好的に発展させて、将来、平和的にこの問題に決着をつけて、平和条約を締結するという方針に変わりないと。
ペルーのトレド大統領も出席していた。今、フジモリ前大統領の問題をもって、ペルーと日本には一つの問題があるが、この問題を日本とペルーの友好関係発展のために害するようなことにはしないと、立ち話で、ペルー大統領とも合意をした。
このように一つの問題があるから、一つの意見の相違があるから、全体の関係を損なうような、そういうことにはしないことが必要だと思っている。現に日本と中国は、今や貿易の面においても経済の面においても、人的交流の面においても、文化・芸術・スポーツの面においても、韓国との間においても、未だかつてないほど様々な交流が繰り広げられている。人の交流においても、経済的な貿易の交流においても、未だかつてないほど、日中・日韓とも交流は拡大している。そういうことから、相互依存関係はますます深まっている。お互いの利益のためにも、相互互恵という観点から、日韓・日中関係はきわめて重要である。その関係は、これからもよく両国が認識しながら、様々な分野で今後友好関係を深めていくべきだと私は思っている。短期的に一つの問題で意見の相違があったとしても、中長期的に見てこの問題が両国の関係を悪化させないような方向に持っていくような努力は今後ともしていかなければならないし、お互い時間がたてば、理解され得るものと思う。
(2)小泉総理の靖国神社の参拝について
総理は靖国神社への訪問が個人的な私的なレベルで行われるものだとお話になっているが、しかし、その訪問される姿は電波を通じて全世界に放送される。それから随行の方たちも非常に大規模なものである。これが果たして私的な意味の訪問だというふうに言えるのか。公的な側面が非常に多いと思うが、どのようにお考えか。
(小泉総理)
私は靖国神社に参拝する、それは総理大臣である小泉純一郎が一人の国民として参拝しているのである。今日の日本の平和と繁栄、これは現在生きている人だけで成り立っているものではない。心ならずも戦場に行かざるを得なかった、そして尊い命を落としてきた、そういう方々の犠牲の上に今日の平和があるということを忘れてはならないと。そういう戦没者に対する哀悼の精神から靖国神社を参拝している。更に、二度と戦争を起こしてはいけない、戦争の反省をして、だからこそこの60年間、日本はどの国とも戦争をしていない。自衛隊が海外に行くのも、その国の人道支援、復興支援のためである。日本は第二次世界大戦後戦争もしていないし、海外に人道支援、復興支援のために行った自衛隊の諸君も一発のピストルも撃っていない。一人の人間も殺してはいない。その国の発展のためにいかに協力できるかという観点から、PKO活動と自衛隊の諸君は頑張っている。いわばこの60年、戦後60年というのは、二度と日本は戦争をしない、そして今日の平和のありがたさを噛みしめる、犠牲になった方々に哀悼の精神を表明するという気持ちで私は参拝している。
あれだけの大勢の人と言うが、私は他の国会議員と一緒に靖国神社に参拝したことは一度もない。行くときはいつも私一人である。同僚を行こうと誘ったこともない。一人で行く。ただ、総理大臣という仕事柄、SPはついてくる。TVの映像に映し出されるというご質問だが、どこに行ってもTVはついてくる。靖国神社だけでない。私が行くところはレストランでも映画でもオペラでも、どこでもTV、新聞記者がついてくる。靖国神社だけではない。それをご理解頂きたいと思う。
(3)構造改革
構造改革のことについて伺いたいが、総理は、APECの参加各国に対しても、日本と同じように透明性の高い形で構造改革を進めてもらいたいということをかねがね主張されてきたが、このことは各国が理解をして、そのような形で改革を進めていくというふうにご覧になっているか。また、振り返って、範を示すべき日本であるが、今、改革競争みたいな形になっているが、政府・与党がこの改革路線を巡って対立することがないか、あるいは、痛みを伴う部分の改革も増えてくるということが思われるが、国民に対して理解は得られるか。
(小泉総理)
さる9月11日に行われた選挙において、改革を進めるということに対して、国民は支持をして頂いたのだと思っている。民間にできることは民間にということで、今まで国営の郵便局、これを民営化しようということについても、多くの国民は賛成の声を表明してくれたと思う。改革はあらゆる面において、私は進んできていると、特に、既存のものを変えるということになると、今痛みを伴うというご質問であるが、現状がいいと言う人もいる。しかし、現状のままでこの激しい国際社会の中で果たしてやっていけるのかというと、新しい時代に対応できる、変化に対応できるような体制をとっていかなければならないということから、規制改革とか、あるいは、歳出の改革、地方にできることは地方にという、今日本政府で進めている国と地方の役割の分担、更には歳出を削減して、将来の税負担をできるだけ少なくしようという、財政再建の道筋をつける改革、すべての点において、現状を変えるとなると、反対勢力が出てくる。それを痛みと言うのかどうか、それは取りようである。例えば、郵政民営化一つにとっても、現状維持、現状がいいという人にとってみれば、国家公務員から民間のサラリーマンになるのは嫌だと。組織があった。組織を持っている人は現状(の変化)が嫌だ、ところが賛成だと言う人は組織がない。だからこれは、変えられる方にとっては痛みだととらえるかもしれないが、選挙をやってみて、一般国民多数は、これは痛みととるよりも、改革の必要性ととらえたのではないか。
どのような問題についても、民主主義の世界においては、賛否両論必ず出る。すべてが賛成という問題はほとんどないのではないか。そして、反対論は反対論として一つではない。様々な面から反対論が出る。そういうのをよくわきまえながら、国民の理解と協力を得るのが民主主義の時代ではないか。私は、そういう点から、今までの私の4年数ヶ月に亘る「改革なくして成長なし」というこの路線は、2回の参議院選挙、2回の衆議院選挙、2回の自民党総裁選挙で、信任を受けてきたことから、この改革路線を多くの国民は支持くれると、またこれを進めていくのが私の責務だと思っている。
(4)遊就館について
総理は何度にもわたって、靖国参拝というのは平和を祈る為だと言っておられた。しかし靖国に行く人々は誰しもそれを見ていると、大きな戦争資料館があることに気づかずにはおれない。同館は最近また改築されているが、アジアにおける戦争について、はっきりとした主張を示している。戦争が日本による防衛戦争であったということ、そして、中国において日本は何も悪いことをしていない、中国は侵略者だった、南京大虐殺はなかったと書かれている。こういう見解を総理は靖国神社への参拝によって支持しているのか。その見解を支持していないとすれば、なぜ総理の参拝が曖昧なメッセージをアジアに発してしまうのかというのをご理解いただけるか。
(小泉総理)
その見解は支持していない。私は、前からも申し上げているように、多くの戦没者に対して哀悼の誠を捧げるために参拝しているのである。そして、戦争の反省をふまえ二度と戦争をしてはいけないということから参拝しているものである。