鳩山総理大臣

議長声明(日本語仮訳)
第2回バリ民主主義フォーラム

アジアにおける民主主義と開発の相乗効果の促進:
地域協力の可能性

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I.冒頭

  1. 第2回バリ民主主義フォーラム(BDF II)は2009年12月10日~11日にバリにおいて開催された。ユドヨノ・インドネシア大統領が正式に第2回フォーラムの開幕を宣言した。ボルキア・ブルネイ国王、鳩山日本国首相(共同議長)及びグスマン・東ティモール首相もフォーラムのオープニング・セッションに参加した。BDF IIは閣僚レベルで開催された。アジア地域の指導者達は参加することにより、域内で民主主義を促進するための協力を重視していることを示した。
  2. BDF IIには、アジアより以下の36ヶ国の代表が参加した。
     アフガニスタン、オーストラリア、アゼルバイジャン、バングラディシュ、ブルネイ、中国、インド、インドネシア、イラク、日本、ヨルダン、カザフスタン、韓国、クウェート、キルギスタン、ラオス、レバノン、マレーシア、モルディブ、モンゴル、ミャンマー、ネパール、ニュージーランド、パキスタン、パプア・ニューギニア、フィリピン、カタール、サウジアラビア、シンガポール、スリランカ、シリア、タジキスタン、タイ、東ティモール、ウズベキスタン、ベトナム
    さらに、アジア域外から以下の13ヶ国もオブザーバーとして参加した。
     オーストリア、ベルギー、カナダ、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国
  3. マルティ・インドネシア外相がBDF IIの準備状況、及び、BDF I以降の進展について平和民主主義研究所の活動を含め報告を行った。同外相は、民主主義及び経済開発の促進という二つの目的の相乗効果を発揮させる必要性について強調した。同外相は、民主主義のプロセスは、持続可能であるためには、法の支配に根ざしたものであるべきと述べた。同外相は、民衆の民主主義への参加者意識やオーナーシップを醸成する上で、情報へのアクセスの重要性も強調した。同外相は、ハッサン・ウィラユダ・インドネシア前外相に対して、バリ民主主義フォーラム及び平和民主主義研究所を設立するに当たって果たした中心的役割について謝意を表明した。
  4. ユドヨノ・インドネシア大統領は、冒頭発言において、民主主義と開発は二つの異なる概念であるとしても、相互に絡み合うものであると述べた。同大統領は、民主主義が存在しない中の開発は、弱々しいものとなるだろうと述べた。一方で、開発が進まない中での民主主義は意味がないだろう。このように、民主主義と開発はお互いに強化しあう二つのプロセスである。江経済と政治の関係は幅広い論点をカバーしている。国家はそれぞれ独特な歴史的背景と開発プロセスを有している。多くにとって、民主主義が最終的な目標ではないとの見解もある。民主主義と開発の最終的な目標は、真の意味での公正をもたらす究極的な国民の福祉である。

II.首脳セッション及び一般討論

  1. 首脳セッションでは、インドネシア共和国大統領と日本国首相が共同議長を務めた。一般討論はインドネシア共和国外相が議長を務めた。
  2. ユドヨノ大統領を、導入発言において、改めて、昨年の第1回バリ民主主義フォーラムは、アジア地域における民主主義と開発の密接な連携関係を提起したことを改めて確認した。同大統領は、地域の国々具の社会・経済的状況に適合する経済開発と民主主義を促進するため、統治の正しい政治的・経済的形態を追求することの重要性を強調した。
  3. 日本国総理は、共同議長として、アジア諸国の対話枠組みであるBDFの重要性と、アジア諸国の経験から洞察を得ることの重要性を強調した。さらに、アジア諸国は経済成長と市民社会の形成を実現しながら、それぞれを取り巻く独特な環境の中で、独自の道筋をたどり、民主主義体制への変化を成し遂げたことを誇りに思うべきと述べた。さらに、同総理は、多様性が尊重され人々が尊厳を確保しつつ共生する社会を目指すところの「友愛」の精神にも言及した。同総理は、平和と安全保障は民主主義を確立する上で必要不可欠であるとも述べた。その上で、日本は、民主主義の基盤を強化する方法としての開発援助と、民主化プロセスそのものへの支援を引き続き積極的に行っていくと述べた。
  4. ボルキア・ブルネイ国王は、発言の中で、国民を代表し、国民の価値を守るための政府の責任を強調した。政府は、信念を尊重し、社会的安定を確保し、良心を醸成するやり方について、国民が自信を持ち続けられるようにするべきである。
  5. グスマン・東ティモール首相は発言の中で、地域の国家が民主主義と開発を中心的な課題として取り上げていくことは、不可欠であると強調した。民主主義と開発を通してこそ、国家は人々に対し社会的・経済的進歩を提供し、指導者が未来の道筋を決める上で国民の意見に耳が傾けられることを確保できるようになる。
  6. 首脳、閣僚及び代表団長は、民主主義は多様な発展の方法及び段階の中で現れうること、及び、そうした多様性は尊重されるべきであることを確認した。これは、こうした広範囲にわたる多様な全ての場所に、表現の自由、法の支配、さらには人権といった民主主義に共通の特徴が確立されることが最も重要であるからである。さらに、首脳、閣僚、代表団長は、BDFの精神であるところの、各国の能力を強化するための経験とベスト・プラクティスの共有を通じて、民主主義の分野での協力を醸成していく上での、アジア各国による共同の努力の重要性を改めて確認した。
  7. 参加した首脳、閣僚及び代表団は、戦略的課題として民主主義に関わる協力の優先分野の検討を進めること、及び、アジアにおいて民主主義と開発の相乗効果や地域協力の可能性を高めることに合意した。
  8. 参加した首脳、閣僚及び代表団は、選挙プロセスを含め各国の機構を強化する上で、とりわけ経験やベストプラクティスを共有することにより、民主主義分野での能力開発のための共同の努力の重要性について改めて確認した。この文脈で、BDFは平和民主主義研究所に対して、かかる努力を促進する役割を継続的に果たすことを要請した。
  9. 首脳、閣僚及び代表団長は、民主主義における女性の不可欠な役割について強調した。女性達は、国家の確立を促進していく上で自分たちの役割を十分に担っていかなければいけない。男女の平等は、民主主義を確立する過程における明確な目標となるべきであり、必要な制度によって支援されるべきである。民主主義が未だ達成されず、観念的なものに留まっている場合、男女の平等が確保されることは、極めて重要である。
  10. 首脳、閣僚及び代表団長は、国際的な経済回復を目指す上で、民主主義を巡る協力を強化する努力を、地方、国家そして国際的なレベルで相互に連関させることを強調した。
  11. 首脳、閣僚及び代表団長は、平和な社会と経済的繁栄を築く上で民主主義は中心に位置していることを確認した。そうした目標を達成するため、民主主義は多くの要素を強化する必要がある。その要素には、強力な法的機構、独立し公正な司法システム、自由なメディア、教育、人権を確立するための約束、そして少数派、女性及び児童の権利を保護するための機関が憲法上権力を与えられていることが含まれる。

III.対話セッション

対話セッションⅠ:民主主義と法の支配

  1. 対話セッションⅠでは、平和民主主義研究所の名誉総裁の1人であるハッサン・ウィラユダ博士が議長を務めた。オコーナー豪州内務大臣及びザイヌル・シンガポール外務担当上級国務大臣がパネリストを務めた。
  2. ハッサン博士は、冒頭発言で、民主主義の促進と法の支配には深遠なる関係があると述べた。法の支配により、民主主義の中心的な価値である人権や自由を尊重することが可能となる。民主主義の過程は、透明性、及び国家的に同意を得た一連の法律に基づき運用されるシステムの中で行われる必要がある。しかしながら、過大な組織的硬直性を生み出す結果となる“手続き的法の支配”に陥る危険もある。法はあくまで国家支配の道具である。
  3. 会合では、双方に分けて考えることができない民主主義と法の支配を構築する各国の経験に関する見解及び意見について交換された。発展する法体系、独立した司法プロセスと体系、改革され説明責任を負った公的機関、言論の自由、多様性の尊重、政治プロセスへの参加、及び近代化され、説明責任を負った警察力を構成するに当たりいくつかの共通点が見られる。各国において、民主主義を追求し、民主的な機関を構築して強固な法制度を促進することは、地域における民主主義と法の支配の発展に影響を及ぼすであろう。それ故、地域における国際的な法執行のための協力を進展させることが必要である。
  4. 参加者は民主主義と法の支配における重要な女性の役割を強調した。同参加者は、女性の地位向上などのスローガンを越えて行動することが重要であり、国家建設に真に貢献するためには、むしろ女性の役割を法の支配によってサポートされなければならないと述べた。
  5. 民主的な移行段階にある国々は、各国の統治の問題を解決し、自由、正義、より良い生活、そして、より公正な社会への市民の期待に応えることが出来ることを証明するべきである点につき意見が一致した。政治的自由と、安定と効果的な統治を保障する法の支配の間のバランスを保つことが重要である。
  6. このセッションでは、公正かつ法に従った選挙は、健全な民主主義の印であり、政治的な要望は、法的に認められる方法で、正規の国内のスケジュールの範囲で耳を傾けられうることを保障するための適切なメカニズムが存在していなければならない。
  7. 会合では、民主主義は強固な法体系と定期的な監視によって補強されなければならならず、すべての人は法の前に平等であり、すべての公務員は憲法その他の法の下でその行為に責任を負うことが合意された。

対話セッション II:情報化時代における民主主義と開発

  1. 対話セッション IIでは、シャヒード・モルディブ外務大臣が議長を務めた。ダ・コスタ・東ティモール外務大臣及び査培新中国全人代外事委員会副主任委員がパネリストを務めた。
  2. 会合では、情報化時代は、民主主義に能動的に関与する全ての人々が、前例のない形で水平的かつ垂直的に、開発に参加し、開発の利益を享受することを可能にしていることでコンセンサスを得た。知識と情報時代を通して、民主主義は情報の自由な流れを確保し、民主化プロセスのより広範な包含性と継続性の基礎となる創造的思考と対話を奨励するものとなる。
  3. 会合では、情報化時代は、社会の構成員が、課題を設定するためであろうと、現在進行している開発政策のメリットについて議論するためであろうと、公的な検討に関与できる無数の経路を提供してきた。公的な検討を進めるための民主的な経路が多様であり、社会の構成単位が開発の利益を享受できる可能性を高めている場合には、議論の論点と現実社会の問題の双方が、重要となってくることも合意された。
  4. 会合は、政府が成し遂げた開発が、全ての構成員に周知され、かつ、認識されることが確保されることが、政府の最大の利益となる点で一致した。情報化時代において、メディアという方途が民主的に最大限活用されるが、そうした中でも、開発に成功したというニュースは、公衆に押しつけられるものではなく、読者であろうと聴衆であろう視聴者であろうと、自発的な情報の受け手が、自由に入手できるものである。多くの新しいメディアの誕生は、開発が促進される一方で民主主義も確立されるという中核的なメッセージを発出するため、多くの利用可能な方法を政府にもたらしている。
  5. 第2回BDFに合わせて、このセッションと同一のテーマで、インドネシア政府、ノルウェー政府、インドネシア・プレス協議会及び国際ジャーナリスト協会は「民主主義のための倫理的ジャーナリズムの活動:メディアの活動についての説明責任」会議(2009年12月9月-11日、於:バリ・ヌサドゥア)を開催した。BDF IIは、ジャーナリズムは、社会に自信を確立し、新しく躍動的な民主的な変化へのドアを開き、変革の推進力になり得るというメッセージを発信することを目指した同会議の成果を歓迎する。

IV.将来の方向性

  1. BDF IIは、バリ民主主義フォーラム及び平和民主主義研究所のあり得べき将来の方向性、テーマ、及び、活動計画について、意見交換を行った。BDFの目標と目的、戦略、原則、さらには協力の優先分野について、合意した。
  2. BDF IIは、共同議長からも示唆のあったとおり、ワークショップ、セミナー、訓練、選挙視察、政策指向な調査、及び、現地研究を含む協力の優先分野を進めて行く活動を提案した。BDF IIは、これらの活動の具体化を平和民主主義研究所に要請した。

V.結語

  1. BDF IIは、参加国の間に一定の快適さと進歩への自信の両者を反映した開かれた率直な議論の場所を提供したことにより、参加国によって、賞賛され、評価された。2日間の日程の中で、参加国は各国の成功体験やベスト・プラクティスを共有することが出来ただけでなくのみならず、不十分な点や課題についても共有することが出来た。
  2. BDFは、共同議長を務めた日本政府に対し感謝の意を表明した。BDFは対話セッションの議長及びパネリストが果たした重要な役割を認識した。
  3. BDFは、BDF IIをホストしたインドネシア共和国政府に対しても、感謝の意を表明した。

ヌサドゥア、2009年12月11日

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