平成19年11月19日
11月16日午前11時40分より約15分間、ワシントン訪問中の福田総理は、ホワイトハウスにおいてブッシュ大統領と共同記者会見を行ったところ、概要以下のとおりです。
(1)総理、ホワイトハウスにようこそ。貴総理をより良く知れる機会に本当に感謝し、昼食を楽しみにしている。本件訪米は、重要な訪米である。今回の訪米は、総理がその重要な職務に就任後、初めての外遊である。これは、我々の同盟が平和と安全に不可欠であることを示すものである。二国間の同盟は我々の自由と民主主義に対する強いコミットメントに深く裏打ちされている。総理と自分は、この状況を継続する。我々が決定した事項の1つは、日米関係が安全と平和の礎であることを引き続き確認することである。そして、総理がここにいらっしゃることに感謝する。
(2)我々は、引き続き、我々各々の地域及びそれを超える範囲において、自由、安全及び繁栄を前進させるために協働する。我々は、協働することにより、世界をよりよい場所とすることが出来る多くの方法について議論を行った。
(3)我々は北朝鮮及び六者会合について議論した。私は、日本の六者会合への参加に感謝する。中国、ロシア及び韓国と共に、我々二か国は、北朝鮮が全ての核兵器計画及び拡散活動を放棄するという義務を満たすよう、北朝鮮に対して強く求めている。六者会合は、ある程度の結果をあげている。寧辺のプルトニウム製造施設は、現在、六者の監視下で無力化されているところである。
まだ行われるべき難しい作業が残っている。北朝鮮は、年末までに全ての核計画及び拡散行動の完全な申告を提供することに同意した。完全な申告は、核兵器のない朝鮮半島という目標に向けて六者会合が進んでいくために、北朝鮮が採らなければならない次のステップの1つである。
我々は、北朝鮮によって拉致された日本国民の問題についても議論した。私は総理に対して、私の大統領就任期間中、最も心を動かされた瞬間、すなわち、北朝鮮に拉致された幼い少女の母親が私を訪問した時のことを思い起こさせた。私は彼女に対して述べたことであり、そして私はこれを日本国民に対してもう一度述べるが、我々はこの問題を忘れない。総理、私はこの問題が日本国民にとって如何に重要であるか理解しており、我々が日本人の拉致被害者、あるいは彼らの家族について忘れることはない。
(4)我々はアフガニスタンとイラクについて議論を行った。海上自衛隊は、アフガニスタンの新しい民主主義を支援する不朽の自由作戦に対して貴重な貢献を行ってきた。約6年に亘り、日本の艦船は11か国の有志国に対して800回に近い給油を行った。私は、日本の給油任務を再度許可するために総理が発揮している偉大なリーダーシップに感謝している。日本の航空自衛隊は、イラクに於けるコアリションの努力を支援するために引き続き勇敢に活動している。日本の航空機は、600回以上運航し、多くの国からの約550トン以上の貨物を運搬した。私が大統領執務室において述べたように、私はこの新たな民主主義国家を支援するための日本国民の貢献に感謝している。
(5)我々は、我々の軍の再編について議論した。昼食会においてゲイツ国防長官と共に本件を引き続き議論する。我々二か国は、我々の同盟が21世紀の挑戦に対応できるよう、引き続き我々の兵力態勢の再編を実施する。
(6)我々は、イランについて議論した。総理と私は、核兵器を保有するイランは中東及びそれを超える範囲の安全に対する脅威となることに同意した。我々二か国は、外交を通じて政権の行動を変更するために努力することで一致している。我々は、イランが濃縮の停止にコミットしない限り、国際的な圧力は強まらなければならないこと、そして実際に強まっていくことに同意した。
(7)我々は、ビルマ(ママ)について議論した。総理と私は政権の民主化活動家に対する弾圧を非難した。我々は、アウン・サン・スー・チー女史及びその他全ての政治犯の解放を求める。我々は、政権とビルマの民主的な未来を追求する人々との真の(genuine)対話を支持している。米国の制裁は実施されている。日本は無償援助案件を一つとりやめた。総理は私に対し、日本政府は援助がビルマの人々に直接利益をもたらしているかどうか確かめるため、その他の援助案件を再検討していると述べた。
(8)我々は、我々の強固な経済関係について議論した。福田総理と私は、日本における経済改革に関する総理の計画について議論した。我々は、ドーハ・ラウンドについて議論した。本件については、引き続き昼食会で議論することとなる。
(9)我々は総理に良質の米国産牛肉を(昼食に)お出しする予定であり、こうして牛肉の問題をとりあげるのがいいのではないか。我々は、日本市場が、国際的なガイドラインと合致して、全ての米国産牛肉及び牛肉製品に対して完全に開放されるようになることを希望する。
(10)我々は、気候変動及びエネルギー安全保障について議論した。日米両国は、気候変動及びエネルギー安全保障の問題に対処するにあたり、類似のアプローチをとっている。我々は、気候変動及びエネルギー安全保障に関する将来の世界的な合意の主要素について、主要な先進及び開発途上国の合意を得るための我々の現在の努力が実を結ぶ可能性があると考えている。そして、重要なことは、日米両国が主導する必要があるということである。なぜなら、環境への責務をよりよく果たすための新たな技術の大半を開発するのは、日米両国及びその経済だからである。
(11)最後に、我々はG8について議論した。私は、日本がG8をリードすることに感謝したい。私は北海道洞爺湖サミットに参加することを楽しみにしている。
(12)我々は、素晴らしい議論を行い、これは昼食会において引き続き行われることとなる。総理、米国にようこそ。そして、総理の友情に感謝したい。
(1)初の外国訪問先として、私は我が国の唯一の同盟国である米国を訪問した。そしてただ今ブッシュ大統領と充実した会談を行った。この後の大統領との意見交換も楽しみにしているが、この機会をいただいたので、朝のやりとりを踏まえつつ、若干意見を申し上げたい。
(2)第一に、日米同盟は、両国がグローバルな諸課題に対処していく上で不可欠の役割を果たしており、両国がアジア外交を展開する上でも極めて重要な基礎となっているということでブッシュ大統領と認識が一致した。日米は半世紀以上にわたり、時には困難な時を共に乗り越え、今や強靱な同盟関係を築いたが、今日我々がこうした関係を享受しているのは、日米両国の数え切れないほど多くの市民の努力と交流に支えられているからである。日米の現在の強固な関係を当然視するだけでなく、将来の日米関係を支える基盤を更に強化したいと考え、私から、知的交流を含む日米交流を強化するイニシアティブを説明した。これに対し、ブッシュ大統領から、心からの支持の表明があった。
(3)第二に、日米同盟と日米それぞれのアジア政策との間の「共鳴」(synergy)の問題である。自分から、強固な日米同盟は、アジアに平和と繁栄の基盤をもたらすこと、また、日米同盟をよりどころにしてアジア諸国との関係を一層深化させ、安定的で開かれた、そして繁栄し発展するアジアを実現するということは、日米共通の利益に繋がることであるということである。そして、こうした積極的なアジア外交はひるがえって日米同盟の更なる強化につながるという確信を持った旨申し上げた。自分はこの会議の後、シンガポールで開催される一連のASEAN関連の首脳会議に出席するが、その前にワシントンを訪問し、ブッシュ大統領と協議したのは、こうした考えに基づくものである。大統領から賛同を得て、まことに心強く感じている。
(4)次に、日米が共同して対処すべき課題として、北朝鮮及びテロとの闘いについて話し合った。
(5)北朝鮮の核問題については、六者会合を通じて北朝鮮の核兵器・核計画の完全な放棄を実現させるべく、日米が引き続き緊密に連携して努力していくことで一致した。特に拉致問題については、ブッシュ大統領から、この問題を決して忘れることはないと述べた上で、日本国政府に対する変わらぬ支持を確約してくれることをあらためて表明された。
(6)アフガニスタンを再びテロの温床としてはならない。テロとの闘いに日米両国を含む国際社会が引き続いて取り組んでいくことで一致した。自分からは、海上自衛隊によるインド洋での補給活動の早期再開に向けて法案の早期成立に全力を尽くす旨ブッシュ大統領に伝え、ブッシュ大統領からは、これまでの我が国の国際社会のテロとの闘いに対する支援への感謝、そして補給活動の再開への期待の表明があった。
(7)ミャンマー情勢については、自分から、ミャンマーの民主化、人権状況の改善に向けて強く働きかけている旨説明した。
(8)イランについては、核開発は容認はできない。しかし、引き続き国際社会が一致して圧力を高めながら、イランが国連安保理決議を遵守するよう働きかけていくことで一致した。
(9)この激動の時代において、我が国としては日米同盟を礎として、アジア、そして国際社会の直面する問題に、一層積極的にリーダーシップを発揮して対処していく考えである。
(10)引き続いて、この後ブッシュ大統領と昼食を交えながら、いくつかの重要な課題につき意見交換をする。来たる2008年、我が国は極めて重要な国際会議を二つ主催する。
(11)一つは7月のG8北海道洞爺湖サミットである。重要なテーマは気候変動である。この問題については、ここ半年ほど日米は緊密に協議し、世界の議論をリードしてきた。国連での新たな交渉の場で、実効性ある将来枠組みの構築に向けて具体的な成果を得られるよう、地球温暖化対策で緊密に連携していくことにつき大統領と話し合いたいと考えている。その際、経済成長を維持しつつ、地球温暖化対策とエネルギー安全保障を両立させる科学技術についても有意義な議論ができるのではないかと期待している。気候変動を含め、G8サミットの成功に向け、日米で協調してまいりたいと思う。
(12)もう一つ、国際社会全体で取り組むべき課題として、アフリカ開発支援がある。我が国が主催する二つ目の重要な国際会議は、5月に横浜で開かれる第4回アフリカ開発会議(The fourth Tokyo International Conference on African Development(TICADIV)である。ここで得られた知見、そして成果をG8サミットにつなげるべく、日米が協力して取り組んで参りたいと思っている。また、アフリカを中心とする保健状況を改善すべく、国際保健分野での日米協力を進めたいとも思っている。
(13)更に、世界経済が多くの課題に直面している中で、日米が、世界に安心ある繁栄をもたらすよう、途上国の持続的発展に向けた協力や知的財産権の保護を含め、経済分野における世界規模での日米の協力関係を強化したいと考えている。また、WTOドーハ・ラウンド交渉の早期妥結を一致して目指したいと考えている。
(14)最後に、牛肉の話であるが、牛肉については、日本政府として国民の食の安全を大前提に科学的な知見に基づいて対応していくということである。
(15)会談の途中ではあるが、この場を借りて、ブッシュ大統領を含め、米国の皆様の温かいもてなしに感謝申し上げたい。今後とも、ブッシュ大統領と手と手を携さえて、我々が直面する諸課題に共に対処していくことを楽しみにしている。