(1)食料価格高騰問題が深刻さの度合いを増す昨今の状況を受け、6月3日から5日、イタリアのローマにおいて、国連食糧農業機関(FAO)主催「世界の食料安全保障に関するハイレベル会合:気候変動とバイオエネルギーがもたらす課題(High-Level Conference on World Food Security: The Challenges of Climate Change and Bioenergy)」(FAOハイレベル会合)が開催された。
(2)今次会合では、食料価格高騰や気候変動、バイオエネルギーによる世界の食料安全保障における課題への対処等につき議論すべく、180カ国(うち、43ヵ国の首脳、および国際機関の代表多数)が参加。我が国より福田総理および若林農林水産大臣が出席。その他の首脳クラスの主な出席者は、ベルルスコーニ伊首相、サルコジ仏大統領、ルーラ・ブラジル大統領、ムバラク・エジプト大統領、潘(パン)国連事務総長等。
(3)福田総理は、食料価格高騰問題が深刻な世界的問題であることを指摘しつつ、短期から長期に亘る包括的かつ一貫した対策が必要であるとして、国際社会が団結して取組むべきと強調した。さらに、輸出規制、実需以外の要因による価格変動、バイオ燃料生産の食料需給への影響につき、強い問題意識を披露し、北海道洞爺湖サミットに向け、この問題に関する今後の議論を主導し、サミットで力強いメッセージを発出するとの決意を示した。また、我が国のこれまでの支援を紹介するとともに、貧困農民に対する食料増産支援5千万ドル、日本が保有する輸入米のうち30万トン以上の放出という、新たな貢献策を表明した。
(4)各国からの主な発言としては、全体の2番目に発言したブラジルのルーラ大統領がバイオ燃料の有用性を力説したこと、フランスのサルコジ大統領が「食料と農業のためのパートナーシップ」を提案したことが注目された。また、食料安全保障の問題が、複合的な要因を有する、国際社会が一致協力して取り組むべき課題であることについて、多くの国が言及した。また、我が国を含むいくつかの国が第二世代バイオ燃料の重要性を強調した。
会合での議論を集約したものとして、現状認識並びに緊急・短期的及び中・長期的に求められる措置につき、一致した考え方が示された『世界の食料安全保障に関するハイレベル会合宣言:気候変動とバイオエネルギーがもたらす課題』(Declaration of the High-Level Conference on World Food Security: The Challenges of Climate Change and Bioenergy”)』(別添:英文(PDF)
)が採択された。宣言のポイントは以下のとおり。
(1)昨今の食料価格の高騰もふまえ、世界の食料安全保障及びミレニアム開発目標の達成のため、国際社会は緊急・短期的及び中・長期的な措置につき調和のとれた行動が必要である旨を指摘。
(2)緊急・短期的措置として、食糧援助や食料増産の支援等の実施、食料価格の不安定化につながる制限的措置の最小化、ドーハ開発アジェンダの早期妥結等を提示。
(3)中・長期的措置として、農業分野における投資の増大や国際貿易の自由化の促進に触れるとともに、持続的かつ世界の食料安全保障に配慮したバイオ燃料の生産・利用の必要性や、気候変動に対する食料生産システムの適応とその緩和への支援の必要性等を提示。
(4)総括的な決意として、食料生産の強化及び食料入手への障害除去を誓い、投資の拡大、資源の持続的利用に必要なあらゆる手段を講じることを明記。
(1)7月に北海道洞爺湖サミットを控え、総理より、食料価格高騰問題に関する、強い問題意識に裏打ちされた考えを打ち出し、G8議長として、この問題についての今後の議論を主導し、サミットで力強いメッセージを発出するとの決意を示したことは、大きな意義があった。我が国同様、各国とも短期から中長期に亘る包括的な対策が必要であるとの点を強調し、食料安全保障の問題が、短期的な支援にとどまる問題ではなく、長い視野に立った、地球全体としての農業生産力の強化と効率的な市場の確保が重要であるという認識が共有されるに至った。また、その関連で、ドーハ・ラウンドの早期妥結および、その中での開発アジェンダの位置づけにつき、参加国の認識が一致したことは重要である。
(2)潘(パン)国連事務総長の主導による「包括的行動枠組み」の主要点が明らかにされ、これに沿って今後の具体的行動が議論されることになるが、上記(1)の認識をもとに、各国から多くの選択肢が示されたことは、以降の検討過程に大きなプラスとなった。
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