日本国とアラブ首長国連邦との間の共同声明
(仮訳)
平成19年4月
アラブ首長国連邦大統領シェイク・ハリーファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン殿下の招聘により、安倍晋三日本国内閣総理大臣は、2007年4月29日から30日の間、アラブ首長国連邦への公式訪問を行った。
アラブ首長国連邦大統領ハリーファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン殿下は、安倍晋三日本国内閣総理大臣及び随行の代表団を、二国間をつなぐ関係の深さを反映して友好的に迎えた。双方は、公式会談にて、二国間関係について協議を行い、共通の目標と利益に資するとともに両国とその国民に全般的な利益をもたらす二国間関係の強化と発展の重要性を確認した。また、双方は、共通の利益が存在する地域及び国際情勢を検討し、日本・アラブ首長国連邦関係の強化を目的に、次の共同声明を発出した。
- 双方は、これまでの友好的な関係が、相互に裨益するものであったことを認識しつつ、二国間の繁栄に富んだ関係を更に発展させるとの固い決意を表明した。この目的を念頭に、双方は、安倍晋三閣下のアラブ首長国連邦訪問は、両国間の外交関係樹立35周年の機会に卓越した両国間関係を確立するための歴史的な契機になるとして、その重要性を確認した。さらに、双方は、その実現が日本とアラブ首長国連邦との間のパートナーシップの発展に大いに寄与するものとして、アラブ首長国連邦大統領シェイク・ハリーファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン殿下及びアブダビ首長国皇太子兼連邦軍副最高司令官シェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン殿下の訪日を双方にとって都合の良い時期に実現すべく、相互に緊密に調整していくことを決定した。
- 双方は、政治、経済、文化、教育、環境、投資、技術など、多岐の分野にわたり、あらゆるレベルで二国間の対話を更に促進していくとの意図を共有した。
- 双方は、最近の二国間の経済及び商業活動における進展に強い満足の意を表しつつ、両国の経済関係を更に包括的に発展させるためには、政府及び民間部門の双方において、両国が最善の努力を払うべきであることを確認した。特に、双方は、アラブ首長国連邦の地理経済的な重要性につき再確認した。アラブ首長国連邦には、中東で最大規模の日本人社会が存在する上、同国は経済面を地理的な国境を越えて活性化させることにより、中東全体における経済交流における重要な拠点になっている。
- 双方は、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアラブ首長国連邦との間の条約(租税条約)に関する交渉の進展を重視しつつ、交渉の早期妥結に向けた決意を強調した。さらに、双方は、包括的な二国間経済関係の発展を目指し、別添の覚書に基づき、閣僚級の日本・アラブ首長国連邦合同経済委員会を創設することを決定した。双方は、合同経済委員会が、特に投資、ビジネス環境の整備、及びエネルギー分野における日・アラブ首長国連邦経済関係を一層促進するにあたり中心的な役割を果たしうるとの見解を共有した。
- 双方は、2007年4月に東京にて開催された、日本・アラブ首長国連邦ビジネス・フォーラムがもたらした実り多き成果を歓迎した。また、双方は、今般、安倍晋三閣下に随行した日本側のハイレベルの経済ミッションの大いなる意義を強調した。これは、同ミッションが日・アラブ首長国連邦経済関係全体の一層の発展に資するためである。
- 双方は、国際石油市場の安定が世界経済の健全な成長のための礎石であるとの共通の見解を改めて表明した。その観点から、双方は、豊富な炭化水素資源を有するアラブ首長国連邦と、先進的なエネルギー関連技術を持つ日本との間の相互補完的な関係に基づいて、エネルギー分野における二国間協力を更に推し進めていくことを決定した。双方は、日本の民間部門が有する技術とそのアラブ首長国連邦における経済活動が、従来型エネルギー分野のみならず、再生可能エネルギー分野においても、アラブ首長国連邦の経済発展において重要な役割を果たしてきている事実を認識した。例えば、日本の研究機関はマスダル研究ネットワークに参加し、その太陽エネルギーに関する経験を提供している。また、ジャパン石油開発株式会社(JODCO)及び石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、昨年第一期卒業生を輩出したアブダビのペトロリアム・インスティテュートに資金援助を行っている。さらに、双方は、国際協力銀行(JBIC)及びアブダビ国営石油会社(ADNOC)間の資金協力における関係強化を称賛した。双方はさらに、アラブ首長国連邦の諸都市における産業・インフラ整備における協力強化の重要性につき留意した。双方は、近い将来に迎える、アラブ首長国連邦政府から日本の石油会社へ与えられている自主開発原油権益の成功裡の更新を含む両国間の石油分野における協力の更なる促進が、両国間の相互補完的な関係の一層の強化に資するものであるとの認識を共有した。
- 同様に、双方は、先進国のみならずエネルギー供給国も含め、国際社会全体が、現在の地球温暖化の流れに対処するための戦略を発展させていくべきであるとの認識を共有した。この文脈において、日本側は、地球温暖化に対し適切な方策を講じていくために、政府及び民間部門の双方において協力を推進するとの意思を表明した。双方は、地球温暖化への対処及びアラブ首長国連邦における持続的発展の実現に資するCDM(クリーン開発メカニズム)がもたらす重要な共通利益を念頭に置くとともに、アラブ首長国連邦におけるCDMプロジェクトがもたらす最大限の可能性を探求することを期待しつつ、CDMプロジェクトの推進において民間部門が果たす役割の重要性を再確認した。
- 双方は、教育が国造りの不可欠な基盤であるとの認識を共有した。この関係で、アラブ首長国連邦側は、安倍晋三閣下による「美しい国 日本」に示された理念に対して強い関心を示すとともに、アラブ首長国連邦の教育分野における日本側の更なる協力を要望した。双方はこれに関し、特に現在のアブダビ日本人学校におけるアラブ首長国連邦人子弟の通学のような進行中の教育協力に強い満足の意を示した。さらにアラブ首長国連邦側は、この分野における日本側の協力の拡大に対して期待を表明した。また、アラブ首長国連邦側は、教育分野における日本・アラブ首長国連邦間の連携を前進させる用意があることを表明した。日本側は、人づくりプログラムを強化する意向を示した。
- 日本・湾岸協力理事会(GCC)間の自由貿易協定(FTA)交渉の重要な進展を認識しつつ、双方は可能な限り早期に大筋合意に至ることを目指すとの決意を表明した。両国の首脳は、そうした自由貿易協定交渉の目標を実現するために、あらゆる努力を尽くすとの最大限の決意を再確認した。
- 双方は、世界全体にとり中東の安定が極めて重要であることを強調した。この関係で、アラブ首長国連邦側は、中東の安定化を促進し、繁栄を実現するにあたっての日本のより広範かつ大きな役割への期待を表明した。日本側は、中東の平和と安定のため、アラブ首長国連邦側と協力し、もって地域の繁栄に貢献するとの意思を示した。
- 中東和平プロセスについて、双方は、アラブ・イスラエル紛争の公正かつ包括的な解決が、中東の繁栄と安定にとって最も重要な要素の一つとなることを繰り返し強調した。双方は、第242号及び第338号を含む関連国際連合安全保障理事会決議、並びにアラブ和平イニシアティブに従って、独立した存続可能なパレスチナ国家創設への支持を表明し、また、パレスチナへの継続的な支援を確認した。アラブ首長国連邦側は、「平和と繁栄の回廊」の理念など、中東和平プロセスを推進するにあたっての日本の努力に対する謝意を表明するとともに、日本がアラブ・イスラエル紛争の公正かつ包括的な解決のために、より積極的かつ大きな役割を担っていくことへの期待を表明した。日本側は、パレスチナ領内における悲惨な人道的状況に対するアラブ首長国連邦側の支援に対し謝意を表明した。
- 双方は、イラク国民がより良い未来への切望を実現するにあたり彼らを支援するとの決意を再確認しつつ、イラクが安定を実現し、領土の一体性を維持し、並びにイラク国民の国家的一体性及びすべてのグループ間の平等を促進することを支援するために、相互に緊密に連携していくことを決定した。双方は、特に国民融和がイラクの安定化にとって基礎となるとの認識を共有した。アラブ首長国連邦側は、2007年3月の「イラク国民融和セミナー」開催を含む、日本側のイラクの復興と安定化に対する多大なる貢献に対して謝意を表明した。
- 双方は、中東のすべての国家による核兵器不拡散条約への加入を奨励し、国際的に正当な関連諸決議に整合的な形で、中東をあらゆる大量破壊兵器及びその運搬手段が存在しない地域とすることの重要性を強調した。また、双方は、イランの核問題を外交的に解決することの重要性を大きく強調するとともに、イランに対して、国連安保理決議第1696号、第1737号及び第1747号を実施し、すべてのウラン濃縮及び再処理関連活動を中止するよう強く求めた。
- 双方は、三島問題についての議論を行い、日本側は、同問題の平和的解決に向けたアラブ首長国連邦の努力を支持する旨表明した。
- 朝鮮半島情勢につき、双方は、2007年2月13日の六者会合における合意は、すべての当事者、特に北朝鮮によって速やかに実施されるべきであることで一致した。双方は、拉致問題の早期解決を含む二国間問題についての日本と北朝鮮との間の協議が進展することへの期待を表明した。
- 双方は、特に、安全保障理事会における加盟国の議席数拡大や運営方法の改善といった国連及びその他の国際機関の早急な改革の必要性につき再確認した。
アブダビ 2007年4月29日