安倍総理大臣

サウジアラビア王国と日本国の間の共同声明
(仮訳)

平成19年4月

 二聖モスクの守護者たるアブドッラー・ビン・アブドルアジーズ・アール=サウード国王陛下の招聘により、安倍晋三日本国内閣総理大臣は、2007年4月28日から29日に対応するラビーウ月11日から12日、リヤドへ公式訪問を行った。

 安倍晋三閣下は、二聖モスクの守護者アブドゥラー・ビン・アブドルアジーズ・アール=サウード国王陛下、スルタン・ビン・アブドゥルアジーズ・アール=サウード皇太子、副首相兼国防・航空相兼監査官殿下と会談を行った。双方は、サウジアラビア王国と日本との間の戦略的、重層的パートナーシップの発展に向けて、以下の声明を発出した。

  1. 双方は、二国の外務大臣間の政治対話を含む、ハイレベルの政治対話を強化する意向を表明した。
  2. 双方は、二国間の経済及び商業活動の最近の発展に対する満足の意を示しつつ、経済関係の更なる発展が、サウジアラビアと日本の間の戦略的関係の発展に向けた主要な原動力であるという認識を共有した。双方は、経済関係の包括的な発展のために、政府部門及び民間部門の双方により最大限の努力をすべきことにつき確認した。この目的のため、両国の指導者は、金融、制度資源及び技術を含む両国の利用可能な資源を最大限活用しつつ、両国の産業における投資機会を促進する目的のため適切かつ専門的な共同タスクフォースを設立するという積極的な取組を開始することを決定した。
  3. 双方は、日本・湾岸協力理事会(GCC)間の自由貿易協定(FTA)を妥結するための現在進行中の交渉を歓迎した。双方は、この協定の早期締結が更なる二国間の経済関係を強化させるとの見解を共有する。
  4. 双方は、パートナーシップの強化を行うための、経済、投資、航空、環境、文化、教育・科学、青年・スポーツの分野における協力の強化・拡大の重要性につき認識を共有した。この目的のため、双方は、2007年2月に航空業務に関する協定案につき合意に達したことを歓迎した。双方は、二国間の投資の自由化・促進及び保護のための協定に関する交渉の早期合意の重要性を強調した。双方は、サウジアラビアの学生が日本の大学や技術機関にて学ぶことを支援、奨励することを促進すると決定し、日本側はこういった学生が大いに増えることを歓迎した。
  5. 双方は、国際石油市場の安定の重要性を再確認した。日本側は、一般に国際市場に対して、また特に日本市場に対して確実で信頼できる石油供給源としての、サウジアラビアのバランスのとれた石油政策への評価と理解を表明した。この関係で、双方は2007年5月1日から3日に対応する、ヒジュラ暦1428年4月14日から16日までリヤドにて、サウジアラビアと日本が共催する「第2回アジア産消対話」を賞賛するとともに、世界最大の炭化水素資源を有するサウジアラビアと先進的なエネルギー関連技術を有する日本の相互補完的な関係に基づき、エネルギーに関する二国間協力を更に促進させる意義を強調した。サウジ側は、日本への安定した石油の供給を保証し続けていくとの意向を表明し、日本側はこれに感謝の意を表明した。
  6. 双方は、国際社会は気候変動に関する国際約束で言及されている共通に有しているが差異のある責任に基づき、起こりうる地球温暖化に対する適切な手段をとるべきであることを決定した。この観点から、日本側は起こりうる地球温暖化への対処とともにサウジアラビア王国の持続的発展の実現に資するクリーン開発メカニズム(CDM)を促進するため、政府セクター・民間セクターの双方のレベルで協力を促進していく用意があることを表明した。双方は、CDM事業促進のための両国における民間部門の役割の重要性を再確認した。
  7. 双方は、二国間で日本・サウジアラビア合同委員会を、定期的かつ必要な時宜に、継続して開催する必要性を強調し、2007年5月1日にリヤドで第9回会合が開かれる合同委員会に、今回の訪問の成果を引き継ぐことを指示した。双方は、両国の民間部門間の協力強化の重要性及び意義を認識し、安倍晋三閣下から言及のあった「日本・サウジアラビア・ビジネス・フォーラム」の開催を強調しつつ、双方は2月の第8回日本・サウジ・ビジネス・カウンシルの実り多い結果を歓迎した。
  8. 双方は、技術協力と職業訓練の分野での協力の強化、発展の重要性につき見解を共有し、この分野における日本の専門機関が果たす積極的な役割についての認識を共有した。
  9. 双方は、中東全体の平和と安定を実現するため、次のようなサウジ・日本の共同の努力の重要性を強調した。
  10. 中東和平プロセスに関し、双方は国際的に正統な決議に基づくアラブ・イスラエル紛争の公正かつ包括的な解決が中東の安定にとって礎石であり、国際社会の平和と安全への緊張と脅威の主たる根源を取り除くことを再確認した。この関係から、双方は、2002年ベイルート・サミットで承認され、2007年リヤドのアラブ(連盟)首脳会議にて確認されたアラブ和平イニシアティブと、ロードマップの重要性を強調しつつ、独立で存続可能なパレスチナ国家創設への支援を強調した。日本側は、2007年2月のメッカ合意で見られた二聖モスクの守護者たるアブドッラー・ビン・アブドルアジーズ・アール=サウード国王陛下による努力を高く評価した。双方は、2007年3月16日のパレスチナ挙国一致内閣樹立の発表を歓迎した。双方は、パレスチナ人への支援の継続を確認しつつ、国際社会に対しパレスチナ人への支援を促進し増加させることを要求した。サウジ側は、「平和と繁栄の回廊」構想のような中東和平プロセスを支持する日本の努力に対し、評価の意を表明した。
  11. 双方は、イラク国民がより良い未来への切望を実現するにあたり彼らを支援するとのコミットメントを再確認しつつ、イラクの安全、安定と領土の一体性を実現し、イラク国民の国家的一体性及びすべてのグループ間の平等を促進することを支援するために、相互の緊密な調整を行うことを決定した。双方は、全ての武装過激派集団の解散を伴う国民融和がイラクの安定にとって重要な礎石であることを確認し、イラクの一体性、主権そして独立性を尊重する必要性を強調した。サウジ側は、2007年3月の「イラク国民融和セミナー」開催を含む、日本のイラク復興と安定に向けた多大なる貢献に評価の意を表した。
  12. レバノンに関し、双方はレバノンとの連帯と、その領土全域にわたってレバノンの国家の統一性、安全、安定、主権を維持するレバノン政府への政治的、経済的支援を行う重要性を強調した。双方は、レバノンにおける政治危機の解決とレバノンの一体性、安全と独立に向けた国民和解形成にて成し遂げたことを基礎とするのみならず、全てのレバノン人間における同一性を基礎とし、全てのレバノン人集団や勢力が国民対話を行うよう要求した。
  13. 双方は、中東の全ての国家に核拡散防止条約への加盟を要求し、関連する国際的に正統な決議に整合的な形で、中東をあらゆる大量破壊兵器とその運搬手段が存在しない地域にすることの重要性を強調した。双方は、イラン核問題の外交的な解決策の重要性を特に強調し、イランに対し、国連安全保障理事会第1696号、第1737号及び第1747号を遵守し、国際原子力機関(IAEA)と建設的に協力していくことを要求した。
  14. 双方は、6者会合、及び拉致問題の早期解決を含む日朝間の問題に関する日本と北朝鮮との間の協議が進展することへの期待を表明した。
  15. 双方は、あらゆる形態のテロ活動を国際的な平和と安全への脅威であると非難し、テロと闘うため国際社会が一つとなるべきであることに確認した。この観点から、双方は13本のテロ防止関連条約と議定書及び関連する国際連合安全保障理事会決議の断固たる適用へのコミットメントを再確認した。日本側は2005年2月にリヤドにて開催され、日本も参加した、国際テロ対策国際会議を含む、テロとの闘いにおけるサウジアラビア王国によるイニシアティブを評価した。双方は、テロ対策に関する国際協力を促進する包括テロ防止条約の交渉の妥結への緊急の必要性のみならず、テロ根絶に向けた国際センターの設置についての二聖モスクの守護者の提案を含む、会議の決議の重要性を強調した。
  16. 双方は、世界の平和、安全と繁栄を促進する上での国際連合の益々高まる重要な役割を認識し、国際連合は21世紀の新しい現実を反映させるよう包括的に改革されなければならないとの認識を共有した。また、双方は、国際連合の全体的な改革の重要な要素としての安全保障理事会の早期改革の重要性を特に強調しつつ、総会、安全保障理事会、経済社会理事会そして事務局を含む国際連合の各機関の再生と活性化に向けた協力を確認した。また、サウジ側は、期待される安全保障理事会の改革が理事国の拡大を含む場合の、安全保障理事会における日本の常任理事国入りへの支持を表明した。日本側は、こうしたサウジアラビアの支持に深い謝意を表明した。
  17. 安倍晋三閣下は、同人とその随行代表団に示された歓待とすばらしいもてなしに深甚なる謝意を表し、二聖モスクの守護者に双方にとって都合が良い時期の訪日を招請した。

 リヤド、2007年4月28日

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