安倍総理大臣

クウェート国と日本国の間の共同声明
(仮訳)

 クウェート国首相シェイク・ナーセル・アル・ムハンマド・アル・アハマド・アル・サバーハ殿下の寛大なる招聘により、安倍晋三日本国内閣総理大臣は、2007年4月30日から5月1日の間、随行の高いレベルの代表団とともにクウェート国への公式訪問を行った。

 安倍晋三閣下は、クウェート側からの総理及び随行の代表団に対する歓迎に深甚なる謝意を示し、クウェート国首相シェイク・ナーセル・アル・ムハンマド・アル・アハマド・アル・サバーハ殿下に対し、双方にとって都合の良い時期の訪日を招請した。シェイク・ナーセル・アル・ムハンマド・アル・アハマド・アル・サバーハ殿下は、この招請を快く受け入れた。

  1. 安倍晋三閣下及び随行の代表団は、クウェート国首長シェイク・サバーハ・アル・アハマド・アル・ジャービル・アル・サバーハ殿下とクウェート国皇太子シェイク・ナワーフ・アル・アハマド・アル・ジャービル・アル・サバーハ殿下に謁見する栄誉を授かった。
  2. その後、クウェート側代表をシェイク・ナーセル・アル・ムハンマド・アル・アハマド・アル・サバーハ殿下が、日本側代表を安倍晋三閣下がそれぞれ務め、クウェート国と日本国の間で公式会談が行われた。
  3. 双方は、2004年のクウェート国首長シェイク・サバーハ・アル・アハマド・アル・ジャービル・アル・サバーハ殿下の訪日以来飛躍的に強化されてきた日本・クウェート関係に大いなる満足の意を表明した。双方は、二国間の繁栄に恵まれた関係を更に発展させるとの決意を確認し、今般の安倍晋三閣下のクウェート国訪問が、卓越した両国間関係の強化に向けた歴史的な契機をもたらすとの重要性に留意した。双方は、2011年の日本・クウェート間の外交関係樹立50周年の機に、共同事業を行うべく調整していくことを決定した。
  4. 双方は、日本・クウェート間の様々な分野における二国間関係の強化、とりわけ、商業及び経済活動における関係の進展に満足の意を示し、日本・クウェート民間合同委員会が果たしている役割を称賛した。双方は両政府間であらゆる分野、特に経済及び商業分野、において協力を促進するための方途を議論するために、合同委員会を設立するとの意図を表明した。
  5. 双方は、国際石油市場の安定が世界経済の良好かつ持続的な成長のための礎石であるとの共通の見解を改めて表明した。その観点から、日本側は、主要な石油生産及び輸出国としての、クウェートの重要な役割に対し、謝意を表明した。クウェート側は、日本への一定で安定した石油の供給を保証していくとのコミットメントを表明した。また、日本側は、クウェートの上流その他の石油部門における技術協力やその他の支援を向上させる用意があることを表明した。これに対し、クウェート側はこれら協力と支援につき評価の意を表明した。双方は、二国間における継続したこのような協力の重要性を確認するとともに、この観点からアラビア石油が果たす優れた役割を評価した。二人の首脳は、エネルギー分野における二国間協力を更に促進させることを決定した。
  6. 双方は、電力と水の安定供給を確保することが、持続的な経済及び社会の発展を実現するために最も重要な課題の一つであると信じる。この観点から、双方は、日本が有する省エネルギー及び水資源の保全、エネルギー管理、代替エネルギー分野における長期にわたる経験や先進技術力を基に、更なる二国間協力の強化を図っていくことを決定した。
  7. 双方は、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とクウェート国との間の条約に関する交渉の有意義な進展を歓迎し、また、日本・湾岸協力理事会(GCC)間の自由貿易協定(FTA)交渉の大いなる進展を歓迎した。双方は、可能な限り早期に大筋合意を達成することへの決意を表明した。クウェート側は、両国間における投資の促進及び相互の保護に関する協定の交渉を開始したいとの希望を表明した。
  8. クウェート側は、2002年12月に日本側からもたらされた「環境協力等イニシアティブ」により現在取り進められている、クウェート湾浄化プロジェクトや石油産業の高度化、人材開発プログラムなどの二国間の環境分野での協力が継続していることへの謝意を表明した。クウェート側は、2004年11月の「環境政策マスタープラン」に評価を表明した。双方は、クウェートにおける「KIDs ISO 14000」を首尾一貫して推進し支援していく意向を表明した。
  9. 同様に、双方は、地球温暖化問題に対し、国際社会が共通に有しているが差異のある責任を担うべきであることについて確認した。これに関連して、日本側は、地球温暖化問題に対処するにあたって、政府及び民間レベルにおいて協力を促進していく意思を表明した。双方は、地球温暖化問題への対処及びクウェートの持続的発展の実現に資するというクリーン開発メカニズム(CDM)がもたらす利益を念頭に置きつつ、CDMプロジェクトの推進において民間部門が果たす役割の重要性を確認した。
  10. 双方は、現在両国間で進行中の教育協力や人的交流 ―特に、日本政府によるクウェート教職関係者の研修事案、クウェート大学生涯学習センターにおける日本語講座の開講、在クウェート日本大使館による帰国留学生懇談会の開催、並びにクウェート大学におけるアジア・日本研究ユニットの開設など―に心から満足の意を示した。双方は、教育分野におけるそのような協力の拡大を継続していくことの必要性につき見解を共有した。
  11. 双方は、世界全体にとり中東の安定が極めて重要であることを強調した。この関係で、クウェート側は、中東の安定化を促進し、繁栄を実現するにあたっての日本のより広範かつ大きな役割への期待を表明した。日本側は、中東の平和と安定のため、クウェート側と協力し、もって地域の繁栄に貢献するとの意思を示した。
  12. 双方は、イラクの現状を概観し、イラク及び同国民に安定と安全をもたらすために、国民融和を達成すること及びイラクの政治プロセスが成功するための機会を提供できるようあらゆる努力を注入することの重要性を強調し、同時にイラクの主権と一体性への支持を確認した。クウェート側は、イラクの復興と安定に対する日本の貢献に対して評価の意を表明し、日本側は、日本によるイラクの人道復興支援活動に対するクウェート側の協力に深い謝意を表明した。
  13. イランの核問題についての議論において、双方は、中東のすべての国家の核兵器拡散防止条約への加盟を奨励すること、及び、国際的に正当な関連諸決議に整合的な形で、中東をあらゆる大量破壊兵器とその運搬手段が存在しない地域にすることの重要性を強調した。双方は、イランの核問題の平和的な解決策の模索と、イランに対して国連安全保障理事会関連決議を遵守し、国際社会との対話の継続と国際原子力機関(IAEA)への全面的な協力を促していくことの重要性を強調した。
  14. 双方は、国連安全保障理事会関連決議、アラブ・イニシアティブ及びロードマップに基づき、中東和平プロセスを回復させ、地域の公正、包括的かつ恒久的平和を確立していくことの重要性につき認識を共有した。クウェート側は、日本側による「平和と繁栄の回廊」構想等を含む、中東和平に対する積極的な貢献に評価の意を示した。
  15. レバノンの状況の議論に関し、双方は、政治勢力及び政党に対し、レバノンの統合と独立が維持される形で、レバノンの安全と安定を回復するために、最大限の国家的利益を優先し、建設的な対話を講じるよう求めた。
  16. 双方は、あらゆる形態のテロ活動を強く非難し、テロと闘うために二国間及び国連を含む多国間の枠組みの中で協力を促進していく決意を強調した。
  17. 朝鮮半島情勢につき、双方は2007年2月13日の六者会合における合意は、すべての当事者、特に北朝鮮によって速やかに実施されるべきであることにつき一致した。双方は、拉致問題の早期解決を含む日朝間の問題に関する日本と北朝鮮との間の協議が進展することへの期待を表明した。クウェート側は、出来る限り早期に拉致問題が解決されることの重要性を強調した。
  18. 双方は、安全保障理事会における常任理事国と非常任理事国の議席数拡大を含む国連及び国連安全保障理事会の早期の改革を支持していく意向を表明した。

 クウェート、2007年5月1日

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