平成19年1月11日
1月11日、ベルギーを訪問中の安倍総理大臣は、欧州委員会本部において、12時35分(日本時間20時35分)から約45分間、バローゾ欧州委員長と会談を行い、引き続き13時20分から約1時間10分のワーキングランチを行ったところ、概要以下の通り。
基本的価値観を共有する日本とEUが、目的と責任を共有する戦略的パートナーとして、協力して国際的諸課題に取り組んでいくとの点で意見が一致した。
(1)EU拡大
総理より、本年1月1日よりブルガリア、ルーマニアがEUに加盟し、スロベニアが中・東欧ではじめてユーロを導入したことに言及し、EUの拡大と深化は世界の繁栄と安定に資するものであるとして祝意を伝えた。
(2)日・EU経済
(イ)総理より、日本経済の展望、潜在成長力を高めるため改革に大胆に取り組む意向を表明し、日本とEUが、世界経済の繁栄・成長をリードすべく対話と協力を深めることが重要であると述べた。
(ロ)バローゾ委員長より、日本・EU関係は、かつてないほど良好であり、基本的価値に基づくグローバルパートナーとして協力してきている、日本経済の回復を歓迎している、日本経済の潜在的成長力を高めるための改革努力に敬意を表する、日本とEUが対話・協力を一層深めることが必要との点に全く同感である旨述べた。
(1)北朝鮮
(イ)総理より、核及びミサイル問題は、グローバルな不拡散体制に対する重大な挑戦として、安保理決議1718号を履行し、国際社会が一致団結し解決に取り組む必要があることを説明し、EUに対し早期に手続規則を制定することを期待する、更に拉致問題は極めて重要な問題であり、早期の解決が必要である、国連の人権状況決議の採択に際し、EU諸国とよい連携がとれた、今後ともEUの支持と協力を得たい旨述べた。
(ロ)バローゾ委員長より、EUとしては、六者会合のプロセスを支持している、核及びミサイル問題そして拉致問題の解決のためにEUとしては今後とも日本と協力したい、また、安保理決議1718号に関して、現在EU内部で履行のための手続規則の制定のためのプロセスにある旨述べた。
(2)中国
(イ)総理より、中国は世界にとって大きなチャンスであるが、知的財産権の問題、急速な軍事費増大とその不透明性等の問題もある、中国を国際社会で責任ある役割を果たすよう国際社会が促していく必要があり、日EUの協力が重要である旨述べた。
(ロ)総理より、EUの対中武器輸出禁輸措置の解除は東アジアの安全保障環境に大きな影響を与えることを懸念しており反対である、としてバローゾ委員長の理解を求めた。
(ハ)バローゾ委員長より、安倍総理就任以来の日中関係改善を歓迎するとした上で、EUとしても、中国がより責任を持った行動をとるように働きかけており、その際には、必ず人権その他の問題を提起することとしている、中国は重要なパートナーであるが、同時に原則については毅然とした態度を取ることが重要である旨述べた。
(ニ)対中武器輸出禁輸措置問題については、欧州理事会の決定に基づき解除に向けた作業を継続することにしているが、解除が、すぐに行われることはない、仮に解除されることとなっても、如何なる意味でも武器輸出の質的量的増加にはつながらない旨述べた。
(3)イラク
(イ)総理より、米政府の新政策については昨日ブッシュ大統領より直接説明を受けた、今後、イラクの安定化と復興に向けた米国の努力が効果的に進められ、よい成果を上げることを強く期待しており、その旨ブッシュ大統領に伝えた、更に日本としてはこれまでも自衛隊やODA等により、主体的にイラクの復興を支援してきた、今後も国際社会と協力し、イラク人の復興努力を積極的に支援していきたい旨述べた。
(ロ)バローゾ委員長よりイラクの国内情勢を非常に懸念している、欧州委員会は、色々な分野でイラクを支援してきた、今後は包括的なアプローチをとるべきであり、その意味でイラク・コンパクトの完成を重視しており、日本とも協力したい旨述べた。
(4)中東和平
(イ)総理より、中東地域については、我が国は、「平和と繁栄の回廊」構想の推進等、中東和平に積極的に関与していく、我が国は、新内閣成立に向けたアッバース大統領の努力を支持していく旨述べた。
(ロ)バローゾ委員長より、パレスチナ内部の対立を懸念している、パレスチナ問題の進展のため日本と協力を進めていきたい旨述べた。
(5)中央アジア
(イ)総理より、我が国は「中央アジア+日本」対話を活用し、地域協力を促進しつつ、各国の独自性も踏まえて協力していく、価値観を共有する日・EUがこの地域に積極的に関与し、国際社会に開かれた発展を支援すべきである、中央アジアに関する戦略的対話を通じ、日・EU間でも連携していきたい旨述べた。
(ロ)これに対して、バローゾ委員長より、日・EU間でのこの地域に関する対話の進展を歓迎している、この地域の安定は、民主主義の進展、エネルギー供給の観点から重要であり、今後とも対話を充実させたい旨述べた。
(1)気候変動
(イ)バローゾ委員長より10日に発表した欧州委員会のエネルギー・気候変動戦略に関する説明を行い、日本を始めすべてのパートナーと協力していきたい旨述べた。
(ロ)総理より、気候変動問題で日EU間の協力を強めていきたい、わが国は京都議定書の目標達成のためあらゆる努力を払っている、省エネ、エネルギー効率の向上のための技術を中国・インドに提供していくことでもグローバルな気候変動問題に貢献したい、更なる排出量抑制目標の設定については、環境と経済の両立も重要である旨述べた。
(2)エネルギー
(イ)総理より、エネルギーについては、日EUは共通の利害を持っており、対話の強化が有意義である、特にロシアが国際秩序に沿って行動するよう、日本とEUが協力することが重要である旨述べた。
(ロ)バローゾ委員長より、エネルギー問題については日EUの立場に共通点がある、サハリン2でもみられたとおり、ロシアが前向きに行動するよう日欧が協力することが重要である旨述べた。
(3)WTO
両首脳は、ドーハラウンドの厳しい状況についての懸念を共有し日EUの連携が重要であることで一致した。