安倍総理大臣

ハイリゲンダム・サミットの際の日露首脳会談
(概要)

平成19年6月7日

 6月7日、ハイリゲンダムにおいて日露首脳会談が行われた。今回は、安倍総理とプーチン大統領の2回目の会談となるが、限られた時間ながら、領土問題を含め、「日露行動計画」に従い協力を進めていくことを確認しつつ、「共通の戦略的利益に基づくパートナーシップ」構築に向けた率直な意見交換が行われた。

1.日露関係総論

(1)まず両首脳は、2003年に作成された「日露行動計画」の実施状況を確認し、多くの分野で順調に進展が見られるとの認識で一致した。

(2)その上で、平和条約の締結交渉が「日露行動計画」の重要な柱の一つであることを確認し、今後、領土問題の解決に向けて、平和条約交渉についても進展を図っていくことで一致した。

2.政治対話

(1)「日露行動計画」の柱の一つである政治対話について、両首脳は、現在行われている日露間の肯定的なダイナミズムを受け、対話のモメンタムを継続・強化していくことで一致した。

(2)この関連で、9月のAPEC首脳会議の際にも両首脳で話し合いを続けることで一致した。

(3)両首脳は、首脳会談のフォローアップのために、ナルィシュキン副首相の訪日を本年秋までに行うこと、また、ラヴロフ外務大臣の年内訪日に向け今後調整していくことで一致した。

3.領土問題

(1)安倍総理より、領土問題を先送りしたり棚上げしないで、最終的に解決しなければならず、交渉を促進させようと述べたのに対し、プーチン大統領より、両国間の障害となるものをすべて取り除きたい、平和条約交渉のプロセスを停滞させず、促進させるよう改めて指示を出したい旨述べた。

(2)このように両首脳は、北方領土の問題の解決を図る意思を直接確認し、そのために精力的に交渉を継続していくことで一致した。

4.日露行動計画

(1)双方は、2003年に作成された「日露行動計画」に新たな方向性と弾みを与えるべきことで一致した。

(2)この関連で、安倍総理より、日本側として、ロシアの極東・東シベリアの安定的発展、同地域のアジア太平洋への建設的な統合に関心があることを示すために、「ロシアの極東・東シベリア地域における日露間協力強化に関するイニシアティブ」を提案した。

(3)この「イニシアティブ」は、ロシア政府がこの地域の発展とアジア太平洋地域への統合に今後真剣に取り組む姿勢を示しているのに対し、日本政府としても、ロシア側の問題意識に応え、協力が考えられる分野として8つを挙げ、経済分野を含め、両国の民間同士の相互利益となる形での協力を政府として慫慂していく用意がある、という意思を表明するものである。密漁・密輸対策や海難救助等の安全保障や、来年のG8サミットの重要なテーマとなる環境分野での政府間協力も含まれている。

(4)これに対し、プーチン大統領より、非常に魅力的で建設的な提案である。専門家レベルで具体化させるべく関係当局に指示を出したいとの発言があり、支持を得た。

(5)以上を踏まえ、両首脳は、日露の官民で本イニシアティブを推進する場として、貿易経済日露政府間委員会の地域間交流分科会を活用していくことで一致した。

5.青少年交流

 青少年交流に関しては、安倍総理より、将来の日露関係の発展の礎として重要であるとして、今後、青少年交流の拡大を図ること、及び来年のサミット開催地である北海道及び環日本海諸県とロシア極東やシベリアとの交流強化を重視していくことを提案した。プーチン大統領もこれに賛同し、今後、交流を更に発展させるための方策を両国間で検討していくこととなる。

6.漁業分野

(1)漁業問題については、安倍総理より、プーチン大統領が年次教書演説で外国企業への漁獲割当量の配分停止に言及したことに関連して、日露間の既存の枠組みの下での操業が、従来どおり、これらの枠組みに従って実施されるべきことを述べた。
 また、これらの既存の枠組みを堅持し、更に協力を発展させるべきとの考えを伝えた。(これに対し、プーチン大統領は頷いていた。)

(2)この関連で、プーチン大統領より、密漁・密輸対策に関する日本の更なる協力を得たいとの発言があり、安倍総理より、日本としても協力する用意がある、他方、活ガニの輸出禁止措置等について関係者が不安に思っており、その詳細について、今後、十分な説明を受けたいと応じた。

(3)また、安倍総理よりプーチン大統領に対し、拿捕された「第88豊進丸」の件が早期に解決され、船員・船体が速やかに解放されることを求め、プーチン大統領より調査したいと述べた。

7.実務分野等

 なお、時間の関係で会談では詳細には触れられなかったが、以下を進めていくことでロシア側と一致している。

(1)平和条約交渉の環境整備

(イ)平和条約締結交渉のための環境整備にも資するものとして、北方四島を含む日露の隣接地域における防災分野での協力が、本年5月より着実に実施されていることを歓迎している。

(ロ)また、北方四島を含む日露の隣接地域における生態系の保全及び持続可能な利用に関する協力は、日露間の新たな協力の分野として重要であり、専門家会合を本年秋に開催することで一致した。

(2)その他実務分野

(イ)7月前半のチェルケソフ麻薬流通監督庁長官の訪日。

(ロ)大塚会計検査院長の訪露。

(ハ)石川海上保安庁長官の訪露。

(ニ)日露刑事共助条約締結第3回交渉を7月11~12日に東京で開催する。

(ホ)日露原子力協力協定締結第2回交渉を6月22日にモスクワで開催する。

8.結び

 最後に、安倍総理から、森元総理から、「戦場のニーナ」という日露合作映画が製作中であるとの話を聞いた、日露共同プロジェクトとして今から楽しみである、このように文化面で協力していくことは、日露両国民間の理解を進めていく上でも結構なことである、森元総理からもよろしくとのことであった旨述べた。これに対してプーチン大統領より、森元総理によろしくお伝えいただきたい、いつでもモスクワに歓迎する旨述べた。

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