3月29日、岡田外務大臣は、G8外相会合に出席するため訪問中のカナダにおいて、ラヴロフ・ロシア外務大臣と会談したところ、結果概要以下のとおり。
【ポイント】
- 岡田大臣から、モスクワでの地下鉄爆発事故に関し哀悼の意を表明。
- 両大臣は、昨年12月の日露外相会談以降の日露間の動きを評価。
- 経済に関し、両大臣は、貿易経済政府間委員会(次官級分科会を含む)等を通じ、両政府として極東・東シベリアのプロジェクトをバックアップしていくことで一致。
- 領土問題に関し、岡田大臣から、本質的な帰属の問題についても進展を図る必要がある、両国の国境が未画定であることが日露関係の更なる発展を妨げている旨発言。これに対し、ラヴロフ大臣は、前進が得られるよう建設的に話し合っていきたい、ロシア側として意識的に領土交渉を遅らせることは望んでいない旨発言。
- 今後の政治対話に関し、両大臣は、首脳会談をできる限り重ねていくと同時に、ラヴロフ大臣の早期訪日を得て大臣間の協議も継続していくことで一致。
- 核不拡散問題に関し、ラヴロフ大臣から、日豪共同提案に言及があり、ロシアとしても同提案を検討している旨発言があった。また、岡田大臣から、START1後継条約につき米露間で合意に至ったことを評価。
1.総論
(1) 岡田大臣から、今回モスクワでの爆発事故で多数の犠牲者が出たことにお悔やみ申し上げる旨述べた。これに対し、ラヴロフ大臣は、お悔やみに感謝する、真相究明はもとより、対テロ面でも国際社会と協力していきたい旨述べた。
(2) 岡田大臣からは、1月の日露戦略対話、安全保障に関する日米露三極有識者会合(3月29~30日)、貿易経済政府間委員会・次官級分科会(3月30日)などに言及しつつ、昨年12月の日露外相会談以降、日露関係は、政治と経済を両輪のように進めていくという鳩山総理の基本方針の下で、新しい関係の構築に向け作業を進めている旨述べた。これに対し、ラヴロフ大臣は、昨年12月の外相会談以降の日露間の動きを高く評価する旨述べた。
2.経済
(1) 岡田大臣からは、貿易経済政府間委員会(大臣レベル)や次官級分科会(注:昨年12月、岡田大臣とフリステンコ産業貿易大臣の間で立ち上げに合意)を通じて建設的な議論を行っていきたい旨述べたのに対し、ラヴロフ大臣からは、次官級分科会の立ち上げは非常に良い考えであった、ロシア政府としても企業誘致に努力したい旨発言があった。
(2) 両大臣は、両政府として極東・東シベリアのプロジェクトをバックアップしていくことで一致した。
3.領土問題
(1) 岡田大臣からは、経済や安全保障のみならず、本質的な帰属の問題についても進展を図る必要がある、メドヴェージェフ大統領等が何度も述べているとおり、両国の国境が未画定であることが日露関係の更なる発展を妨げている旨述べた。
(2) これに対し、ラヴロフ大臣は、前進が得られるよう建設的に話し合っていきたい、経済や国際情勢等の分野でのパートナーシップ関係の下でダイナミックに物事が進むことを確信しており、ロシア側として意識的に領土交渉を遅らせることは望んでいない旨述べた。
(3) 岡田大臣からは、両国首脳が領土問題を前進させたいとしているのであるから、外相レベルでよく議論して前に進める必要がある旨強調した。
4.今後の政治対話
両大臣は、本年、様々な機会を使って首脳会談をできる限り重ねていくことで一致した。また、大臣レベルの協議も、ラヴロフ大臣の早期訪日を得て継続していくことで一致した。
5.国際場裏での協力
(1) 核不拡散問題に関し、ラヴロフ大臣から、NPT運用検討会議に向けた日豪共同提案に言及があり、ロシアとしても同提案を検討している旨発言があった。また、岡田大臣から、START1後継条約につき米露間で合意に至ったことを評価したのに対し、ラヴロフ大臣から、同条約がNPT運用検討会議の前に署名されることにより、同会議に肯定的な影響を与えることを期待する旨の発言があった。
(2) 岡田大臣から、明日(30日)、「核なき世界」に向けた議論をG8で行いたい旨述べたのに対し、ラヴロフ大臣は、この分野での日本の立場は一貫したものであり、ロシアとして日本の立場を共有するし、評価している旨述べた。
(3) その他、イランや北朝鮮をめぐる問題についても議論を行った。