経済

第21回APEC閣僚会議 共同声明(仮訳)

シンガポール
2009年11月11日~12日

骨子)(英文(PDF)PDF

 我々、APEC閣僚は、11月11日及び12日に会合を行った。本会議においては、シンガポールのジョージ・ヨー外務大臣及びリム・フンキャン貿易産業大臣が共同議長を務めた。

 我々は、パスカル・ラミー世界貿易機関(WTO)事務局長、APECビジネス諮問委員会(ABAC)、東南アジア諸国連合(ASEAN)及び太平洋経済協力会議(PECC)の参加を歓迎した。

 我々の議論は、2009年のAPECのテーマである「成長の持続と地域の関係強化」を中心に、行われた。我々は、世界及び地域経済の進展をレビューし、地域経済統合の強化に向けた進捗を歓迎し、経済成長を維持するための戦略について議論した。

 世界経済状況は、大幅に緩和された。IMFは、世界のGDPは2010年にほぼ3パーセント拡大し、すべてのAPECエコノミーはそのGDP成長がプラスに転ずると予測している。しかし、回復は、脆弱なものにとどまっている。今後の数四半期の成長のあり方は、不均一なものとなろう。失業は、我々の多くのエコノミーにおいて、容認できないほど高い水準に留まっている。我々は、他の国際的な枠組みとともに、回復が停滞しないことを確保し、イノベーションと知識集約型経済に支えられ、APECの核心的アジェンダである自由で開放された貿易及び投資に支えられた、あまねく広がる、均衡あるかつ持続可能な成長の基礎を築くために、協働する。アジア太平洋地域の中長期の成長見込みに対する我々の確信は、揺らいでいない。

 危機への対応、回復への体制準備

 あまねく広がる成長(inclusive growth)の促進

 我々は、すべての人々が地域経済統合から得られる利益を享受するような機会を創出するために、あまねく広がる幅広い経済成長の追求にコミットしている。我々は、実務者が作成した「あまねく広がる成長」に関する報告書を支持する。同報告は、構造改革が「あまねく広がる成長」に向けた重要なアプローチであると認識すると共に、既存のAPECによる活動の中から「あまねく広がる成長」を支援するものを取り上げ、APECとして焦点を当てるべき分野を定めるための全体像を描くものである。我々は、APECエコノミーといくつかのAPECの取組が、教育と雇用維持を通じた人材養成に既に焦点を当てているほか、あらゆる規模の企業、特に中小企業が利益を享受できるようビジネス環境を改善することを通じてイノベーションと起業の促進を行っていることに、留意する。我々は、APECにおける「あまねく広がる成長」を二つの大きな側面に沿って促進すべく、努力を傾ける。第一に、中小企業の発展の促進と労働市場の機能向上に焦点を置きつつ、すべての人が成長から利益を得られるような機会を高める構造的調整を促進する。同時に、これらの支援が女性労働者及び起業家への機会を拡大することを確保する。第二に、個人の経済上の安全の拡大及びインセンティブと調和的なソーシャル・セーフティー・ネット制度の策定に焦点を置きつつ、「たくましい社会(social resilience)」の構築を強化する。

 我々は、実務者に対して、現在進行中の「あまねく広がる成長」の作業を更に進展させ、APECにおける「あまねく広がる成長」アジェンダの鍵となる分野をより明らかにするとともに、既存の問題点を認識し、多年度の能力構築プログラムを開発し、2010年のAPEC閣僚会議において進捗を報告するよう、指示した。実務者は、これを貿易・投資委員会(CTI)、経済委員会(EC)、経済・技術協力運営委員会(SCE)、高級事務レベル会合(SOM)及びその下部フォーラム(人材養成作業部会(HRDWG)、中小企業作業部会(SMEWG)等)との密接な協議の下で行うべきである。

 我々は、中国が2010年に第5回APEC人材養成大臣会合を主催することに期待している。同会合は、労働生産性の長期的向上に結びつくような労働市場政策及び技術開発政策を含む、「あまねく広がる成長」プログラムの計画及び実施を議論するためのよい基礎を提供し、経済不況の社会的側面に対処するための協力を強めることとなるであろう。また、我々は、2010年に日本で開催されるECハイレベル政策ラウンドテーブル及び第17回中小企業大臣会合による「あまねく広がる成長」アジェンダへの貢献に期待する。

 持続可能な成長(sustainable growth)の促進

 我々は、経済成長と持続可能な開発との整合性の確保を追求する。人類に起因する気候変動は、世界が直面している最大の課題の一つである。この課題に対処する上で鍵となるAPECの取組として、「持続可能な成長」アジェンダは、環境物品及びサービス(EGS)へのアクセスの向上、APECエコノミーにおける EGSセクターの発展及びエネルギー効率向上、持続可能な森林経営及び植林を含む。

 「持続可能な成長」を促進し、気候変動に対処するための努力を前進させるために、EGS市場は、鍵となる役割を担っている。気候変動に関する政府間パネルは、多くの気候に優しい技術及び物品が既に商業的に提供可能であり、近く更なる商業化が見込まれている旨、強調した。これらの技術は、貿易自由化から利益を受ける。世銀は、4つの基礎的なクリーン・エネルギー技術(風力、太陽光、クリーン石炭及び効率的な照明)に対する貿易障壁を除去するだけで、これらの貿易を最大13パーセント拡大し得ると予測した。我々は、材料を再利用し、新製品を製造するよりも少ないエネルギーを消費する再生産品に対する理解を促進するためのAPECの努力を歓迎する。

 我々は、現存する貿易及び投資に対する障害を減少させ、EGS分野における新規の又は市場歪曲的な障害の導入を抑制するための方途を探求する。我々は、経済・技術協力(ECOTECH)及び能力構築活動を含む、気候に優しい技術やその他のEGS技術の普及を促進するための手段を取る。我々は、APEC域内及び世界におけるEGSの一層の透明性、情報共有、協力、普及を図る「APEC・EGS情報交換」の立ち上げを歓迎する。我々は、EGSの貿易、投資及び開発を促進するために何を行う必要があるのかに関する意識向上に役立つAPECのEGS作業プログラムを支持し、実務者に対して、2010年のAPEC閣僚会議で本作業の進捗状況を報告するよう、指示した。我々は、開かれたグローバルな貿易及び投資システムが我々のクリーン開発目標にとって中心的なものであると同時に、WTOにおける市場の開放が我々の気候・エネルギー安全保障に向けた目標を前進させることを再確認する。我々は、低排出・ゼロ排出技術に関する共同研究、開発、展開及び移転は、気候変動に立ち向かうための我々の共通の努力にとって重要であることを認識する。

 エネルギー効率の向上は、過去30年間で50パーセント以上のエネルギー消費の減少につながった。我々は、発電、産業、交通、住宅及び商業建築物におけるよりクリーンで効率的な技術を広げるとの観点から、エネルギー効率に関するベスト・プラクティスを共有するための取組を前進させる。我々は、自発的な APECエネルギー効率相互評価の実施を歓迎し、我々のエコノミーに対して、この評価に参加するように奨励する。我々は、クリーン・エネルギーの生産及び利用のための様々なアプローチを模索する機会となる第9回エネルギー大臣会合を2010年に日本が主催することに留意する。

 貿易金融に対する支援

 我々は、APECエコノミーによる、過去一年間の貿易金融状況に対応するための努力を歓迎する。これらの努力は、いくつかのAPECエコノミー間の追加的な二国間再保険協定の設立を通じたアジア太平洋貿易保険ネットワーク(APTIN)の拡大の進展と、現状を把握し、経験とベスト・プラクティスを交換するための議論とを含む。APECは、APECフォローアップ貿易金融調査を実施することで、地域における貿易金融状況のモニタリングを継続してきた。我々は、2009年7月の前回の調査以降APEC地域の状況が改善したこと、及び今後半年間で更にエコノミーの改善がするとの見通しがあることに勇気づけられた。我々は、世界経済の回復を支える貿易金融を促進することの重要性を認識した上で、実務者に対し、貿易金融分野の能力構築の努力を維持し、金融部門関係者との協力を継続するように、奨励した。

 多角的貿易体制に対する支援

 保護主義への対抗
 我々は、我々の経済回復に保護主義が与える脅威に対する懸念を維持する。我々は、2010年末まで、必要があればそれ以上延長して、投資或いは物品及びサービスの貿易に対する新たな障壁を設けないというコミットメントを含む、我々の市場の開放を維持し、あらゆる形態の保護主義に対抗するという2009年 7月の貿易担当大臣(MRT)シンガポール会合において誓った具体的なコミットメントを再確認する。我々は、これらのコミットメントに悖るあらゆる措置を WTOに迅速に通報してきた。我々は、今後も、同様に通報し、他の貿易パートナーがこれに倣うことを促す。さらに、我々は、WTO協定に整合的と考えられ得る措置が保護主義的な影響を有する場合には、その実施に対して最大限の抑制を働かせることを継続し、実施された措置については、迅速にこれを正す。

 開かれた市場に対するコミットメントのレビュー
 我々は、WTO、ABAC及びその他の関連機関からの情報に基づきAPEC事務局がまとめた貿易レビューを検討し、APECエコノミーによってとられた貿易、財政及び金融措置を検討した。我々は、貿易及び投資の増加が最近の世界経済活動の活性化に貢献したものの、貿易救済措置の増加が経済回復及び保護主義に関連するリスクが依然として残っていることを示唆していることに、留意する。我々は、かかるレビューは2010年にも継続されるとのMRTのコミットメントを堅持し、APEC事務局に対し、レビューのため、これらの機関と緊密に作業を行うことを求める。我々は、APEC地域が、全体として、世界危機の期間中、概ね貿易の開放性を維持したことに満足する。我々は、世界経済の回復と改善の速度に合わせて一時的な支援手段を含む全般的な政策設定を行う必要性を認識する。我々は、引き続き、貿易及び投資に影響する我々の政策の定期的なレビューを実施し、自由で開かれた市場の維持に対する我々の誓約を再確認する。

 ドーハ開発アジェンダ(DDA)の前進
 我々は、モダリティーに関するものも含むこれまでの進展を基礎として、2010年までにドーハ・ラウンドの野心的でバランスのとれた妥結を確保するとの決意を有している。我々は、そのため、最近の政治的コミットメントを目に見える進展へと変える必要がある。11月30日から12月2日にジュネーブで開催される第7回WTO閣僚会議は、2010年という目標を達成するための進展を確認する上で、重要な機会となる。我々は、2010年の目標に達するための更なる作業の強化を支援する。このため、我々は、合意済みのジュネーブ作業計画に従い、DDA交渉において農業及び非農産品市場アクセス(NAMA)の最終交渉に向けて前進するとともに、これと並行し、サービス、ルール、貿易円滑化及びすべての残されている問題の交渉を進展させるための努力を加速する。我々は、残されている隔たりを評価し、これを狭めるため、ジュネーブでの議長主導プロセスの下でのテキストを用いた交渉やWTO加盟国間の直接の関与を含め、あらゆる可能な手段を用い、すべてのレベルにおいて、より実質的に踏み込んだ関与を行うことを強く求める。我々は、継続的な関与の重要性に留意するとともに、モメンタムの維持を確保するため、直接的に関与するための準備を整えておく。我々は、実務者に対して、最終的なパッケージに関する隔たりを狭め、共通点を確保するため、すべての事項に関してプラグマティズム及び最大限の柔軟性を発揮するよう指示することに、合意する。これにより、遅くとも2010年の早い時期までに、閣僚が状況を評価するための道筋がつけられるであろう。

 WTOに対する支援
 APECエコノミーは、WTOとの協力を強化する。我々は、「貿易のための援助」における協力の拡大を含むWTOとの特定分野における協力に係わる APEC事務局の勧告を支持する。我々は、APEC事務局に対し、これらの協力のための努力に関する進展を報告するよう、指示した。我々は、第7回WTO 閣僚会議を支持し、同閣僚会議の議事を導く完全な参加、包括性及び透明性という基本原則を支持する。

 我々は、ロシア連邦のWTOへの早期加盟に対する支持を改めて表明し、交渉を促進する努力の重要性を強調する。

 ボゴール目標に対するコミットメントの再確認
 我々は、自由で開かれた貿易及び投資に関するボゴール目標に対するAPECのコミットメントを再確認する。我々は、APEC内だけではなく、その他の非 APECエコノミーとの間においても障壁を減少させるために、取り組む。我々は、APECの先進エコノミーが2010年までにボゴール目標を達成するものとされていることに留意し、「APEC先進エコノミーのボゴール目標達成に関する評価の作業計画」に示されているボゴール目標達成を評価するための信頼性及び意義のあるメカニズムの構築に合意する。我々は、この準備作業のための実務者の作業を称賛し、実務者に対し、この評価の結果を2010年のAPEC閣僚会議にて報告するように指示した。

 我々は、ボゴール目標達成に向けた手段として、個別行動計画(IAP)及びIAPピア・レビューが果たす重要性を再認識する。我々は、2009年のIAP を支持する。我々は、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、パプアニューギニア、フィリピン、ロシア、タイ及びベトナムに対する2009年IAPピア・レビューが成功裡に終結し2007年に開始されたIAPピア・レビューの第三次サイクルが成功裡に完結したことを歓迎する。

 アジア太平洋の自由貿易圏に向けた基礎の探求

 我々は、将来のあり得べきアジア太平洋の自由貿易圏(FTAAP)に向けた基礎の探求を継続するための2009年の作業を歓迎する。これは、FTAAPの設置がもたらし得る経済的利益及び課題を示した「FTAAPのあり得べき影響に関する分析研究」、FTAAPに至る可能な道筋を含むあり得べきFTAAP に向けた準備プロセスの一部として扱われる最新事項目録、並びに追加的な協定及び章を対象とするAPECの地域及び二国間の貿易協定における共通点と相違点を特定するための研究の拡大を含む。我々は、実務者に対し、FTAAPを達成するためのあり得べき一連の道筋を探求し、この作業を前進させるとともに、 2010年の閣僚会議において最新の進捗状況を報告するように指示する。

 地域経済統合の加速化
 我々は、APECの中心的な議題である地域経済統合の強化のための取組を加速させる我々のコミットメントを再確認する。我々は、2009年に地域経済統合に関して包括的なアプローチをとり、「国境における(at the border)」貿易自由化に係る取組に集中し、「国内にある(behind the border)」ビジネス環境を向上させ、「国境をまたぐ(across the border)」サプライチェーンの繋がりを高めた。我々は、多年度にわたって地域経済統合を加速させるための最新の行程表を歓迎する。我々は、実務者が原産地規則章とサービス章の分野において一層の共通化を促進するためにとった措置を歓迎する。我々は、実務者に対し、これら以外の自由貿易協定の章、すなわち投資章、貿易円滑化章や基準章等、自由貿易協定の中心的な章について共通化を促進する取組を拡大するよう、指示する。

 我々は、ボゴール目標を推進し地域経済統合を強化しようとするAPECの取組の概況を記述する2009年CTI年次閣僚報告を支持する。

 「国境における(at the border)」統合
 ビジネスにとってより使いやすい原産地規則を目指して
 我々は、原産地規則をビジネスにとってより使いやすいものにし、各々の地域・二国間自由貿易協定に含まれる原産地規則の間にみられる大きな相違、及びそれら相違の結果ビジネスが直面する遵守コストを是正するための取組を歓迎する。我々は、豪州、カナダ、日本、韓国、ニュージーランド、シンガポール、米国による原産地自己証明のパス・ファインダーへの参加を称賛する。これは、既存の電子原産地証明パス・ファインダーのような、原産地証明にかかる書類と手続を簡素化するために現在行われている取組に追加されるものである。我々は、さらに、原産地規則証明書の合理的な有効期間や少額貨物に対する原産地証明又は申告書の免除を含む、本件に関連するその他の要素に関する情報収集に向けた合意に留意する。我々は、実務者に対し、この分野における取組を継続して2010 年MRT会合の場で最新の進捗状況を報告するように、指示する。

 物品及びサービスの貿易の円滑化
 我々は、アジア太平洋におけるサービス貿易の円滑化を図る「APECサービス・イニシアティブ(ASI)」の下での進捗を歓迎する。我々は、APECエコノミー間でのサービス貿易に関わる複数の政策枠組みの一層の融合を実現する「APEC越境サービス貿易原則」を支持する。我々は、さらに、メンバー・エコノミーの関心分野における貿易を促進するためのAPECの取組に方向性を与える「サービス行動計画」を支持する。「サービス原則」と「サービス行動計画」は、一体として、サービス貿易促進のためのAPECの将来の作業にとって強固な基礎となる。

 我々は、2004年の「貿易とデジタル・エコノミーに関するAPEC政策の実施のための声明」に留意し、実務者に対し、デジタル経済を促進する作業の継続を指示する。

 「国内での(behind the border)」統合
 ビジネス環境の改善及び構造改革の実施
 我々は「APECビジネス環境の向上(EoDB)行動計画」を開始した。同計画は、改革上の優先順位を特定し、各々の領域における改善度を測る目標を設定し、同目標を達成するための能力構築作業計画を定めるものである。

 我々は、2015年までに、世銀のEoDB指数に関連して決定された5つの優先分野、すなわち「ビジネス開始」、「資金調達」、「契約履行」、「越境取引」及び「許可取得」において、APECエコノミー間でビジネスのコスト、迅速性、利便性の観点で25パーセント改善するとのAPEC広域達成目標を設定した。これらの目標は、例えば、コンテナの輸出入に係る平均コストを最大450米ドル削減することが可能であり、ビジネス開始に係る平均所要時間を1週間削減し、建設許可を得るための手続を平均5つ除去し、ビジネスにとって手応えある潜在的利得を示している。我々は、暫定的な目標として、2011年までに 5パーセントの改善の達成を目指す。我々は、実務者に対し、これらの目標に対する進捗状況を監視し定期的に見直すよう指示し、また、野心的目標達成に民間企業が貢献し得る方法を特定するためABACと緊密に協力するよう要請する。我々は、また、先導的役割を果たすエコノミー(チャンピオン・エコノミー)の主導によりAPEC全体がこれら目標を達成することを支援する能力構築作業計画を歓迎する。これら取組におけるチャンピオン・エコノミーは、「ビジネス開始」ではニュージーランド及び米国、「資金調達」においては日本、「契約履行」においては韓国、「越境取引」においては香港、中国及びシンガポール、「許可取得」においてはシンガポールである。

 我々は、規制改革を時宜にかなった形で扱ったECの2009年APEC経済政策報告(AEPR)を支持する。首脳の構造改革実施アジェンダ(LAISR)が2010年で終了するため、我々は、実務者及びECに対し、2010年LAISR推進作業計画(FWP)の達成実績調査を実施し、一層の「あまねく広がる成長」を促進する必要性等の中期的課題に対応するためにポストLAISRアジェンダの潜在的範囲を探求するよう、指示する。構造改革は、長期的成長を強化し、「あまねく広がる成長」を確保し、エコノミー間の発展の差を狭めるために、必要不可欠である。また、これは、貿易と投資の自由化を補完し、より深い地域経済統合を促進する。構造改革の進展は、世界的な経済危機からのAPECエコノミーの持続可能な回復を確保するために、極めて重要である。我々は、構造改革アジェンダに対してAPECが当てる焦点を強化する。

 我々は、2009年に、LAISRのFWPの下、各種の研修、講習会、セミナー、委員会及び研究が完了したこと、及び2008年8月に開催されたAPEC 構造改革担当大臣会合からの要望に対する回答としてのECにおける能力構築プログラムの優先順位付けにかかる報告書を歓迎する。我々は、構造改革を促す制度的枠組み及びプロセスの自主的見直しの開始、EC第1回会合に併せて開催される主要インフラ分野における構造改革の経済的影響と利益を議論するセミナー、及び競争政策法グループ(CPLG)会議における競争法関連訴訟手続上の公平性に関する委員会の開催に関するABACの提案に、期待する。

 投資の円滑化
 我々は、主要な実績指標を特定し、APECの投資円滑化行動計画(IFAP)の実施状況を評価する方法を確立するために、ポリシー・サポート・ユニット(PSU)の支援を得て実施された取組を歓迎する。我々は、2010年のMRT会合までにこの取組が完了することを期待する。我々は、投資協定の中心的要素の研究が第二段階まで完了したことに留意し、APECエコノミーが質の高い投資協定を形成するため、一層の能力構築を奨励する。

 知的財産権の強化
 我々は、知識集約型活動と投資の持続可能性の促進のため、効果的、包括的及び均衡のとれた知的財産制度の重要性を再確認する。我々は、人材育成、特許審査協力及び特許当局間のITネットワーク開発を含むイノベーションを促進するためのグローバル知的財産インフラの構築のため包括的かつ戦略的アプローチを取ることが望ましいことを認識する。我々は、また、この領域における能力構築を図ることの重要性を認識する。我々は、「著作権の制限及び例外に関する報告書」、及び特許取得手続に関するAPEC協力イニシアティブによる取組を含む特許協力の進展を歓迎する。我々は、APEC模倣品・海賊版対策イニシアティブや関連する能力構築、知的財産当局と利害関係者間の情報共有等の協働の努力を通じて、模倣品・海賊品の拡散を防止するための具体的な措置をとる。我々は、さらに、衛星波及びケーブル信号窃盗に取り組むための方法を模索する作業を前進させようとの努力に留意する。

 我々は、遺伝資源に関するTRIPS協定と国連の生物多様性条約との関係、伝統的知識及びフォークロアの保護を含む進行中の国際的な議論、特にWTOにおける議論の重要性を再確認する。これらの問題に関する意識の向上及び共有された目的の推進に継続的に努めるよう、奨励する。

 基準・整合化及び基準適合率の向上

 我々は、適切な場合には、国際標準化活動を強化し、関連する国際基準との適合を一層促進する。特に、イノベーション、安全、安心、エネルギー及び環境問題への解決に貢献する領域において、これを行う。我々は、標準化活動におけるすべての利害関係者の関与の重要性を認識しつつ、実務者に対し、基準及び適合性の発展におけるビジネスの関与に係る長期的な戦略を2010年に作成するよう、指示する。我々は、玩具の安全基準の改善及び一層の適合について議論を継続するよう、奨励する。

 我々は、ビジネス、特に中小企業が、技術規制要求に関する情報にアクセスし、貿易の技術的障害を克服するためにAPECエコノミーが実施した支援に関するモデル及び慣行についての研究を歓迎する。我々は、2010年の第1回SOMにおけるこれらの努力の成果とベスト・プラクティス・モデルの発展に期待する。我々は、また、「APEC電気電子機器相互承認アレンジメント(APEC EE MRA)」に関するAPECパス・ファインダー・イニシアティブに対する意識と理解の促進のための努力と、一層の対話と協力を通じてこれらの製品の貿易を円滑化するAPEC EE MRAの実施に向けた規制当局のコミットメントを歓迎する。

 「国境をまたぐ(across the border)」統合
 運輸、物流及びデジタル・コネクティビティの強化
 我々は、サプライチェーンの繋がりの強化を通じた貿易流通改革における進展を歓迎し、地域サプライチェーンにおける8つの連結上の問題点を認識するとともに、これらの問題点に取り組むための行動を提案したサプライチェーン・コネクティビティ(SC)構想を支持する。我々は、特に、「ビジネス・物流・ビジネス環境整備のための透明性イニシアティブ」及び、連絡先をウェブサイトで入手可能とし宅配に影響する問題領域すべてについてウェブサイトをまとめるために APECが払った努力を歓迎する。我々は、また、陸空海にまたがる物品及びサービスの流れを向上させる複合的なコネクティビティの経済効果を研究する取組を歓迎する。我々は、SC枠組を発展させるためのCTI、EC及び交通作業部会(TPTWG)の間の強力な協力関係を称賛する。

 我々は、SC枠組のための測定可能な業績目標開発に関するPSUの報告書を歓迎する。我々は、2010年にAPEC関連の会合及びAPECビジネス諮問委員会の場でSC枠組を更に発展させるよう実務者に指示し、その進展の第一段階としての2013年末までの成果を期待する。

 地域経済統合を推進する上で、我々は、物理的なコネクティビティに加え、デジタル領域におけるコネクティビティの重要性を認識しており、実務者に対し、「デジタル繁栄チェックリスト」の下で達成された成果を礎石として、デジタル・コネクティビティの更なる強化に向けた作業に継続的に取り組むよう、指示する。

 官民パートナーシップ(PPP)は、APEC域内におけるインフラ発展に対する有用な取組の一つとなった。これに関連し、我々は、実務者に対して、地域におけるサプライチェーン・コネクティビティの拡充に資する交通インフラの改善のためにPPPを使用する可能性を模索するよう、奨励する。

 貿易円滑化の強化
 我々は、実務者が第二次貿易円滑化行動計画(TFAP II)を首尾よく実施したことを称賛する。我々は、TFAP IIがもたらす効果を数量化するために使用するアプローチ及び方法を定めたTFAP II進展報告を歓迎する。我々は、APECが既に2006年から2008年に3.2パーセント取引コストを減らし、2010年までに追加的に概ね5パーセント取引コストを減少させる見込みであるとの評価に、満足する。我々は、進捗報告書中のTFAP IIを向上させるいくつかの勧告に留意し、実務者に対し、これら勧告を検討し2010年MRT会合で報告するように指示する。我々は、2011年に TFAP IIの結果についての最終報告を得ることを期待する。

 我々は、APECエコノミーによる国際貿易の「窓口一元化」実施に向けた進捗に留意し、経験を引き続き共有してこの領域における実施上の問題に関して議論することを奨励する。

 地域貿易の安全
 我々は、APECの貿易回復パイロット計画(TRP)作業の結論と勧告を支持する。パイロット作業は、テロ攻撃があった場合にAPECエコノミーがサプライチェーン遮断の経済への影響を最小化し早急な貿易の回復を促進する上で有用な行動を示した。我々は、APECのTRPを作動させ実行するためコミュニケーションの仕組みを構築する必要性、及び世界関税機関(WCO)も推奨するAPECエコノミー認定事業者(AEO)制度を確立する重要性を認識する。我々は、また、APECのTRPが採用する既存の国際的な概念に基づき信頼関係が構築されていること、及びAEO制度が貿易と貿易回復を促進する相互利益を得るものと認識されていることを評価する。APECのTRPパイロット作業の結論と勧告は、APECエコノミーに対し、貿易の速やかな再開を促進し、税関や国境管理等のプロセスを円滑にするプロセスへの有用な手がかりを提供する。

 我々は、また、税関手続に関する小委員会(SCCP)におけるAEO作業部会の設立を歓迎し、SCCPに対し、APECエコノミー間のAEO制度をWCOの国際貿易の安全確保及び円滑化のための基準の枠組と整合的に企画立案するよう、指示する。

 デジタル経済と情報ネットワークの強化
 我々は、「デジタル繁栄チェックリスト」にある諸要素が如何に貿易の流れを増加させ幅広い経済成長を達成するかを検討する作業を歓迎する。そのために、我々は、実務者に対し、APECエコノミー間でチェックリストの実施を促進することによりこの作業を拡大するよう、指示する。こうした取組には、チェックリストに含まれる諸要素との関係でAPECの現状がどのようなギャップを有しているかに関する分析、及びチェックリストに記載された政策目標との関連におけるAPECエコノミーの実行に関する調査の完了を含む。我々は、2010年のMRT会合における進捗状況報告を期待する。

 我々は、情報通信技術(ICT)の利用を前提とした経済成長の持続、社会経済問題に対処するためのICTの利用、そして第7回APEC電気通信・情報産業大臣会合において言及された2015年までにすべてのAPECエコノミーにおいてブロードバンドへの普遍的なアクセスを達成するとの目標に向けた努力を奨励する。我々は、APECデジタル機会センター構想(ADOC2.0)の第二段階における進捗を認識する。

 我々は、APEC越境個人情報保護国内法執行に関する国際協力取り決め及び関連文書について、これを「APECプライバシー枠組」に基づいた越境プライバシー規則の自発的な仕組みを設立する重要な段階として、支持する。我々は、効果的なプライバシー保護、情報フローに対する障壁の回避及び貿易、投資、経済成長の促進を可能とするこのシステムを発展させ続けるよう、すべてのエコノミーに対して奨励する。

 経済・技術協力の強化
 我々は、APECメンバー・エコノミーのボゴール目標達成と共通の繁栄を支援する能力構築計画への戦略的、目標志向的かつ多年度の計画的なアプローチに対するコミットメントを再確認する。我々は、大阪行動計画で記されたECOTECH活動の実施の基礎として、マニラ・フレームワークに対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、SCEの政策アジェンダを強化する上で確立された進捗、特に、ECOTECHの活動を導く包括的な枠組及びSCE運営改革計画の発展に、留意する。我々は、日本、米国及びチャイニーズ・タイペイによる地域のエネルギー効率性活動促進のためのAPEC支援基金に対する貢献、並びに豪州が途上国で実施するプロジェクトを増加させるAPEC支援一般基金及び人間の安全保障小基金双方の基金に対して行った貢献を歓迎する。

 我々は、シンガポールが今後3年間に貿易円滑化やサービス等特定の優先分野を対象として一連の能力構築を行う計画を開始したことを歓迎する。我々は、他の多国間機関及びABACとの連携強化を図ろうとするSCEの努力に留意し、すべてのSCE関連会合の独立評価計画を歓迎する。
 人間の安全保障の強化
 テロ対策
 地域における最近のテロ攻撃は、テロとの戦いが国際的に喫緊の必要性に迫られていることを想起させる。我々は、テロ対策タスクフォース(CTTF)が APEC地域において安全な貿易及び投資活動のための環境を改善するために果たし続けている積極的な役割を称賛する。我々は、貿易安全保障、港湾及び航空安全保障、テロリストからのエネルギー及び情報インフラの防護、テロリスト向け資金への対抗、及び食料供給に対するテロリストによる汚染からの保護のような分野における我々のイニシアティブの重要性を再確認し、これに関する能力構築の必要性とそれに沿った行動の優先付けのための手段となっている「テロ対策行動計画」を報告するよう、すべてのエコノミーに奨励する。

 我々は、APEC地域における航空安全保障の必要性を認識する。我々は、2010年夏にシンガポールにおいて開催される「APEC航空貨物安全保障ワークショップ」に期待する。我々は、航空貨物安全保障の分野で得られたベスト・プラクティスや教訓の共有を一層促進すると共に、航空貨物安全保障に特有の挑戦に対するあり得べき技術的解決策を探るためのAPECの努力を称賛する。

 緊急事態への備え
 中国、日本、フィリピン、チャイニーズ・タイペイ及びベトナムを襲った壊滅的な台風やインドネシアにおける地震のようなアジア太平洋地域における最近の災害は、災害の管理、救済及び回復におけるAPECの作業の重要性を我々に認識させる。我々は、ビジネスとコミュニティの回復力を増強し、官民パートナーシップを強化し、緊急事態準備タスクフォース(TFEP)の任期延長及び災害リスクを軽減する上で同タスクフォースが成した本年の作業を歓迎する。我々は、9月にハノイにおいて開催された第3回APEC緊急災害管理担当CEOフォーラムの成果と、損害損失評価にかかるAPEC原則、及び学校教育課程に災害教育を含めるAPEC原則を歓迎する。我々は、また、域内の組織間協力を促進し、緊急管理能力を強化するため、チャイニーズ・タイペイ主催により11月 30日から12月1日まで開催される「災害リスク軽減のための長期的能力構築の枠組みに関するワークショップ」及び、2010年1月に第4回APEC緊急災害管理担当CEOフォーラムを主催するという日本の提案を歓迎する。我々は、チャイニーズ・タイペイの提案によるAPEC中小企業危機管理センターの設立について、APEC地域にある中小企業の危機による影響からの回復力を強化するメカニズムとして、奨励する。

 食料安全保障の改善
 APECにとって、APEC地域における食料安全保障に対する挑戦への対応の優先度は、依然として高い。我々は、関連のAPEC下部フォーラムに対し、食料安全保障に関するAPEC高級実務者作業計画に基づいて、能力構築プロジェクト及びその他の効果的なイニシアティブを開始し、最良の政策及びベスト・プラクティスを見直し、2010年のAPEC首脳会議に報告するよう、指示する。我々は、APECにおける食品安全保障関連活動の再検討を主導するとの日本の申し出を歓迎する。我々は、食料貯蔵、輸送及び流通システムをより効率化する技術を促進することの重要性を認識する。我々は、技術の活用を促進するため、バイオテクノロジーを含む新しい先進技術についてのWTO協定に整合的で科学的根拠のある規制の導入を奨励する。我々は、効率的かつ十分に機能する農産物市場を促進し、これら農産物の国際貿易を妨げる貿易政策を回避することの重要性を認識する。我々は、我々の新鮮な水、海洋及び陸上の資源の効率的かつ持続可能な使用を確保する。我々は、世界の食糧安全保障に関するラクイラ共同声明に対する支持を表明する。

 食品安全の強化
 我々は、2009年7月に開催された食品安全協力フォーラム(FSCF)会合の成功を含む、情報共有及びAPECの食品安全能力に関する構築努力の調整の改善に向けた相当な進展を称賛する。我々は、また、シンガポールにおいて2009年8月に開催された「リスク分析における重要問題の検討」に関する食品安全協力フォーラム・パートナーシップ訓練制度ネットワークによるワークショップ開催の成功に留意する。同ネットワークは、規制当局者、製造業者及び生産者のための食品の安全における国際的な基準及びベスト・プラクティスを活用することにおいて能力構築を追求する。我々は、2010年の第一回再生産訓練モジュールの開始を含め、2010年の食品安全協力フォーラム及び食品の安全協力フォーラム・パートナーシップ訓練制度ネットワークにおいて予定されている活動を強く支持する。我々は、食品安全に関するAPECと世銀の連携に留意し、将来のAPECの食品安全活動における国際機関との連携を奨励する。

 保健の確保
 我々は、保健、経済発展及び安全保障の間の密接な関係を再確認する。2009年のH1N1パンデミックの発生は、公衆衛生に対する脅威に備え、対処するための国際協力の必要性を明確にしている。我々は、APECがH1N1及び他のパンデミックへの対応に関する地域対話を促進することを称賛するとともに、保健情報技術等の保健イノベーションの革新を含む、保健システム、治療、疾病監視を強化するための世界的流行病に対する備えを強化するために継続的に作業を行うことを奨励する。我々は、環境変化が与えうる保健への影響及び世界的な金融危機の保健システムへの影響に対処するためのAPEC専門家による協力を一層支援する。我々は、エコノミーに対し、保健システム及び保健イノベーションの革新に投資することがより多くの健康的な労働力による生産性の向上となり重要な経済利益となることを認識するよう、要請する。我々は、これに関連し、職場におけるHIV/AIDSの防止と管理に関する保健作業部会(HWG)の勧告を認識する。

 ガバナンス及び透明性の向上
 我々は、腐敗が民主主義、持続的成長、法の支配、市民の福利厚生、環境、我々の経済全体に跨る地球の安全保障に脅威を与える経済的、政治的、社会的挑戦であることを認識する。我々は、腐敗と闘い、ガバナンスを強化し、制度的統合性を強化することに関する腐敗対策・透明性に関する専門家タスクフォースのシンガポール宣言、及びガバナンス及び腐敗対策を強化することについてのAPECガイドラインを歓迎する。我々は、同宣言及び同ガイドラインを実際に実行するための措置をとることを各エコノミーに奨励する。我々は、また、2009年10月に北京において中国及び米国が共催した「APEC腐敗対策原則の適用及び利益紛争の予防のためのワークショップ」における成果を歓迎する。

 我々は、法規則の遵守確保、戦略の策定、法令遵守システム、ガバナンス及び倫理的行動基準の推進に関する包括的な能力構築の努力を称賛する。我々は、国境を越える違法な犯罪ネットワーク及び当該ネットワークと腐敗分子との関係がもたらす脅威を考慮して、適用可能な場合に、メンバー・エコノミーが国連腐敗防止条約及び国際組織犯罪防止条約を批准し、各エコノミーの法的枠組みに従って、これら条約の規定を実施する措置をとることを奨励する。

 分野別のイニシアティブの歓迎
 中小企業
 我々は、世界市場に対する中小企業のアクセスを支援する政策及びイニシアティブを議論した、2009年10月8日から9日までシンガポールにて開催された第16回APEC中小企業大臣会合の成果を歓迎する。我々は、SMEWG戦略計画2009-2012の実施における進展に留意すると共に、同戦略計画における6つの優先分野の下での様々なプロジェクトやイニシアティブを歓迎する。この点に関し、我々は、海外市場への供給者としての持続可能性を確保する、ビジネスのグッド・プラクティスに関する中小企業の訓練を奨励する。

 運輸
 我々は、2009年4月27日から29日までフィリピンにて開催された第6回APEC運輸大臣会合の成果を歓迎する。我々は、開かれた市場と経済統合の長期的利益を認識し、地域における航空サービスの自由化を達成するために合意或いはその他の手段によってAPECが作業を継続するという運輸大臣による要請を支持する。我々は、また、アジア太平洋地域における港湾及び関連セクター間のコミュニケーションと協力を促進し、より環境に優しく安全かつ更に強固な港湾開発や海運業を推進するために中国において2009年11月2日から3日まで開催された港湾開発に関するAPEC港湾サービス・ネットワーク会議を含め、海運貿易を強化するためのメンバー・エコノミーによる活動を支持する。我々は、また、海賊と戦うために更なる協調的な努力を奨励するという運輸大臣の要請を支持し、シンガポールにて7月29日に開催された海賊ワークショップを含め、TPTWGによる活動を歓迎する。我々は、エネルギー効率的な政策、基準及び技術を特定し、採用するためのエネルギー作業部会、次世代バイオ燃料の開発を促進するための農業技術協力作業部会(ATCWG)との協力、及び APEC航空排出タスクフォースの作業を通じた航空運輸サービスの持続的拡大を含め、持続可能な輸送を促進するためにTPTWGが作業を継続することを奨励する。

 女性
 我々は、特に現下の経済環境における女性の経済上の安全を促進するために目標とする政策及びプログラムに投資することを通して男女平等及び女性のための経済機会を最大化することについて、シンガポールにて開催された第7回女性問題担当者ネットワーク(GFPN)会合及び第14回女性指導者ネットワーク(WLN)会合の双方からの提言を歓迎する。これら提言は、女性による能力構築プログラム、技術及びインフラへのアクセスの促進、非正規で脆弱なセクターにおいて女性のための安全な雇用を促進する支援措置、女性主導の中小企業のための融資へのアクセス及びこれら中小企業の成長、並びに女性のための社会事業への支援を含む。我々は、21世紀の職場で必要な技能取得を支援する2010年数学教育会議において数学教育における男女平等の確保についての将来有望な新しい情報を提供した点で、HRDWGの取組を歓迎する。

 観光
 我々は、アジア太平洋地域における観光産業の開発の促進に向けて観光作業部会が行っている努力を歓迎する。我々は、観光が経済サイクルのすべての段階で果たす重要な貢献を認識するとともに、観光が景気の影響を受けがちである一方経済状況の変化に迅速に反応することを認識する。経済危機から回復する際、観光は、持続的経済成長、ビジネス活動の増加及び地域統合にとっての重要な牽引役となるであろう。

 海洋資源及び漁業
 我々は、2010年にバリ行動計画を拡大し、同計画の最近の実施を再確認する第3回海洋関連閣僚会合(AOMM3)をペルーが主催することに留意する。我々は、AOMM3を支援する漁業作業部会と海洋資源保全作業部会の作業を歓迎する。我々は、また、世界海洋会議の開催を歓迎し、その結果採択されたマナド海洋宣言を支持する。我々は、気候変動における海洋の役割及び、気候変動や沿岸及び海洋における他の脅威の影響に準備し適応するための総合的な沿岸及び海洋のマネジメント・アプローチの重要性を強調する。我々は、AOMM3において、気候変動、エコシステムに基づく管理及び食品安全が議論されることを歓迎する。

 ビジネス界の関与
 我々は、我々の地域におけるビジネス環境を改善するための継続的な官民対話及び交流を支持する。これについて、特に、保護主義への対抗、地域経済統合の加速、制度改革の優先分野の特定という領域において、我々は、ABACとAPECメンバーとの間で本年強化された取組を歓迎する。我々は、APECの目標を追求するにあたって目に見える利益を確保することに役立つような見解、提案及び提言を提供する継続的な作業を行ってきたことについて、ABACに対する謝意を表明する。

 APECの自動車、化学及び生命科学といった産業との確立された対話もまた、APECが貿易及び投資の自由化及び円滑化の問題を推進するために役立った。これについて、我々は、医療分野のイノベーションにおける投資効果を評価し、これらのイノベーションにおける民間部門の投資が実現できる環境を創り出す生命科学イノベーション・フォーラム(LSIF)による作業の継続を歓迎し支援する。我々は、2010年の医療改革を支援する作業の動きを更に深めることに、コミットする。我々は、LSIF投資イネーブラーのチェックリスト(Enablers of Investment Checklist)を完成した最初のエコノミーとしてシンガポールを称賛し、その他のAPECエコノミーが能力構築の必要性を特定するためにチェックリストを完成することを奨励する。我々は、必要に応じ、医療及び医療器具にかかる制度的調和を達成するための多年度の戦略計画及びプロジェクトの作成を歓迎する。

 我々は第11回APEC自動車対話の報告と勧告を歓迎する。特に、2008年11月にAPEC首脳が行った自動車セクターにおける投資又は物品及びサービスの貿易面での新たな障壁やWTO協定に非整合な措置の実施を自粛するとのコミットメントに対する自動車対話の強力な支持を歓迎する。

 我々は、採掘における協力を促進する鉱物タスクフォース(MTF)の積極的な役割を歓迎する。特に、この分野における持続可能な発展を拡充する努力への建設的な貢献を歓迎する。我々は、関連するAPECの委員会に対し、危険物質としてニッケル合金を分類するための科学に基づいた手法の確立を目指し欧州委員会と生産的対話を開始するよう、奨励する。

 我々は、化学対話がAPEC域内における化学物質にかかる規則及び管理に関するベスト・プラクティス及び情報交換の促進を継続するよう奨励するとともに、国際的な化学物質管理のための世界戦略的アプローチ(SAICM)への貢献を行うことを歓迎する。我々は、化学対話が欧州連合の化学物質の登録、評価及び認可(REACH)規制を含む化学物質管理規則の実施に関する疑問を有するメンバーを支援するための情報交換を行うことを一層奨励するとともに、持続可能な成長に寄与する作業を進展させる。我々は、地域における32のFTAの原産地規則に関する比較研究の完成を含め、化学分野における原産地規則を簡素化するための共通アプローチに関する科学対話の作業、及び原産地規則に関する企業が使いやすいガイダンスの試験的な作業の検討に留意する。

 APEC事務局の強化
 我々は、APEC事務局の運営上及び組織上の能力の強化を継続する。我々は、事務局の任期付き初代事務局長(FT-ED)の選出と任命の成功を歓迎する。 FT-EDの役職の設置は、事務局をプロフェッショナル化しメンバー・エコノミーの高まる要求を満たすために必要なものを十分に確保するための我々の目下の努力において、非常に大きな一歩となる。

 我々は、事務局による、事務局財政安定性改善のための努力や、APECのプロジェクト評価及び監視のプロセスについてより透明かつ我々の戦略目標に整合的にするようプロジェクト管理改革を導入するための財政管理委員会(BMC)の取組を支援するといった努力について、これらを称賛する。我々は、APECが毎年3つのプロジェクト承認セッションを維持するという提言を承認する。我々は、任務に関する声明やタグラインと共に、新たなブランド化戦略を歓迎し、再作成されたAPECコミュニケーション・アウトリーチ戦略を実施する事務局の努力を称賛する。我々は、事務局がHRDWGのwikiウェブサイトに類似した協力的な技術的解決策を模索することを奨励する。それは、協力的なコミュニケーション及び開かれた教育資源の普及のためのモデルとなり得る。

 我々は、2008年8月に業務を開始して以来のPSUの実績に勇気づけられている。その設置以来、PSUは、職員が10名にまで増員され、13の調査プロジェクトを完了している。PSUは、ロジスティックスにかかるAPECの政策協議及び世界経済危機に対する効果的な対処、並びに貿易及び投資円滑化行動計画の実施に向けたAPECの進捗評価に対して、有益な貢献を行った。「APECエコノミーにおける食料市場の改善並びに気候変動の緩和及び適応のために必要な又は望ましい物品及びサービスに関する規制のグッド・プラクティス」に関する研究は、これらの分野におけるAPECの作業の進展についての情報を提供する。我々は、PSUがAPEC経済指標データベースを作成したことを喜ばしく思う。これはAPECエコノミーに対して、初めて、二国間貿易及び投資に関するリンケージを含むAPEC経済に関する単一的で包括的なデータ・ソースをメンバーに提供するものである。我々は、また、「APEC域内の貿易創設」に関するPSUペーパーを喜ばしく思う。我々は、2010年以降PSUを支援することに、引き続きコミットする。我々は、この件に関しメンバー・エコノミーが自主的に行う如何なる貢献も、歓迎する。

 我々は、米国のAPEC技術支援訓練施設(TATF)が、APEC事務局及びその運営を強化し、プロジェクトの質及び運営プロセスを改善するために職員を訓練し、事務局の情報技術を向上し、ASEAN事務局との協力を促進することを支援するため、APEC事務局に対して行っている貢献を歓迎する。我々は、また、豪州の有効性資金(Effectiveness Grant)を歓迎する。

 我々は、APEC事務局長の2009年APEC年次報告書に留意し、そこに含まれた提言を含むAPEC作業プログラムに関する2009年SOM報告書を支持し、2010年APEC予算及びメンバーの貢献を承認する。我々は、日本における2010年のAPECのために進行中の準備を歓迎する。

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