中曽根外務大臣

中曽根外務大臣のカンボジア訪問(結果概要)

平成21年1月11日

 中曽根外務大臣は、10日から11日の日程でカンボジアを訪問し、11日、フン・セン首相及びハオ・ナムホン副首相兼外相と会談を行ったところ、概要以下のとおり。なお、この他、同大臣は経済協力案件の署名式、地雷除去機材引渡式及び日メコン交流年オープニング式典に出席した。

1.フン・セン首相表敬

(1)日・カンボジア関係

 冒頭、中曽根大臣より、昨年9月のカンボジア新政権成立に祝意を表した上で、カンボジア和平達成以降、日本はカンボジアを最重点国の一つとして、道路、橋梁等のインフラ整備、人材育成等あらゆる面で一貫して支援してきており、こうした日本の基本的考え方は今後も変わらない旨述べた。また、会談冒頭中曽根大臣より、日メコン交流年のバッジをフン・セン首相にお渡しし、フン・セン首相もその場でバッジを身につけた。

 これに対し、フン・セン首相より、2009年最初の外国からの代表団の訪問である中曽根大臣の御訪問を歓迎し、カンボジア和平以来の日本の支援に謝意を表明した上で、日本からの経済協力は経済開発、インフラ整備、人材育成等すべての分野に及んでおり、カンボジア発展の鍵となる役割を果たしている旨評価するとともに、日メコン交流年を協力して盛り上げていきたい旨述べた。

(2)日メコン協力・南部経済回廊支援

 中曽根大臣より、本年は、日メコン交流年であり、日本とメコン地域諸国との間で幅広い交流を進めていく姿勢を示した上で、メコン地域が力強く発展するための南部経済回廊支援の重要性に言及し、物流効率化支援を引き続き行う旨述べた。さらに、同大臣より、第二メコン架橋建設計画について両国首脳間の共同声明をふまえ、着実に実施していきたい旨述べるとともに、国道1号線改修計画について早期開通に向けて努力するとしつつ、住民移転補償等についてのカンボジア側の協力を求めた。また、中曽根大臣は、今般プノンペン都市圏(ニロート地区)の上水道施設計画を円借款(約35億円)にて支援する旨表明した。

 これに対し、フン・セン首相より、南部経済回廊支援は重要であり、第二メコン架橋の建設計画についてはこれまでの日本の総理とも相談させて頂いているが、改めて麻生総理にもお願いしたいとして、改めて同橋建設に対する強い要請があった。また、同首相は、同橋はカンボジアのみならず、大メコン圏、アジア・ハイウェイという観点からも重要である点を強調する一方、時間が経っているため、日本が本当に支援してくれるのかという声も挙がっているとしつつも、自分(フン・セン首相)は日本は友人であり、必ずやってくれると確信しているとして早期実現への期待の表明があった。また、同首相は、国道1号線改修計画についても重視しており、環境や社会に配慮しているので早期の実現を期待する旨述べた。

(3)世界金融・経済危機への対応

 中曽根大臣より、昨年のAPEC等において、麻生総理より発言したとおり、世界的な景気後退の兆しが強まる中で、「開かれた成長センター」としての役割がアジアに期待されており、自らの成長力強化と内需拡大に取り組むことは世界の利益である、来るべき東アジア首脳会議(EAS)ではアジア諸国の積極的な取組を表明していきたいと述べた。

 これに対し、フン・セン首相より、大臣の発言に同意を表明。続けて、同首相は、1997年のアジア経済危機とは違い、アジアが米国や欧州との関係で積極的な役割を果たすべきであり、その観点から東アジア首脳会議(EAS)が重要である、一致して対応したいと述べた。また、同首相は、先般の日中韓首脳会合において世界経済危機について話し合われたことを歓迎する旨述べた。

(4)クメール・ルージュ裁判

 中曽根大臣より、日本は、カンボジアが正義実現と法の支配の強化のため、クメール・ルージュ裁判に取り組む努力を支持しており、今般、本件裁判の重要性にかんがみ、国連分予算に24億円(2100万ドル)の支援を行うべく予算政府原案を閣議決定した、今後、国会にて審議される予定であり、予算成立に向け努力する、被疑者の高齢化もあり、迅速かつ厳正な裁判を期待する旨述べた。

 これに対し、フン・セン首相は日本の支援に謝意を表明した上で、被疑者が高齢化する中で迅速な裁判が重要であり、長期化は問題である、本件裁判は正義・国民和解の2つの観点から重要であり、日本から更なる支援を期待する旨述べた。

(5)国際場裡の課題

(イ)中曽根大臣より、2007年の共同声明の精神に則り、二国間関係を更に強化するとともに、気候変動や国連改革といった国際場裡の課題についても協力していきたい旨述べ、先方も同意した。

(ロ)北朝鮮について、中曽根大臣より、北朝鮮が国際社会の責任ある一員となるためには、核問題・ミサイル問題・拉致問題に真摯に取り組む必要があり、国際社会が連携する必要がある旨述べ、最近の日本と北朝鮮の関係について説明した。

 これに対し、フン・セン首相は、日本の考えを理解し、支持する旨表明するとともに、核・ミサイルの問題は地域や世界にとっても脅威であり、何かあれば伝えて欲しい旨述べた。

(ハ)カンボジア・タイの国境問題について、中曽根大臣より、自分は以前より地雷除去について個人的に支援してきており、両国に対してメッセージを発出した、両国が外相会合や合同国境委員会を開催して、問題解決に努力していることを評価し、今後も両国が自制しつつ、平和裡に解決することを期待する旨述べた。

 これに対し、フン・セン首相は、タイとの関係は正常化してきており、平和裡に交渉して解決したい旨述べた。

2.ハオ・ナムホン副首相兼外相との会談・昼食会

(1)日・カンボジア関係

(イ)総論

 中曽根大臣より、これに先だって行われたフン・セン首相表敬時と同様日本としてはカンボジアとの関係を重視してきており、不変である旨伝えた。

 これに対し、ハオ・ナムホン副首相兼外相は、中曽根大臣の訪問を歓迎する、和平以来の日本からの様々な分野での援助に関して、日本政府及び国民に深甚の謝意を表する、カンボジアは日本を最も重要なパートナーと考えていると述べた。

(ロ)経済協力

 中曽根大臣より、この後貴副首相兼外相との間で署名する感染症対策強化計画及びローレンチェリー堰(せき)の改修計画の協力が、カンボジア国民の生活水準の向上及び開発に資することを期待すると述べた。

 これに対し、ハオ・ナムホン副首相兼外相は、日本政府の支援に改めて感謝すると述べた。

(ハ)経済関係

 ハオ・ナムホン副首相兼外相より、日カンボジア投資協定が昨年発効した。日本からの民間投資が増えることを歓迎する旨述べた。

 中曽根大臣からもこれに同意するとともに、今年の2月から投資窓口機能強化のための技術協力を行いたい旨述べた。

(ニ)クメール・ルージュ裁判

 中曽根大臣より、先に行われたフン・セン首相への表敬時と同様の支援を伝えたところ、ハオ・ナムホン副首相兼外相より、日本からの多大な支援に感謝している旨述べた。

(2)メコン地域発展に向けた取組

 会談冒頭中曽根大臣より、日メコン交流年のバッジをお渡しした。

 ハオ・ナムホン副首相兼外相より、日本のメコン地域への取り組みを評価するとした上で、日メコン交流年におけるメコン地域の開発に関するセミナー及び第2回メコン外相会議の主催について提案があった。

 中曽根大臣より、カンボジアの取り組みを評価するとともに、第2回日メコン外相会議主催の提案を歓迎する、関係国と速やかに調整し実現できることを期待する旨述べた。

(3)国際場裡の課題

 中曽根大臣は、二国間関係を更に強化すると共に、気候変動や国連改革といった国際場裡の課題についても協力していきたい旨述べた。更に、大臣より、安保理非常任理事国に就任した、国際社会の平和と安全のため一層積極的な役割を果たしていきたい旨述べた。

 この他、テロ対策、地球環境・気候変動、中東和平等について意見交換が行われた。

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