中曽根外務大臣

日米外相会談の概要

平成21年7月22日

 現地時間22日午後3時45分過ぎ(日本時間午後5時45分過ぎ)より約1時間、ASEAN関連外相会議出席のためにプーケットを訪問中の中曽根大臣はクリントン国務長官との間で日米外相会談を行ったところ、概要以下のとおり。

1.日米関係

 中曽根大臣より、北朝鮮問題、アフガニスタン・パキスタン情勢、気候変動・エネルギー等の日米協力が進展しており、日米同盟を重層的に強化していきたい、先週クリントン長官が外交問題評議会で行った包括的な外交政策を示す演説を高く評価する、キャンベル国務次官補が訪日し、外務省の関係局長との間で極めて充実した協議が行われ、本日の外相会談の良い準備となった旨述べた。これに対し、クリントン長官より、日米間の協力は非常にうまくいっており、日米同盟を更に強化して行く必要があるとして、北朝鮮によるミサイル発射及び核実験に対する安保理決議の採択に至る日米協力に言及しつつ、このような協力を更に進めていく必要があるとの認識が示された。

2.北朝鮮

(1)中曽根大臣とクリントン長官は、北朝鮮による核開発・ミサイル発射は決して容認できないこと、安保理決議を着実かつ全面的に実施していく必要があること、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決が必要であることにつき認識を共有した。また、中曽根大臣より、今回の衆議院の解散に至る過程で野党の協力が得られず貨物検査特措法が廃案となってしまったことは大変残念であった旨述べた。

(2)両大臣は、以上の基本認識に立った上で、日米、日米韓での緊密な連携が必要であり、その上で、ロシア及び中国を取り込んだ形で北朝鮮問題に対応していくべきである、その中で中国の役割は極めて重要であるとの認識で一致した。

(3)両大臣は、六者会合が再開される場合に備えた話し合いを促進していくことが重要であるとしつつ、その中で五者の協調が今後一層重要であることを確認し、対応の仕方や具体的な段取りについて今後協議していくこととなった。

(4)両大臣は、北朝鮮問題への対応に関しても、日米安保・防衛協力を強化していくことが重要であり、先週行われた日米の外務・防衛局長協議は有意義であったとしつつ、拡大抑止の問題を始めとして二国間で議論を進めていくことを閣僚レベルで確認した。また、クリントン長官より、日米の防衛に対する米側のコミットメントは揺るぎない旨述べた。

(5)更に、中曽根大臣より、拡大抑止を維持しつつ、核のない世界を実現するという目標に向けて日米間で協力していきたい旨述べた。

3.アジア太平洋地域情勢

(1)ミャンマー

 中曽根大臣より、スー・チー女史に対する訴追を懸念する、先般のバン国連事務総長のミャンマー訪問を評価する、ミャンマーがバン事務総長の働きかけを真摯にとらえ、国際社会に受け入れられるような形で民主化プロセスを進めることを期待している、更に、ミャンマーの民主化と人権についての働きかけに加え、ミャンマーをエンゲージし続けることが重要である、G8サミットでも合意したとおり、ミャンマー政府が前向きな動きを示した場合には国際社会も前向きに反応する必要があるとの認識を示しつつ、午前中の日・ミャンマー外相会談でこのような認識を申し入れた旨紹介した。これに対し、クリントン長官より、中曽根大臣の認識を共有する、国際社会の懸念との関係で、ミャンマーが民主化、改革、特にスー・チー女史の解放を行うという前向きな反応を見せることが重要であり、こうした問題を提起していきたい旨、北朝鮮に関する国連安保理決議をミャンマーが完全実施することを重視している旨述べた。

(2)中国

 中曽根大臣より、中国の不透明な軍近代化や海洋進出に対する懸念を表明したのに対し、クリントン長官より、大臣の懸念を共有する、日本が韓国及び中国との間で3カ国の対話を進めていることを支持する、軍近代化や透明性の問題に対応する意味でも中国を二国間あるいはARFのような多国間の対話に積極的に関与させていくことが重要であり、中国の前向きな台頭(rise)を促していきたい旨述べた。

(3)インド

 中曽根大臣より、クリントン長官が17日よりインドを訪問したことに言及した上で、同訪問では米印戦略対話の立ち上げ等の成果があったことを祝したい、自分も先般、クリシュナ印外相と戦略対話を実施した旨、インドは重要な国であり、日米両国がインドと引き続き関係を強化することが重要である旨の認識を示したのに対し、クリントン長官より、大臣の認識を共有する旨述べた。

(4)ロシア

 中曽根大臣より、アジア太平洋地域のマネージという観点から、ロシアの同地域への建設的関与を得るため、日米露の有識者による第1回安全保障協議の開催に向けて米国の協力をお願いしたい旨述べたのに対し、クリントン長官より、一緒に考えていきたいとの反応があった。

4.中東情勢

(1)アフガニスタン・パキスタン

 クリントン長官より、日本が果たしている建設的な役割を高く評価している旨、パキスタン支援国会合の開催に感謝する旨述べると共に、日本が行っているインド洋における給油活動については日本政府の不変の政策となるよう期待しているとの認識を表明した。

(2)イラン

 中曽根大臣より、大統領選後の情勢を懸念している、引き続きハイレベルの対話を活用し、EUや米の関与政策との連携を深め、日本独自の立場から働きかけていく考えである旨述べた。これに対し、クリントン長官より、国際社会の懸念についてイランに対して明確なメッセージを送り続けることが重要であり、イランは、このような国際社会の懸念に応え、米国との対話の機会を逃すべきではない旨述べた。

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