外務大臣

前原外務大臣の豪州訪問(概要)

平成22年11月23日

 11月23日(火曜日)、キャンベラを訪問した前原外務大臣は、豪州側要人(エマーソン貿易相、ラッド外相、スミス国防相、ギラード首相)と会談したところ、概要は以下1~4のとおりです。また、前原外務大臣は戦争記念館を訪問したところ、概要は以下5のとおりです。

〔ポイント〕

  • 前原大臣のキャンベラ訪問は、外務大臣就任後初めての二国間訪問における首都訪問であり、これは豪州重視の現れ。
  • 前原大臣は「包括的経済連携に関する基本方針」を豪州側に説明。エマーソン貿易相と日豪EPA交渉について新たなスタートを切ることで一致するとともに、TPPについても協議。
  • 前原大臣は、豪州は、経済外交の3つの柱である、自由な貿易体制、資源・エネルギー・食料の安定供給確保、インフラ海外展開の分野において重要な国であることを強調し、資源・インフラ分野においては日豪間の政治レベルでの対話を強化していきたい旨発言。ラッド外相からは、豪州としてレアアースを日本に対して長期的かつ安定的に供給したい旨発言。
  • 北朝鮮による延坪島に対する砲撃については、両外相は事実関係を更に確認の上、韓国を始めとする関係国と連携し、対処していくことで一致。
  • 両外相は核軍縮・不拡散分野で主導的な役割を果たしている日豪両国の協力関係を再確認し、更に深めていく目的で文書(別添)を作成。
  • 前原大臣は戦争記念館を訪問し、無名戦士の墓で献花を行うとともに、元戦争捕虜のダンロップ博士の像を訪問。

〔概要〕

1 エマーソン貿易相との会談(11時15分から約80分間)

(1)日豪経済関係

 前原大臣から、豪州は、経済外交の3つの柱である、自由な貿易体制、資源・エネルギー・食料の安定供給確保、インフラ海外展開の分野において重要な国であることを強調し、同分野での両国間の関係をさらに強化していきたい旨述べるとともに、資源・インフラ分野においては日豪間の政治レベルでの対話を強化していきたい旨述べました。エマーソン大臣からも日豪関係の重要性を認識しつつ、協力関係を一層深めていきたい旨発言がなされました。

(2)日豪EPA交渉

 前原大臣から、先般日本政府が決定した「包括的経済連携に関する基本方針」を踏まえ、日豪EPA交渉について、交渉の妥結に向けた取組を加速化したいと述べました。エマーソン大臣からは、日本の「基本方針」の決定を高く評価の上、交渉の前進を図っていくことにつき賛同の意が示され、次回会合より新たなスタートを切りたい旨の発言がありました。次回交渉会合は来年初めに開催する方向で両国間で調整していくことで一致しました。

(3)TPP

 前原大臣から、TPPについては、情報収集を進めながら対応していく必要があり、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始していくこととしたい旨述べ、このプロセスにおける豪の協力を要請しました。エマーソン大臣からは、TPPについても日本と協力していく意向が示されました。

(4)WTOドーハラウンド

 前原大臣から、APEC閣僚会議におけるエマーソン大臣の貢献に謝意を述べ、両国でドーハラウンド交渉の成功に向けて協力していくことを確認しました。

2 ラッド外相とのワーキングランチ(12時45分から約1時間:エマーソン貿易相も同席)及び会談(17時30分から約80分間)

(1)冒頭発言

 冒頭、前原大臣から今回自分は日豪EPAを動かすために豪州を訪問した、外務大臣就任以来、二国間訪問で外国の首都を訪問したのは初めてであり、これは、日本として豪州との関係を重視していることの現れである旨発言しました。これに対し、ラッド外相から前原大臣の訪豪を歓迎するとともに、豪州にとり日本との関係は極めて重要である旨述べました。

(2)日豪関係の強化
ア 安全保障協力

 両外相は安全保障協力の深化を目指し、来年の日豪2+2の開催、秘密情報保護協定交渉の加速化で一致しました。

イ 日米豪協力

 両外相は地域の安定に向けて日米豪協力を深めるため、昨年9月が最後となっている日米豪戦略対話閣僚級会合を、来年7月のASEAN関連外相会合の際に開催する可能性を検討していくことで一致しました。また、これまでに3回行われている日米豪による共同訓練を強化するとともに、災害救助等の分野でも協力を進めることで一致しました。

(3)地域・グローバルな課題における連携強化
ア 核軍縮・不拡散

 両外相は本年9月に日豪共催で開催された核軍縮・不拡散に関する外相会合を含め、この分野で主導的な役割を果たしている日豪両国の協力関係を再確認し、更に深めていく目的で文書(別添)を作成しました。また、両外相は核軍縮・不拡散に関する第2回外相会合を来年春にもベルリンで開催する方向で早急に日程を調整していくことで一致しました。

イ 北朝鮮

 北朝鮮によるウラン濃縮活動について、前原大臣からボズワース米北朝鮮政策特別代表とのやりとりを説明し、慎重に対応することが重要である旨述べました。同時に、両外相は、事態は深刻であるとの認識に立って、重大な懸念を共有し、米国と緊密に協議しつつ、日豪間でも引き続き連携していくことで一致しました。また、北朝鮮との関係で、両外相は中国がより大きな役割を果たすことが望ましいとの点で一致しました。

 夕方の会談の直前に発生した北朝鮮による延坪島に対する砲撃については、両外相は会談中に事実関係につき逐次報告を受けた上で、更に確認の上、韓国を始めとする関係国と連携しつつ、対処していくことで一致しました。

ウ フィジー

 ラッド外相から、クーデターにより成立したフィジーの現政権を認めることはできないとの点を含め、豪州による対フィジー政策について説明がありました。これに対し、前原大臣からは10月に行われた太平洋・島サミット中間閣僚会合の際に、フィジーのクンブアンボラ外相を招待し、同外相に対し、民主化に向けた強いメッセージを伝えた旨述べるとともに、フィジーについては2014年までに自由かつ公正な総選挙が行われるよう働きかけることが重要であるとの日本の立場を伝えました。また、フィジーの民主化問題については米国及びニュージーランドとも意見交換を行うことが重要であり、特に来年予定される日米豪戦略対話閣僚級会合でも取り上げることで一致しました。

3 スミス国防相との会談(15時30分から約15分間)

 前原大臣とスミス国防相は来年日豪2+2を開催することを確認するとともに、日豪間の安全保障協力を強化することで一致しました。

4 ギラード首相表敬(15時45分から約30分間;ラッド外相同席)

  1. (1) 前原大臣から、横浜APECの際のギラード首相による貢献に謝意を表明するとともに、APECの際に菅総理とギラード首相が共に展示を見学した小惑星探査機「はやぶさ」により、小惑星「イトカワ」が起源と考えられる微粒子約1500個が見つかったことを述べ、これまでの豪州側の協力に感謝しました。
  2. (2) ギラード首相から、菅政権が発表した「包括的経済連携に関する基本方針」を歓迎するとともに、貿易のみならず安全保障を含む幅広い分野での協力を深めていきたい旨発言がありました。
  3. (3) 前原大臣から、資源のない日本にとって、資源を長期かつ安定的に供給してくれる豪州は非常に重要であり、日豪経済関係をさらに発展させるためにも本日エマーソン貿易相との間で日豪EPA交渉について新たなスタートを切ることで一致した旨述べました。更に、前原大臣から、豪州とはレアアース確保、新幹線等のインフラ海外展開についても協力を深めていきたい旨述べました。これに対し、ギラード首相から、レアアースは戦略的に重要である旨述べ、さらにラッド外相からは日本に対しレアアースを長期的かつ安定的に供給していきたい旨の発言がありました。
  4. (4) 最後に、ラッド外相から捕鯨問題について提起があったことを受け、前原大臣から調査捕鯨は国際捕鯨取締条約で認められた正当な科学的調査である、豪州が国際司法裁判所に提訴したことは残念だが、捕鯨問題が良好な日豪関係全体を損なうことがないよう注意深くマネージしたい旨述べました。

5 戦争記念館訪問(14時30分から約40分間)

 前原大臣は戦争記念館を訪問し、無名戦士の墓で献花を行うとともに、元戦争捕虜のエドワード・ダンロップ博士の像を訪問しました。共同記者会見において、前原大臣は「第二次世界大戦における約2万2千名の戦争捕虜の方々へのお詫びの気持ちをダンロップ博士像を訪問することで表したかった」旨述べました。

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