平成17年9月21日
町村外務大臣は、9月13日から19日まで7日間ニューヨークを訪問し、第60回国連総会の一般討論演説を行うとともに、小泉総理の指示により、総理の代理として安保理首脳会合、開発資金に関する特別会合等に出席した。また、エリアソン総会議長のほか、米、露、韓国、G4等をはじめとする各種外相会談に出席して意見交換を行ったところ、概要は以下のとおり。
日付 | 日付 | 予定 |
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9月13日 (火曜日) |
午後 | ニューヨーク着 |
9月14日 (水曜日) |
午前 | 国連特別首脳会合開会セッション 安保理首脳会合 開発資金に関する特別会合 |
午後 | ズィバーリー・イラク外相との会談 ラヴロフ露外相との会談 |
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9月15日 (木曜日) |
午前 | ムシャラフ・パキスタン大統領(経社理議長国)主催朝食会 エリアソン国連総会議長との会談 日・ASEAN外相会議 |
午後 | G4外相会合(アモリン伯外相、シン印外相、プロイガー独国連大使との会談) 核テロ防止条約署名式同席 小泉総理とアナン国連事務総長との会談同席 |
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9月16日 (金曜日) |
午前 | アクフォ=アドゥ・ガーナ外相との会談 ドゥースト=ブラジー仏外相との会談 |
昼 | 国連邦人職員との懇談会 | |
午後 | 潘基文・韓国外交通商部長官との会談 ギュル・トルコ副首相兼外相との会談 ペティグルー加外相との会談 |
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9月17日 (土曜日) |
午前 | 日・GCC外相会合(ムハンマド・バーレーン(議長国)副首相兼外相、アティーヤGCC事務局長、サムハン・ア首連(次期議長国)外相顧問ほかとの会談) |
午後 | フィーニ伊外相との会談 ストロー英外相との会談 日米韓外相会談 ライス米国務長官との会談 日・EUトロイカ外相協議(ストロー英(議長国)外相、プラスニック・オーストリア(次期議長国)外相、ソラナ共通外交安全保障政策(CFSP)上級代表、フェレーロ=ヴァルトナー対外関係担当欧州委員との会談) 一般討論演説 |
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9月18日 (日曜日) |
午前 | モタッキ・イラン外相との会談 |
午後 | ニューヨーク発 |
町村大臣より、多くの加盟国が21世紀の現実を反映すべく安保理を改革すべきとの認識を共有し、前総会会期において歴史上初めて安保理改革決議案が提出されたことを踏まえ、今次総会会期中に安保理改革の早期の決定が行われる必要性を強く訴えた。また、日本が国連と協調して、軍縮・不拡散、テロとの闘い、北朝鮮問題、イランの核開発問題といった新たな脅威に対処するとともに、人間の安全保障の考え方を重視して開発問題に取り組む決意を表明した。
(1)国連特別首脳会合開会セッション(14日午前)
今次総会の共同議長(スウェーデン首相及びガボン大統領)、アナン事務総長及びブッシュ米大統領が演説を行った。各首脳等の演説は、開発・平和の問題は互いにリンクしており、我々が抱えているのはグローバルな課題であり、国連を通じた国際的な協力が大変重要であるという点で共通していた。成果文書の内容については、スウェーデン首相より、国連改革は安保理改革の構成の変化なしにはあり得ないという発言があり、アナン事務総長からは、今次成果文書の未達成の課題として、軍縮・核不拡散問題及び安保理改革を取り上げ、これを早急に解決する必要があるとの発言があった。
(2)安保理首脳会合(14日午前)
「テロの扇動行為の禁止等に関する安保理決議」(英主導)及び「アフリカにおける紛争予防に関する安保理決議」(ベナン主導)の2本の決議が採択され、各国首脳が発言した。ほぼ全ての首脳が、テロとの闘いに対する国際的連帯の必要性を強く訴え、テロの扇動行為の取り締まりがテロとの闘いの中で重要である旨を発言した。アフリカの紛争予防に関しては、開発問題の重要性と関連して、紛争の根源的な問題として貧困があり、貧困をいかに解決するかが重要であるとの問題意識に基づく発言が多くみられた。なお、ブラジル、仏及び町村大臣から、安保理がこうしたグローバルな問題を解決していくためには、安保理の構成を変化させる必要があるという発言があった。
(3)開発資金に関する特別会合(14日午前)
町村大臣はステートメントを行い、日本は開発途上国の開発を達成するため、今後もミレニアム開発目標(MDGs)に強くコミットしていく旨発言した。その具体的手段として、ODA事業量の規模を拡大する旨述べると共に、有益なアプローチとして人間の安全保障の促進、南南協力の推進を重視する旨述べた。多くの国より、モンテレイ合意にある先進国のODA対GNI比0.7%目標を確実に達成すべきであるとの要請がなされ、だが、同時にG8諸国が最近決意した国際機関の債務削減やODAの増額のコミットが歓迎された。また、貿易の重要性が強調され、香港におけるWTO閣僚会合の成功への期待が示された。
(4)エリアソン第60回国連総会議長との会談(15日午前)
主に成果文書及び安保理改革につき協議した。町村大臣より、エリアソン議長の就任を祝しつつ、成果文書の採択に果たした同議長の役割を評価した。エリアソン議長よりは、困難な交渉を経て採択された成果文書は非常に内容の濃いものであること、平和構築委員会や人権理事会の設立など自らが議長を務める今次総会では多くの作業が待ち受けているとの発言があった。安保理改革については、町村大臣より、首脳会合開会セッションにおいてスウェーデン首相(エリアソン議長は前スウェーデン駐米大使)が安保理の構成を変えなければ国連全体の改革は完結しないとの趣旨の発言を行ったことに感銘を受けた、日本は今後の安保理改革の進め方につきG4も含め検討していると発言した。エリアソン議長は、スウェーデン首相の発言は同首相の信念から出たものであり、アナン事務総長も同趣旨の発言をしていると述べつつ、安保理改革についてまずは議長として各国の意見を十分聞き、議長としての役割を求められるのであればその上で考えていきたい、日本に対しては現状認識を十分行った上で今後の対応を決めるべきと発言した。
(5)国連邦人職員との懇談会(16日昼)
町村大臣は、国連等国際機関の邦人職員計9名と、約一時間余り懇談した。懇談においては、邦人職員より、日本外交への期待として南南協力、人間の安全保障など日本が政策面でリーダーシップをとることに対する期待とスマトラ沖地震及びインド洋大津波に対する迅速な支援に対する感謝が示された。一方で、国連及び関係機関への拠出金の減少により日本のプレゼンスが下がることに対する懸念が示された。また、日本の外交政策について、更に良く理解されるような説明を行っていくことの重要性が指摘された。さらに、国際的に活躍する日本人を増やす観点から、高校や大学といった早い段階から、語学や世界的な課題に関心を有する広い視野を持った若い人を育てていくことが重要との指摘があった。
(1)ズィバーリー・イラク外相との会談(14日午後)
ズィバーリー外相は、サマーワにおける自衛隊の駐留継続を前向きに検討するよう求めた。これに対し、町村大臣は、12月以降の自衛隊の駐留については政治プロセスの進捗状況、復興の状況、国際社会の動向等を総合的に検討した上で判断していきたいと考えており、引き続きイラク側と緊密に連絡していきたい旨応えた。その他、復興支援、ズィーバリー外相の訪日、安保理改革について意見交換を行った。
(2)ラヴロフ露外相との会談(14日午後)
11月のプーチン大統領訪日まで残された時間はあまりないことから、準備を加速させることで一致した。北方領土問題に関しては、引き続き外相レベル及び事務レベルで話し合っていくことで一致した。また、太平洋パイプライン・プロジェクトに関しては、町村大臣より日露の協議が進んでいることを評価したのに対し、ラヴロフ外相より、太平洋パイプラインの出口は必ず太平洋に持っていきたい、このプロジェクトは是非日本と協力していきたい旨述べた。その他、北朝鮮問題及びイランの核問題について意見交換を行った。
(3)日・ASEAN外相会議(15日午前)
町村大臣より、日ASEAN首脳会議において日ASEANパートナーシップの今後の方向性(例えば開発格差是正支援や包括的経済連携推進等)を明らかにする首脳文書を発出することを提案した。また、東アジア首脳会議(EAS)では、地域協力の基本的な原則等について高い次元で議論を行い、良い宣言を発出することが重要であり、EAS及びASEAN+3首脳会議双方の成功に向け積極的に貢献したい旨表明した。これに対しASEAN側は、日ASEAN関係に係る日本側の前向きな発言に感謝すると共に、EAS及びASEAN+3首脳会議双方の成功を重視すべきとの点については同感であり、日本の積極的貢献を期待する旨の発言があった。このほか、地域・国際情勢として、朝鮮半島情勢、国連改革、ASEM経済大臣会合(15日からオランダで開催)について意見交換を行った。
(4)アクフォ=アドゥ・ガーナ外相との会談(16日午前)
国連安保理改革について、アクフォ=アドゥ外相より、アフリカ及びアフリカ連合(AU)の動きについて紹介すると共に、アフリカ諸国が拒否権にこだわる理由やアフリカ諸国の間で安保理改革に関する立場の相違がある理由等に関して説明があった。これに対し、町村大臣より、我が方の安保理改革に関する立場を改めて説明し、引き続きこの問題について取り組んでいくことの必要性につき一致した。
(5)ドゥースト=ブラジー仏外相との会談(16日午前)
安保理改革に関し、ドゥースト=ブラジー外相から改めてG4に対する支持の表明があり、また、旧敵国条項の削除に関する日本の立場を支持する旨表明があった。町村大臣から、仏の支持に謝意を表明するとともに、安保理改革のモメンタムを維持していく必要があり、緊密に意見交換をしていきたい旨述べた。また、イランの核問題に対する懸念を共有し、イランが濃縮関連・再処理活動を停止し、EU3との交渉に戻ることが重要との認識で一致した。この他、EUの対中武器禁輸解除問題、開発資金のための国際税、OECD次期事務総長選挙に関する意見交換を行った。
(6)潘基文・韓国外交通商部長官との会談(16日午後)
会談時間の大半が北朝鮮問題に関する意見交換に充てられ、結論として、第4回六者会合における交渉が非常に煮詰まってきている段階でもあり、日・米・韓の連携が一層重要になっているとの点で双方の認識が一致した。日韓関係については、潘長官より、未来志向的な日韓関係を構築したい旨述べ、町村大臣より、次回首脳会談へ向け、良い流れをつくるべく努力したい旨述べた。潘長官より、現在実施中の期間限定査証免除の延長が要望されたのに対し、町村大臣より、現行措置を来年2月末まで暫定延長する旨応じ、潘長官より謝意が表明された。町村大臣より、「日韓友情年」事業への韓国側の協力を要請した。その他、日韓歴史共同研究、新たな追悼・平和祈念施設、朝鮮半島出身者の遺骨問題、サハリン「韓国人」支援、在韓被爆者支援等につきやりとりがあった。
(7)ギュル・トルコ副首相兼外相との会談(16日午後)
二国間関係について、ギュル副首相兼外相から、町村大臣に対しできるだけ早くトルコを訪問して欲しい旨要請があり、町村大臣よりなるべく早く訪問したい旨応じた。また、町村大臣から愛・地球博へのトルコの参加について謝意を表明した。地域情勢については、中東和平問題とイラク問題に対するそれぞれの取組につき意見交換し、両大臣はこれらの問題に関する立場が類似していることを確認した。また、イランに関し、ギュル副首相兼外相より、同国が地域の大国であることから安定が重要である旨述べた。
(8)ペティグルー加外相との会談(16日午後)
両外相は、良好な日加関係をさらに強化するためにも高いレベルでの対話が重要であるとの意見で一致した。加側より、日本におけるBSE問題を巡る議論の進展を評価している旨、また、カナダ産牛肉の輸入が早期に再開されることを希望する旨述べたのに対し、町村大臣より、食の安全の確保を前提に、科学的知見に基づき、早期解決に向けて引き続き努力していく旨述べた。このほかに気候変動枠組条約についても意見交換を行った。
(9)日・GCC外相会合(17日午前)
本外相会合を来年以降も実施すること、及び、経済分野を含む日GCC関係強化に向けて双方が努力し、この観点からハイレベルでの協議を早期に実施することで双方は一致した。また、原油価格高騰に関し、町村大臣より原油の増産努力を期待する旨申し入れ、GCC側は日本側の関心を共有し、努力を継続する旨述べた。さらに、中東和平及びイラク復興に関し意見交換を行い、町村大臣より、同じアラブの近隣国として資金面等で一層積極的な貢献を期待する旨表明した。またさらに、町村大臣から安保理改革に対する支持を要請し、GCC現議長国のバーレーンより日本の常任理事国入りへの支持が表明された。
(注)GCC構成国:サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、オマーン、カタール、クウェート
(10)フィーニ伊外相との会談(17日午後)
両外相は、日伊関係は良好で、日伊間の経済貿易関係が相互補完的であるとの認識に立ち、両国の関係を更に発展させていくことで一致した。国連改革に関し、フィーニ外相から、日本の国連及び国際社会における貢献を高く評価している旨の発言があり、町村から国連改革に向けて高まった機運を活かしていきたく、伊側ともよく相談して是非とも改革を実現したい旨述べた。フィーニ外相からは、関係国全てが満足できるような解決策を見出していきたいとの反応があり、引き続き日・伊間で良く意見交換していくことで一致した。この他、OECD事務総長選出に関する支持要請、中国情勢、EUの対中武器禁輸解除問題に関する意見交換を行った。
(11)ストロー英外相との会談(17日午後)
両外相は、日英関係が良好であるということ、引き続き幅広い問題で協力していくことで一致した。イラクに関し、両外相は、サマーワにおける日英の良好な協力関係を歓迎するとともに、イラクの復興は今後年末にかけて政治プロセスのスムーズな進展が重要となることを踏まえ、引き続きこれまで以上に密接に連絡していくことで一致した。また、イランの核問題に対する懸念を共有した。その他、OECD事務総長選挙に関する支持要請を行った。
(12)日米韓外相会談(17日午後)
六者会合について三ヶ国が協力して成果を上げることが重要であるとして、三ヶ国が連携していくことの重要性につき一致した。
(13)ライス米国務長官との会談(17日午後)
在日米軍再編問題に関し、町村大臣より、米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄をはじめとする地元の負担を軽減するとの観点から速やかに具体的成果を得るべく協議を加速化していきたい旨述べ、ライス長官も協議を加速したい旨述べた。BSE問題に関し、町村大臣より、食の安全の確保を前提として科学的知見に基づき早期解決に向け引き続き努力していく旨述べ、ライス長官より早期解決を極めて重視している旨述べた。両外相は、日米戦略的開発協調に関する共同発表を発出した。
町村大臣より、米国と協力してアフガニスタンへの支援を継続していきたい旨述べ、引き続きインド洋における海上自衛隊による活動を継続する方向で検討を進めている旨述べたのに対し、ライス長官より、日本の貢献を高く評価し、海上自衛隊の活動を継続する方向で検討するとの立場に謝意を表明した。また、町村大臣より、引き続きイラクの国づくりを支援していく意向を表明したのに対し、ライス長官より、政治プロセスは進展しており、治安部隊の強化も進展していると述べつつ、引き続き国際社会の支持が重要であり、日本の貢献を高く評価している旨述べた。更に、町村大臣より、イランがウラン転換活動を停止しなければ、IAEA9月理事会で安保理付託の是非につき議論されるべきであり、同国がウラン転換活動を停止しEU3との交渉に戻るべきとの立場を表明したのに対し、ライス長官より、イランの核開発については米国としても真剣に注意を払う旨応じた。
町村大臣より、ライス長官が17日の国連総会一般討論演説で安保理改革への支持と我が国の安保理常任理事国入りへの支持を力強く表明したことに謝意を表明し、両外相は、安保理改革を含む国連改革の実現に向けて日米で協力していくことにつき意見の一致を見た。
(14)日・EUトロイカ外相協議(17日午後)
本年の「日・EU市民交流年」登録行事が1500件に上ることに触れつつ、「日・EU行動計画」に基づくさらなる協力関係強化が重要であるとの認識が一致した。また、包括テロ防止条約締結に向けた日・EU協力の重要性、及びアフガニスタン支援の継続につき意見が一致したほか、イラン、中国、西バルカン、国連改革につき意見交換を行った。特に、対中武器禁輸解除について、日本は禁輸解除には強く反対する旨を改めて伝えた。
(15)モッタキ・イラン外相との会談(18日午前)
二国間関係について、町村大臣より、日本との関係拡大に尽力してきたモッタキ氏の外相就任を歓迎するとともに、最近の二国間関係についてレビューを行った。モッタキ外相より、貿易を中心とする関係から、投資、文化などより幅広い関係に拡大したいとの期待が表明された。イランの核問題について、町村大臣より、不拡散体制の強化は日本外交の根本的な原則に関わる問題であり、この観点から、イランがパリ合意及び累次のIAEA理事会の決議の要求に反してウラン転換活動を継続していることは極めて遺憾として、ウランの転換活動を再停止し、EU3との交渉再開を強く求めた。これに対して、モッタキ外相より、イランとしては柔軟的外交で問題を解決したい、問題を安保理に付託するという議論があるが、これは効果を生まないと述べた。
(1)ムシャラフ・パキスタン大統領(経社理議長国)主催朝食会(15日午前)
成果文書を受けて、経社理の今後の役割について議論が行われた。多くの国や国際機関より、経社理はミレニアム開発目標達成に向けた各国の活動をフォローするハイレベルな機関となるべきであるとの発言がみられた。町村大臣より、経社理は自然災害、感染症、平和構築等の分野に取り組むべきとの発言を行った。
(2)G4外相会合(15日午後)
各国の現状認識及び今後のG4としての対応を中心に議論が行われた。アフリカについては、同地域全体の支持をG4にもってくることは難しいであろうとの認識が共有されたほか、町村大臣より、これまでのG4の働きかけの経緯をもう一度振り返り、良かったところは良かったところとして評価し、反省すべきは反省した上で、G4でじっくりと考え方を練り直すべきではないかとの発言を行った。G4の結束を維持しつつ、安保理改革にG4として積極的な行動をとっていくということに関しては、大まかな合意があった。具体的な対応については、事態の推移を見極めつつ、じっくり検討していくこととなった。