高村外務大臣

TICAD IV閣僚級準備会議共同記者会見

平成20年3月21日

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 3月21日、TICAD IV閣僚級準備会合の終了後に共同記者会見が実施されたところ、その概要は以下のとおり。

1.高村大臣冒頭発言

(1)この度、この美しいリーブルビルを訪問し、30カ国に及ぶアフリカ各国閣僚とともに、5月に開催予定のTICADの準備会合で実り多い議論に参加できたことを大変喜ばしく思う。アフリカ諸国のTICAD IVに対する期待の大きさを改めて実感することができた。この期待に応えるために、私は往復で50時間も費やすことになったが、その甲斐があった。

(2)当地ガボンのボンゴ大統領並びに私の隣におられるゴンジュ大臣を始め、本会議を成功させるためにご尽力頂いたガボン政府と、私たちを暖かく迎え入れてくれたガボン国民の皆様に、心から感謝の意を申し上げる。また、世界各国から今回の会議のためにお集まり頂き、議論に貢献して下さった多数の閣僚と関係者の皆様に共催者とともに御礼を申し上げる。

(3)私から、会議の成果について簡単にご説明する。二日間の会議で、TICADの協力分野について活発な意見交換を行うとともに、5月のTICAD IVで首脳が発出する予定の「横浜宣言」を準備する議論を行った。

(4)「横浜宣言」は、アフリカ諸国の声を集約すると同時に、開発パートナーとしての立場から日本が協力していく決意が述べられた。

(5)なお、今回のTICAD IVでは、特に「アクション」を重視して、行動計画を策定し、また進捗状況をモニターするための「フォローアップ・メカニズム」を設置することになった。

(6)TICADでは、アフリカ諸国のみならず、アジア諸国や民間企業、市民社会を含む幅広い層の参加を呼びかけていることが特徴である。アジアでの開発経験を活かし、民間企業を含む幅広い分野におけるパートナーシップの拡大について国際社会をリードしていく考えである。

(7)日本は5月のTICAD IVに引き続き、7月には北海道洞爺湖サミットを開催する。私は、この地で皆様と議論した結果を、責任を持って、G8そして国際社会での議論に反映させるとともに、アフリカの開発のために国際社会が協力して取り組む環境整備に力を尽くす決意を新たにした。

2.引き続いて、共催者を代表して、UNOSSAディアラ顧問より概要以下のとおりの発言があった。

(1)共催者として、国連事務総長の代理として出席したが、UNDPや世銀が今回の閣僚級準備会議出席のためにリーブルビルに来ることができたことをうれしく思う。ガボン政府の今回の会議準備に対し感謝する。また、ガボン国民に対し改めて感謝を表したい。非常に温かい歓迎を受けた。素晴らしい準備のおかげでもあって、共催者として今回の会合が非常に成功裏に終わったことをうれしく思う。

(2)アフリカ諸国から多数の出席を得たこと、多くの国から外務大臣を始めとする閣僚レベルの出席があった。また会議場の発言の質も高く、各国の状況及び特徴が浮き彫りとなった。ドング首相も開会式に出席して、ボンゴ首相のメッセージを代読した。また、ゴンジュ外務大臣の見事なリードの下、議論も活発に行われた。

(3)今回の会合を通し、全ての出席者が日本の推進するTICADプロセスに信頼を寄せたことと思う。アフリカの発展は後戻りできないペースで進んでおり、近年は、政治・経済の両面で、良い統治が進展してきている。今時会議では、平和の定着、MDGs、成長の加速化、人間の安全保障、環境及び気候変動などに関し掘り下げた議論が行われた。5月28日~30日、横浜でTICADが開催されるが、今回の議論を通し、非常に良い土台が築かれたので、本番も成功するのは間違いない。それぞれの経験を共有するためにアジアの一部の国が出席し、また市民社会が参加したことも付言したい。バン国連事務総長に代わって、ガボン政府及び国民に改めて感謝申し上げる。

3.次に、ゴンジュ・ガボン外相より、以下のとおり発言があった。

 この機会に、ボンゴ大統領を始めとするガボン政府及び国民が、TICAD IV閣僚級準備会議の開催地としてガボンを選んでくれたことを大変うれしく思っている点をお伝えしたい。ガボンは開催地として適切であったと考えており、また会議では事実に基づいた有意義な議論が行われ、「横浜宣言」の案がコンセンサスで採択された。

 アフリカ開発に対する日本の尽力に感謝するとともに、日本にはアジア・アフリカを結ぶ架け橋となることを期待したい。また、共催者の皆様にも感謝申し上げる。今時会合では、アフリカの有する可能性について確認されたが、今時会合の成果は横浜につなげ、更に大きな成果を挙げたいと考えている。

4.次に概要以下のとおりの質疑応答が行われた。

(1)(日本の外相として初めてTICAD閣僚級準備会議に出席したが、今回の会議の成果をどのように受け止めているか、またどのような点でアフリカ各国の日本に対する期待を感じたか、との質問に対し)私は、TICAD IIの時の外務大臣でもあり、TICADをよく知っている。TICAD IIの時から10年が経ったが、今時会議ではアフリカ諸国の閣僚自ら極めて積極的にイニシアチブをとろうとして発言する姿を見て、「オーナーシップ」の意識が定着し、発揮されていると感じた。アフリカ諸国から多くの希望が寄せられたが、TICAD IVの中で、この声を国際社会全体に伝え、日本は国際社会とのパートナーシップの下、アフリカ開発に尽力する決意を新たにした。

(2)(アフリカ開発は日本外交の柱の一つであるが、欧米諸国や経済新興国のインド、中国がアフリカに関与を深めているが、日本政府としては今後アフリカにおけるプレゼンスを高めるために、どのように取り組んでいくつもりか。また、MDGsについて、一部のNGOより、ここまでの議論では不十分であるとの指摘があるが如何、との質問に対し)国際社会の目がアフリカに注がれていなかった1993年に、日本政府はアジアの成功体験をアフリカに伝えるために、TICADを開催した。中国やインドが台頭し、アフリカにおける資源の取り合いが行われているとの指摘もある。日本は資源獲得を意図してこのTICADプロセスを始めたわけではない。日本は、アフリカ諸国と幅広い経済関係を結び、アフリカの開発に寄与することを目指している。このためには、各国政府のみならず、企業やNGOを始めとする民間セクターの関与が必要不可欠である。

 MDGsに関し、日本が熱心に取り組んでいないという指摘があるとの指摘には疑問を感じる。日本は、保健、水、教育などの分野でMDGsの先頭を切っており、心配には及ばない。MDGs達成のためにこれまでも、そしてこれからも頑張っていく所存である。

(3)(ボンゴ大統領との会談では、日本はガボンに対し環境や漁業などの面において何らか新たな提案を行ったか、との質問に対し)リーブルビルにおける零細漁民センター建設に対する支援要請をガボン政府から受けていることは承知している。ボンゴ大統領には、本件に関する調査ミッションを派遣することを決定した旨伝えた。また、日本はクールアースパートナーシップのメカニズムを立ち上げた。環境と成長を両立させたいという志のある途上国に5年間で約100億ドルの資金で協力していく予定である点を説明申し上げた。ガボンは志のある国だから、本件に関する政策協議を始める旨こちらから提案し、ゴンジョ外務大臣には快諾頂いた。これから同協議が開始されることになる。

(4)(日本はTICADプロセスからどのような利益をうけるのか、資源を得たいと考えているのか、また国際社会でのアフリカ諸国の支援を求めたいのか、との質問に対し)1993年にTICADプロセスを開始した時には、資源や国際場裏におけるアフリカ諸国の支援を得たいという考えはなかった。日本には、「情けは人のためならず」との諺があり、困っている人を助ければ、中長期的には巡り巡って良いことが返ってくるとの問題意識である。また、責任ある国として、アフリカにおける紛争予防・解決、貧困削減、開発のお手伝いをできないかということで1993年にTICADプロセスを開始した。最近、資源の問題に注目が集まっているが、資源を得ることに対し否定的ではないが、それを目的としているわけではない。また、国連加盟国の約3分の1にあたるアフリカ52カ国から国際場裏において支持があれば喜ばしいと感じることを否定するわけではないが、同様にこれを目的としているわけではない。要は、日本政府は目先の利益を求めているわけではなく、人道的見地及び責任ある国家としてアフリカ開発に取り組んでいるのである。

(5)(日本は近い将来、アフリカ版マーシャルプランを提案するつもりか、との質問に対し)マーシャルプランを提案するか否かに関しては、具体的に申し上げるつもりはないが、国連及び世銀の協力を仰ぎつつ、TICADプロセスを進めており、アフリカの人々がオーナーシップを発揮し、国際社会とのパートナーシップの下、知恵と資金を結集し、アフリカ開発のために具体的な貢献を行っていく所存である。

(6)(キャパシティービルディングに関し、如何お考えか、との質問に対し)日本の援助哲学は、魚をやるよりも、魚をとる技術を教えた方がよい、との言葉によく表れており、その国自身が自分自身で成長しようと思わない限りはいくら支援しても、100年後も支援し続けることになる。一方、自助努力をお手伝いする支援を行えば、15~20年後には、支援を受けている国は支援を行う国となる可能性がある。

(7)(これまでの日本のアフリカに対する協力をどう評価するか、との質問に対し)(ディアラ顧問)アフリカ大陸に対する投資及び貿易関係の拡大により、アフリカ諸国は徐々に経済的に成長してきた。日本はアフリカへのODA供与を拡大してきたとともに、低関税の適用など貿易関係の拡大にもつとめてきた。アフリカに対する技術移転は、国連にとって重要なテーマであるが、この点まだ増進させる余地が残っている。マレーシアやインドなどアジアの国と協力しつつ、三角協力を推進し、アジアの技術をアフリカに提供していくことも可能である。また、大学関係者間の交流や、アフリカの学生の受け入れ・交流拡大など様々なサポートが可能。この面でも日本の貢献は大きい。今回のTICAD IVを通して、新たな方向性が打ち出されることになる。

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