平成20年5月4日
5月2日から4日までの間、高村大臣はパキスタンを訪問したところ、概要と評価は次のとおり。
(1)訪問の概観
今回の訪問は、2月のパキスタン選挙後可能な限り早期に訪問し、日本の支援姿勢等を直接パキスタン政府及び国民に伝えることが主眼であった。
3日、高村大臣は、ムシャラフ大統領、ギラーニ首相、クレーシ外相と会談した。一連の会談において、高村大臣より、パキスタンの安定と発展がアジア地域ひいては国際社会の平和と安定にとって極めて重要であると位置づけていること、新政権の下で更なる発展に向けて進みだしたパキスタンに対し、政治経済両面における取組を支援していくことを表明した。また、G8議長国として、また、平和協力国家としても、日本は、パキスタンを可能な限り支援すべく取り組むとの立場を改めて表明した。
更に、同日、日本の具体的な支援策として、クレーシ外相との間で総額約480億円の円借款供与に係る交換公文に署名した。
(2)会談のポイント
(イ)我が方より、パキスタンにおけるテロの撲滅、民主主義の定着、安定的発展は一層重要性を増しており、パキスタンがこれまで様々な課題に取り組んできたことへの敬意を表するとともに、今後ともパキスタン国内が一致団結してこれらの諸課題に取り組むことへの期待、また日本としても可能な限り支援していくとの方針を表明した。
(ロ)テロとの闘いについては、高村大臣よりパキスタンがこれまで多大な犠牲を払いながら取り組んでいることに敬意を表しつつ、実効的な対策の継続を要請した。これに対し、パキスタン側より、武器を放棄しないテロ勢力と妥協することはないとの強い決意が示されるとともに、我が国によるインド洋での補給支援活動への謝意が表明され、部族地域における教育・医療等社会インフラ支援の重要性が強調された。高村大臣よりは、テロの防止と根絶に向けてのパキスタンの取組を引き続き支援していく旨表明した。また、高村大臣よりは、議長国としてG8がパキスタンの取組に対して支援を強化する方針を打ち出せるよう努力したい旨述べた。
(ハ)高村大臣よりギラーニ首相及びクレーシ外相に対して、我が国が国際的な軍縮・不拡散体制の普遍化を重視しており、パキスタンの前向きな取組を期待する旨述べた。
(3)その他
また、3日、高村大臣は、ザルダリ・パキスタン人民党(PPP)共同議長、マリク内務担当アドバイザー(内務大臣に相当)、ムフタール国防大臣と会談した他、ニサール・アリ上席大臣他パキスタン・ムスリム連盟ナワズ・シャリフ派(PML-N)幹部とも会談し、二国間関係や日本の対パキスタン支援等に関し意見交換を行った。ザルダリ共同議長に対しては、ブットー元首相暗殺について深く哀悼の意を表明するとともに、テロとの闘い等について意見交換を行った。パキスタン側よりは、これまでのわが国経済協力や選挙への支援等に対する謝意が表明された他、経済面を含む二国間関係の更なる強化への期待が表明された。
(1)高村大臣の今次訪問において、2月の民主的選挙を経て新たに発足(3月末)した新政権の要人および連立与党幹部と意見交換し、早期にわが国よりの祝意と支援方針を明確に伝え、また、民主主義の定着、持続的経済成長、テロとの闘い等の重要な課題への取り組みについて期待を表明することができた。また、480億の円借款供与に係る交換公文に高村大臣とクレーシ外相とで署名したことにより、パキスタン国民に対し、日本の支援姿勢を明確に示すことができた。
(2)さらにパキスタン側より、テロとの闘いにおいて、引き続き断固とした姿勢で臨むとのコミットメントを再確認でき、また、部族地域における経済社会基盤を整備することもテロとの闘いにおいて重要であるとの認識で一致した。このようなパキスタン政府との直接の意見交換を踏まえて、G8議長国である日本として、G8が適切な支援姿勢を示していけるようG8を主導していくこととなる。
(3)一連の会談において、パキスタン側より、上記円借款、部族地域(FATA)支援、インド洋におけるパキスタン海軍への補給支援活動等の種々の支援に対し、深い謝意とその継続への期待が表明された。
(4)日・パキスタン間の貿易・投資をさらに拡大することが望ましいこと、また、それが間接的にテロとの闘いにも資することについて認識が一致した。他方、投資の拡大のためには治安を含む環境整備が課題であることが確認された。
(5)今回のパキスタン訪問では、ムシャラフ大統領、ギラーニ首相、クレーシ外相の他、連立与党のザルダリPPP党共同議長やPML-N党指導者(シャリフ元首相は不在)と会談し、また、複数の閣僚(ニサール・アリ上席大臣、ラフマン・マリク内務担当アドバイザー(内務大臣に相当)、チョードーリー・アフマド・ムフタール国防大臣)も同席し、パキスタン側の主要な指導者とほぼ一通り意見交換することができた。