地球環境

(万人のための持続可能なエネルギー)

平成29年5月30日

1 経緯

  • (1)SE4All(Sustainable Energy for All:万人のための持続可能なエネルギー)は,2011年9月,潘基文国連事務総長(当時)が,「エネルギーは全ての国の経済開発の根幹にある」として提起したイニシアティブである。
     また,潘事務総長は,「エネルギーは,経済を成長させ、社会的公正を高め,世界の繁栄に結びつける『金の糸』であり,SE4Allの目標に向けて,政府,経済界,市民団体などの、すべての関係者の間での連携が不可欠である」と述べており,2015年に採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(SDGs)においても7番目の目標として「持続可能なエネルギー」が掲げられることとなった。
  • (2)SE4Allは,2030年までに,(ア)近代的エネルギーへの普遍的アクセス達成,(イ)世界全体でのエネルギー効率の改善ペースの倍増,(ウ)世界全体での再生可能エネルギーのシェア倍増の3つの目標を掲げている。

2 SE4ALLの3目標

(1)近代的エネルギーへの普遍的アクセス達成

 2014年時点では,約10億6千万人がエネルギーに全くアクセスのない状況にある。また,世界人口の約40%に相当する30億4千万人が,クリーンエネルギーのアクセスがなく,木材,石炭,木炭,動物の糞などから作られたエネルギーで家事を営み,その際に発生する煙のために肺の疾患等の健康被害を受けている。このようなエネルギー状況に鑑み,SE4Allは,2030年までに全ての人のエネルギーアクセスの達成を目標とする。

(2)世界全体でのエネルギー効率の改善ペースの倍増

 エネルギー効率改善は,生産性の向上や経済成長に繋がるだけでなく,化石燃料の消費削減にもなり,温室効果ガスの削減につながる。SE4Allはエネルギー効率改善ペースを,2030年までに倍増することを目標とする。

(3)世界全体での再生可能エネルギーのシェア倍増

 水力,風力,太陽光,バイオマス,地熱等の再生可能エネルギーは,温室効果ガス削減,環境汚染削減,化石燃料を有しない国のエネルギー安全保障,経済成長に貢献する。SE4Allは,エネルギー全体に占める再生可能エネルギーのシェアを2030年までに倍増することを目標とする。

3 組織

(1)諮問理事会(アドバイザリー・ボード)

 2011年,「SE4All国連事務総長ハイレベル・グループ」が発足し,カルロス・ゴーン日産社長(当時)ほかが参加。2012年9月,ハイレベル・グループが発展的に解消され,SE4Allの戦略策定機関として「諮問理事会(Advisory Board)」が設置された。潘基文国連事務総長とジム・ヨン・キム世銀総裁が共同議長に就任するとともに、我が国からは、堀江正彦地元球環境問題担当大使がメンバーに就任した。
 第2回諮問理事会では,SE4Allの3つの目標の取り組みとして,「エネルギーアクセス委員会」,「エネルギー効率委員会」,「再生可能エネルギー委員会」,「財政委員会」の4つの委員会が設置された。堀江理事は,「エネルギー効率委員会」のメンバーに就任した。第4回諮問理事会では,今後のSE4Allの組織の方向性について議論が行われた。第5回諮問理事会では,今後の方針を示す「Strategic Framework for Results 2016-2021」が採択された。

【参考】諮問理事会の開催状況
第1回:2013年4月19日(於:ワシントン)
第2回:2013年11月26,27日(於:ニューヨーク)
第3回:2014年6月5日(於:ニューヨーク)
第4回:2015年5月19日(於:ニューヨーク)
第5回:2016年6月15,16日(於:ブリュッセル)

(2)執行委員会

 諮問理事会の下部機関として諮問理事会の策定する戦略を実施する役割を担う。

(3)SE4Allフォーラム

 SE4Allに関して,政府(閣僚級),国連機関,企業,市民社会等すべてのステークホルダーが議論する会議。これまで開催されたフォーラムでは3目標の進捗状況を「Tracking Framework 2015(第2回)」「Tracking Framework 2017(第3回)」として発表。

【参考】SE4Allフォーラムの開催状況
第1回:2014年6月4~6日(於:ニューヨーク)(参加人数:約1,600名)
第2回:2015年5月18~21日(於:ニューヨーク)(参加人数:約2,500名)
第3回:2017年4月3~5日(於:ニューヨーク)(参加人数:約1,000名)

(4)事務局長(SE4All担当国連事務総長特別代表(SRSG))

カンデ・ユムケラー 前国際連合工業開発機関(UNIDO)事務局長(2015年12月まで)

レイチェル・カイト 前世界銀行副総裁(2016年1月)

(5)事務局

ウィーン(オーストリア)

4 我が国の貢献

(1)省エネルギー促進の国際的なハブの設置(Energy Efficiency Facilitating Hub

 我が国は,二度の石油危機以降,官民の努力によりエネルギー効率の改善に取り組み、世界で最高水準のエネルギー高効率国となっている。民間分野では、エネルギー管理の徹底や抜本的な省エネルギーを目指した技術開発に取り組む一方、政府としては、エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)に基づく「トップランナー制度」の導入等により、省エネ技術の開発と導入の加速化を促進してきた。また、最近では街単位で省エネを実現するスマートコミュニティ実証事業などの先進的な取組の他、アジアを中心とした途上国に対し、我が国の経験に基づく省エネルギー政策・制度構築等に関する人材育成などを実施している。
 こうした我が国の知見をSE4Allの活動にも活かすべく、安倍総理は、2014年9月の「国連気候サミット」における演説で,「省エネルギーの国際的なハブを東京に設置する」旨宣言した。具体的には,我が国の一般財団法人「省エネルギーセンター」(ECCJ)をSE4Allにおける「エネルギー効率を促進する国際的なハブ(Energy Efficiency Facilitating Hub)」とするべく,2014年9月、祖川ECCJ常務理事がユムケラー・SE4All担当国連事務総長特別代表(当時)に対して,ECCJが国際的なハブの役割を担う旨の意図表明の書簡を手交した。

(2)エネルギー効率改善都市としての富山市の選定

 2014年6月,第3回諮問理事会において,SE4Allのエネルギー効率改善目標に向けて努力する都市を選定することとなった。これを受けて我が国からは、富山市が「エネルギー効率改善都市」の一つとして選定され,同年9月の国連気候サミットの際に森雅志富山市長が,富山市のエネルギー効率に向けた取組を発表した。

(3)我が国におけるSE4Allフォーラム等の開催

 富山市がエネルギー効率改善都市に選定され,省エネルギーセンターがエネルギー効率促進のハブになったことを契機として,2015年10月に富山市で「SE4Allフォーラム」,東京で「SE4All・グローバル都市間連携フォーラム」を開催した。SE4Allからは,グラティSE4All最高執行責任者(COO)が出席した。
 富山市のフォーラムでは,米国,マレーシア,インドネシアなどのエネルギー政策に取り組んでいる都市の代表,我が国からは横浜市などが出席し,ベストプラクティスの共有,ネットワーク作りが行われた。
 会議の成果として,SE4Allの目標に向けたグローバル・パートナーシップの重要性を謳う「富山宣言:Toyama Declaration」が発表された。(約400名出席)。
 省エネルギーセンターが主催した「SE4All・グローバル都市間連携フォーラム」では,エネルギー効率について,分野別に(建築物,都市交通,地域エネルギー,都市圏のエネルギー効率の改善),国内の都市(東京都,柏市,横浜市,富山市,宇都宮市),国外の都市(マニラ(フィリピン),ジャカルタ(インドネシア),メキシコシティー(メキシコ),ポートランド(米国),クリチバ(ブラジル),バンコク(タイ),コペンハーゲン(デンマーク),ヨハネスブルク(南アフリカ),イスカンダー(マレーシア),アスタナ(カザフスタン),ナイロビ(ケニア),ハノイ(ベトナム)等),民間企業,有識者の出席を得て,エネルギー効率に関する情報共有,協力の可能性などについて議論した(約210名出席)。

【参考】国連気候サミットの際のSE4All会合(SE4All Global Energy Efficiency Accelerator Platform(グローバル・エネルギー効率促進プラットフォーム))
 2014年9月23日に「国連気候サミット」がニューヨークの国連本部で開催された際、SE4All会合(SE4All Global Energy Efficiency Accelerator Platform)が開催された。同会合において「Global Energy Efficiency Accelerator Platform(GEEAP)」が設置され,「自動車」,「照明」,「器具」,「建物」,「地域エネルギー」「産業」の6つの分野を選定し,各国,地方自治体,民間セクター,企業,市民社会,国際機関等と協力してエネルギー効率改善に取り組むことになった。

5 SE4ALLからSEforALLへの新しい展開

(1)レイチェル・カイト・前世界銀行副総裁の任命

 2016年1月にレイチェル・カイト前世界銀行副総裁が,新たなCEOに任命された。

(2)新たな組織形態とウィーン事務局の設置

 SE4Allは,これまでの国連内の組織から,行政的,財政的,組織的に独立し,オーストリアの法律に基づく「国際的な非営利団体」となり,ウィーン事務局が設置された。それに伴い,ロゴが「SE4All」から「SEforALL」に変更された。

(3)フォーラムの開催:2017年4月3~5日(於:ニューヨーク)

 エネルギーに関する「持続可能な目標(SDGs)7」を実現するために「Go Further, Faster-Together」をテーマに約1,000人の参加者を得て60以上のセッションが開催され,議論が行われた。また,SDG7に関する2012年から2014年の進捗状況をまとめた「Global Tacking Framework 2017」が発表された。

(4)フォローアップ事業の開催

 2017年2月14日~16日にかけて,省エネルギーセンターが,「SE4All・グローバル都市間連携フォーラム」のフォローアップ事業として,ASEANにおける建築物の省エネ基準導入の促進を目的としたワークショップを東京で開催した(ASEAN諸国から11名が研修に参加:カンボジア,インドネシア,ラオス,マレーシア,ミャンマー,フィリピン,シンガポール,タイ)

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