地球環境

平成29年5月9日

 4月24日から5月5日にかけて,ジュネーブ(スイス)において,化学物質・廃棄物関連三条約(バーゼル条約,ロッテルダム条約及びストックホルム条約)の合同締約国会議が開催されたところ,概要は以下のとおりです。

1 全体概要

 今次会合では,第13回バーゼル条約締約国会議,第8回ロッテルダム条約締約国会議及び第8回ストックホルム条約締約国会議が開催され,バーゼル条約実施に係るガイドラインの策定,ロッテルダム及びストックホルム条約への規制物質の追加,各条約共通の論点(三条約間の連携,技術支援や他の国際的な枠組みとの協調)等につき議論を行いました。
 今次会合には,185か国の政府関係者,関係国際機関,市民団体関係者等,約1,500人が参加し,我が国からは外務省,経済産業省,環境省の担当者等からなる政府代表団が出席しました。
 また,5月4日から5日にかけてハイレベル・セグメントが開催され,約100か国の大臣や閣僚級の要人,大使等が化学物質や廃棄物管理について意見交換を行いました。我が国からは梶原成元・環境省地球環境審議官が出席しました。

2 主な会議の結果

(1)第13回バーゼル条約締約国会議

ア ガイドラインの検討

  • 前回締約国会議(2015年)に採択された電気電子機器廃棄物(E-waste)及び使用済み電気電子機器の越境移動(特に廃棄物と非廃棄物の識別)に関する技術ガイドラインについてさらなる検討を行うため,専門家作業グループを設置することが決定されました。また,我が国は,専門家作業グループの開催に対し技術的及び資金的な貢献を行う旨を表明しました。
  • PCB廃棄物ガイドラインの改訂版が採択されました。また,前回の締約国会議(2015年)で新たに規制対象となった残留性有機汚染物質(POPs)について,POPs廃棄物の環境上適正な管理に関する各種技術ガイドラインが採択されました。

イ バーゼル条約附属書の見直し

 バーゼル条約の有害廃棄物か否かの判断に関する附属書I・III・IV・IXの見直しに関する議論がなされ,今後新たに専門家作業グループを設置し,これらの附属書の見直しの作業を開始することが決定されました。

(2)第8回ロッテルダム条約締約国会議

ア 新規対象物質の追加

  • トリクロルホン(駆除剤),短鎖塩素化パラフィン(SCCP)(工業用途),トリブチルスズ化合物(工業用途),カルボフラン(駆除剤)を附属書IIIに追加する決定が採択されました。
  • フェンチオン(著しく有害な駆除用製剤),クリソタイルアスベスト(工業用途),パラコートジクロライド含有駆除剤(著しく有害な駆除用製剤),カルボスルファン(駆除剤)を附属書IIIに追加することについては締約国間で合意に至らず,次回締約国会議(2019年)で引き続き議論することとなりました。

イ 遵守

 前回締約国会議(2015年)からの継続議題である遵守に関する手続及びメカニズムの設置については,今次会議でも引き続き交渉されたものの合意に至らず,次回締約国会議(2019年)において引き続き検討することとなりました。

(3)第8回ストックホルム条約締約国会議

ア 新規対象物質の追加

  • 残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)における検討結果を踏まえ,2物質群(デカブロモジフェニルエーテル(デカBDE),短鎖塩素化パラフィン(SCCP))については同条約附属書A(廃絶)に,1物質群(ヘキサクロロブタジエン(HCBD))については同条約附属書C(非意図的放出の削減)に追加する決定が採択されました。附属書Aに追加された物質群については製造・使用等の廃絶に向けた取組を,附属書Cに追加された物質群については非意図的な放出の削減に向けた取組を,条約の下で,国際的に協調して行うことになります。
  • また,過去に附属書に追加された物質群(ポリブロモジフェニルエーテル類(BDE),ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS))の適用除外に関する評価及び今後の見直しに関する作業計画ついての議論が行われました。

イ 遵守

 前回締約国会議(2015年)からの継続議題である遵守に関する手続及びメカニズムの設置については,今次会議でも引き続き交渉されたものの合意に至らず,次回締約国会議において引き続き検討することとなりました。

ウ 資金供与

 ストックホルム条約に係る途上国への資金供与について,地球環境ファシリティ(GEF)に対する追加ガイダンスに関する決定が採択されました。

(4)三条約共通の検討事項

ア 三条約間の連携(シナジー)の評価

 前回締約国会議(2015年)の決定に基づき実施された,三条約の事務局の組織・シナジーを強化する措置,共同行動等についての評価及び右を踏まえた提言が報告され,その着実な実施を求めることが決定されました。
 また,国連環境計画(UNEP)等と連携した化学物質や廃棄物の管理の実施への協力,水銀に関する水俣条約暫定事務局との連携強化等について条約事務局が実施した活動が報告され,引き続き関係機関との連携強化に努めることが決定されました。

イ 技術支援等

 条約事務局が実施する技術支援プログラムの実施状況が報告され,次回締約国会議にその進展について報告提出を求めることとなりました。また,バーゼル条約及びストックホルム条約に設置された地域センターの2019年までの事業計画が承認されるとともに,バーゼル条約地域センターの新設についても検討されました。

ウ 共同事務局の事業計画及び予算

 条約事務局の2018-2019年事業計画及び予算が承認されました。

(5)次回会合の日程

 次回の三条約締約国会議は,2019年4月29日から5月10日までジュネーブ(スイス)において開催される予定です。

3 評価

 今次会合では,三条約それぞれの活動状況と課題が確認されるとともに,三条約間のシナジーが進められることを通じ,条約事務局の合理的な運営,技術支援活動の共同実施等が進展していることが確認されました。今後は,これまでの取組の成果と課題を踏まえ,各条約の実施の更なる強化に加え,2017年中に発効が見込まれる水銀に関する水俣条約との連携のあり方等についても検討されることが期待されます。


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