北極・南極

平成29年6月13日

 2017年5月23日から6月1日まで第40回南極条約協議国会議が北京(中国)において開催されたところ,概要は以下の通り。

1 南極条約体制の運用等

  • (1)2016年6月に開催されたATCM39以降,南極条約を新たに締結した国はなく,締約国数は53のままであった。一方,環境保護に関する南極条約議定書(以下「環境保護議定書」)については,新たにマレーシアとスイスが締結し,締約国数は39となった。
  • (2)本年で任期を終了するラインケ事務局長(ドイツ出身)の後任として,アルベルト・ルベラス氏(ウルグアイ出身)が第3代の事務局長として選出された。
  • (3)協議国資格に関するガイドラインが作成され,新規に協議国資格を申請する際の手続が明確化された。

2 南極における調査活動や研究の成果等の報告等

 各国より南極における調査や研究の成果等の報告等が行われた。我が国からも昨年から今年にかけての南極における調査や研究について,概要以下の報告を行った。

  • (1)昭和基地のPANSY(注:大型大気レーダーシステム。南極で稼働中のものでは最大規模)が,昨年に引き続き観測を継続中。同システムを含め,地球上の各地域に設置された大気レーダーで同時に観測するキャンペーンを行い,得られるデータを解析することで,各国における天気予報や地球全体の気候変動を予測するモデルの精度向上が期待できる。
  • (2)UAS(Unmanned Aircraft System=凧を組み合わせた小型無人機)による大気中の微粒子観測を実施。同観測で得られたデータは,南極における降水の原因とみられる海塩粒子(注:海水から生成される塩の塊)の南極大陸内部への移動メカニズムの解明につながることが期待される。
  • (3)近年,南極研究に関心を示しているインドネシア,タイ,モンゴルの地学研究者を我が国南極観測隊に受け入れ,3か国にとって初めてとなる南極での地質調査の機会を提供した。こうした研究者の育成支援は,アジア地域の南極観測・研究に関する国際的なネットワークの広がりにも寄与するものと評価。

3 観光,非政府機関の活動及び安全等

  • (1)最近の南極観光の増加もあり,今次会議でも引き続き南極における観光,非政府機関の活動等について活発な議論が行われた。
  • (2)南極における観光及び非政府活動等に関する緊急事態対処等に関するガイドラインの改訂が行われた。同ガイドラインでは,南極への観光やその他非政府活動の際には,適切な緊急事態対処計画や,医療,安全対策,保険,捜索及び緊急避難等について十分な措置を講じることが推奨されている。

4 環境保護に関する議題(第20回環境保護委員会)(5月22日~26日)

 7件の南極特別保護地区(ASPA)の管理計画及び1件の南極特別管理地区(ASMA)の改訂案が合意された。

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