地球環境
バーゼル・ロッテルダム・ストックホルム三条約 合同締約国会議
2019年4月29日から5月10日にかけて,ジュネーブ(スイス)において,化学物質・廃棄物関連三条約(バーゼル条約,ロッテルダム条約及びストックホルム条約)の合同締約国会議が開催されたところ,概要は以下のとおりです。
1 全体概要
今次会合では,第14回バーゼル条約締約国会議,第9回ロッテルダム条約締約国会議及び第9回ストックホルム条約締約国会議が開催され,バーゼル条約の規制対象物資への「汚れたプラスチックごみ」の追加,ロッテルダム及びストックホルム条約への規制物質の追加,各条約共通の事項(三条約間の連携,技術支援や他の国際的な枠組みとの協調,条約事務局の事業計画・予算)等につき議論を行いました。
今次会合には,政府関係者,関係国際機関,市民団体関係者等,約1,700人が参加し,我が国からは外務省,経済産業省,環境省の担当者等からなる政府代表団が出席しました。
2 主な会議の結果
(1)第14回バーゼル条約締約国会議
ア 汚れたプラスチックごみの条約規制対象への追加
- 我が国とノルウェーの共同提案である汚れたプラスチックごみのバーゼル条約の規制対象への追加が採択され,廃プラスチックに関する国際ガイドラインに関して検討を行う専門家グループが設置されました。
- 各国におけるプラスチックに係る3Rの取組を共有する等の枠組みであるパートナーシップが我が国主導の下で設立されました。
イ 技術ガイドラインの改定
- E-waste(電子・電気機器廃棄物)及び使用済み電気・電子機器の越境移動に関する技術ガイドラインが暫定採択されました。
- POPs(残留性有機汚染物質)廃棄物に係る各種ガイドラインが策定,更新されました。
- 水銀廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドラインについて,会期間小作業部会で検討することが決まりました。
- 有害廃棄物の処理に関する技術ガイドライン(D5/D10ガイドライン)について、会期間小作業部会で検討することが決まりました。
(2)第9回ロッテルダム条約締約国会議
ア 新規対象物質の追加
- ヘキサクロモシクロドデカン,ホレートを附属書IIIに追加する決定が採択されました。
- アセトクロル,カルボスルファン,クリソタイルアスベスト,フェンチオン,パラコートジクロライドを附属書IIIに追加することについては締約国間で合意に至らず,次回締約国会議(2021年)で引き続き議論することとなりました。
イ 遵守
第2回締約国会議(2005年)以降,第8回締約国会議(2017年)まで継続して検討されてきた遵守に関する手続及びメカニズムについては,投票によりその設置が決定されました。
(3)第9回ストックホルム条約締約国会議
ア 新規対象物質の追加
- 残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)における検討結果を踏まえ,ジコホル,ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及び関連物質を同条約附属書A(廃絶)に追加する決定が採択されました。附属書Aに追加された物質群については製造・使用等の廃絶に向けた取組を,条約の下で,国際的に協調して行うことになります。
- また,過去に附属書に追加されたペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩及びペルフオロオクタンスルホニルフルオリド(PFOSF)の適用除外に関する評価及び今後の見直しに関する作業計画についての議論が行われました。
イ 遵守
前回締約国会議(2017年)からの継続議題である遵守に関する手続及びメカニズムの設置については,今次会議でも引き続き交渉されたものの合意に至らず,次回締約国会議において引き続き検討することとなりました。
(4)三条約共通の検討事項
ア 技術支援
- 条約事務局が実施する2020-2023年の技術支援計画が採択されました。また,条約事務局に対し,2020-2023年の技術支援計画の進捗状況について,次回締約国会議に報告することを求めました。
- バーゼル条約及びストックホルム条約地域センターの役割の強化や活動の透明性の向上について議論されました。
イ 国際協調
- 国連環境計画(UNEP)と連携した化学物質及び廃棄物の管理に係る国連決議の実施への協力,国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)事務局や水俣条約事務局との連携強化のために事務局が実施した活動が報告されました。
- 条約事務局として化学物質の適正管理のための国際機関プログラム(IOMC)に参加することや,条約事務局とUNEPの関係を明確にする覚書の内容が決定されました。
ウ 条約事務局の事業計画及び予算
条約事務局の2020-2021年の事業計画及び予算が承認されました。
(5)次回会合の日程
次回の三条約締約国会議は,2021年5月17日から5月28日までナイロビ(ケニア)において開催される予定です。
3 評価
今次会合では,海洋プラスチックごみ問題が国際的な関心を集める中,バーゼル条約の規制対象に汚れたプラスチックごみを追加する改正が採択されました。本改正は我が国も共同提案を行ったものであり,世界全体で連携して,海洋プラスチックごみを含む環境問題への対策を進めていくため,有意義なものです。また,長年にわたり懸案となっていたロッテルダム条約の遵守メカニズムの設置が決着したことも大きな成果です。
今後も,これまでの取組の成果と課題を踏まえ,各条約の実施の更なる強化により,有害な化学物質や廃棄物の環境上適正な管理が進展することが期待されます。