地球環境
水銀に関する水俣条約 第3回締約国会議
令和元年11月25日から11月29日にかけて,ジュネーブ(スイス)において,水銀に関する水俣条約の第3回締約国会議(COP3)が開催されたところ,概要は以下のとおりです。
1 全体概要
水銀に関する水俣条約(以下,水俣条約)は2017年8月16日に発効し,同年9月に第1回締約国会議(COP1)が開催されました。締約国会議は第3回までは毎年開催されることとなっており,本会合は2018年11月の第2回会合(COP2)の約1年後となる2019年11月に開催されました。
本会合では,水俣条約実施に係る技術的ルールに加え,事務局の2020年~2021年の活動計画・予算や組織体制等の運営に関する事項に関する議論が行われ,条約の詳細ルール作りが進展しました。
また,本会合には各国政府,関連の国際機関や市民社会団体等から1000名以上が参加し,我が国からは外務省,経済産業省,環境省等からなる代表団が参加しました。
2 主な会議の結果
本会合では,水俣条約の規定に基づき,締約国会議で決定すべき事項に関する議題が協議されました。我が国は本会合会期前に開催された専門家会合に参加して会合文書の作成に寄与し,欧州連合と共同で決議案を提出するなど,水銀の規制にかかる国際的なルール作りに貢献しました。また,水俣条約の実施を推進し,締約国の規定の遵守状況を確認する実施・遵守委員会委員に,アジア・太平洋地域から中国,ヨルダンと共に推薦され,選出されました。
(1)条約の運営に係る事項
ア 事務局の体制
水俣条約事務局の人員体制のほか,水俣条約事務局と廃棄物・化学物質3条約(バーゼル条約,ロッテルダム条約,ストックホルム条約)事務局等との協力体制の詳細についても議論され,両事務局と国連環境計画(UNEP)でタスクフォースを設置し,長期的な協力を検討していくことが決まりました。
イ 締約国による報告
締約国は,水銀廃棄物の処理,水銀の供給源や貿易に関する情報を事務局に報告することとなっており,その報告様式や報告期限が決定されましした。
ウ 予算
水俣条約事務局の2020年~2021年の活動計画と予算が決定され,各締約国の拠出額は,2020年当初時点での締約国について,国連通常予算分担率に準じて計算されることが決まりました。
(2)水銀規制に関する技術的事項
我が国は,欧州連合と共同で決議案を提出するなど,水銀の規制に係る国際的なルール作りに積極的に貢献しました。COP3では,水銀により汚染された場所の管理に関する手引が採択され,水俣条約附属書A(水銀添加物)及び附属書B(水銀または水銀化合物を使用する製造工程)の見直しにかかる作業予定等が決定されました。また,水俣条約の有効性評価の枠組について引き続き議論を進めていくことを決定しました。
(3)関連イベント
我が国は,会合期間中,日本の水銀対策を紹介した広報資料等の配布,水俣市,水俣高校等と連携した情報発信,水俣市関係者からCOP3に向けたメッセージの放映等を行ったほか,水銀に関する科学と政策のつながりについての特別イベントを開催しました。
また,COP3に先立つ11月23日(土曜日),世界水銀パートナーシップ第10回アドバイザリ会合が開催され,我が国がリードする水銀廃棄物分野について進捗報告を行いました。
(4)次回締約国会議の予定
次回の第4回締約国会議(COP4)は,2021年10月から11月にバリ(インドネシア)にて開催することを決定しました。
3 評価
今次会合では,水銀に関する水俣条約の活動状況と今後の課題が確認されるとともに,事務局の体制や水銀の規制に必要な各種の技術的事項の詳細について検討が進められました。今後は,水俣条約の有効性評価の枠組が充実され,水銀の放出源の捕捉・管理や水銀廃棄物の定義に関する専門家グループでの検討が進むことにより,より実効的で効率的な水銀の規制が実施されることが期待されます。