地球環境
バーゼル条約・ロッテルダム条約・ストックホルム条約 締約国会議
5月4日から5月15日にかけて,ジュネーブ(スイス)において,化学物質・廃棄物関連三条約(バーゼル条約,ロッテルダム条約,ストックホルム条約)締約国会議が開催されたところ,概要は以下のとおりです。
1.全体概要
今次会合では,第12回バーゼル条約締約国会議,第7回ロッテルダム条約締約国会議及び第7回ストックホルム条約締約国会議が開催され,バーゼル条約実施に係るガイドラインの策定,ロッテルダム及びストックホルム条約への規制物質の追加,各条約共通の論点(三条約の連携,技術支援及び資金)等につき議論を行いました。
今次会合には,171か国の政府関係者,関係国際機関,産業界及び市民団体関係者等,約1,200人が参加しました。
2.主な会議の結果
(1)第12回バーゼル条約締約国会議
ア ガイドラインの採択
留性有機汚染物質(POPs)廃棄物の環境上適正な管理に関する各種技術ガイドライン及び水銀廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドラインが採択されました。また,電気電子機器廃棄物(E-waste)及び使用済み電気電子機器の越境移動(特に廃棄物と非廃棄物の識別)に関する技術ガイドラインについては,次回締約国会議(2017年)において更新されることを前提として採択されました。
イ 更なる法的解釈の明確化
締約国が円滑な条約実施を行うために参考としうる指針を提供する条約の用語集の作成につき,次回締約国会議での採択を目指して継続することとなりました。また,有害廃棄物の定義に関係する附属書について,改訂を視野に入れた見直しの作業を開始することが決定されました。
ウ 有害廃棄物等の環境上適正な管理(Environmentally Sound Management: ESM)
専門家作業グループの作業を継続することとし,次回COP13までの作業計画が採択されました。
(2)第7回ロッテルダム条約締約国会議
ア 新規規制物質の追加
- メタミドホス(駆除剤)を附属書IIIに追加する決定が採択されました(9月15日に発効)。
- トリクロルホン(駆除剤),フェンチオン(著しく有害な駆除用製剤),クリソタイルアスベスト及びパラコートジクロライド含有駆除剤については,附属書IIIへの掲載について参加国が一致しなかったため,次回COP8(2017年)で引き続き議論することとなりました。
イ 遵守
前回COPからの継続議題であった遵守に関する手続及びメカニズム設置については,今次会議でも引き続き交渉されましたが合意に至らず,次回締約国会議での採択に向けて引き続き検討することとなりました。(3)第7回ストックホルム条約締約国会議
ア 新規規制物質の追加
- ポリ塩化ナフタレン(PCN)(塩素数2~8を含む)を同条約附属書A(廃絶)及び附属書C(非意図的放出の削減)に,ヘキサクロロブタジエン(HCBD),ペンタクロロフェノール(PCP)とその塩及びエステル類をそれぞれ同条約の附属書Aに追加する決定が採択されました(注:PCPについては,本条約では初めてとなる多数決による意思決定手続により採択)。 この附属書改正は,今後,本改正に関する国連事務局長通報が各締約国宛てに送付された日から1年後に発効します。
- 過去に附属書A又は附属書B(制限)に追加された化学物質の適用除外に関する評価及び今後の見直しに関する作業計画,条約の有効性の評価などについての議論が行われました。
イ 遵守
前回COPからの継続議題であった遵守に関する手続及びメカニズム設置については,今次会議でも引き続き交渉されましたが合意に至らず,次回締約国会議での採択に向けて引き続き検討することとなりました。
ウ 地球環境基金(GEF)(注:ストックホルム条約の資金メカニズム)
資金ニーズの評価,COPとGEFとの覚書の有効性,GEFに対する評価実施要領及びGEFに対する追加ガイダンスに関する決定が採択されました。
(4)三条約共通の検討事項
ア 三条約間の連携(シナジー)の評価
関連活動の進捗状況に関する外部評価を次回締約国会議までに実施することになりました。また,三条約に共通する国及び地域レベルでの条約実施の促進等に向けた活動を更に進めることとなりました。
三条約の目的を達成する上で,化学物質及び廃棄物適正管理分野における他の機関との協力及び連携を促進する重要性が確認され,事務局に対し,国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)への効果的な関与とともに,水銀に関する水俣条約暫定事務局との協力・協調を継続・強化すること等を求めました。
イ 技術支援・資金供与
条約事務局が実施する技術支援プログラムを継続し,次回締約国会議にその進展について報告提出を求めることとなりました。また,バーゼル条約及びストックホルム条約に設置された地域センターの活動継続が承認されるとともに,両条約の地域センター間の協力及び連携の継続が有益であることが確認されました。
化学物質及び廃棄物管理のための資金調達に関しては,(ア)主流化,(イ)民間部門の活用,(ウ)外部資金の調達を含む統合的アプローチを歓迎するとともに,事務局に対し,事業計画の実施において同アプローチに沿って活動することを求めました。
ウ 共同事務局の事業計画及び予算
条約事務局の2016-2017年事業計画及び予算が承認されました。
(5)次回会合の日程
次回の三条約締約国会議は,2017年4月23日から5月5日までジュネーブにおいて開催され,会期中に各締約国の閣僚級が参加するハイレベルセグメントが実施される予定です。
3.評価
今次会合では,化学物質及び廃棄物関連三条約でのシナジーの取組が進められ,条約事務局の合理的な運営,技術支援活動の共同実施等が軌道に乗りつつあることが確認されました。今後は,これまでの取組の成果と課題を踏まえ,各条約の実施の更なる強化及び化学物質及び廃棄物管理の重要性に対する認識の向上等が進展することが期待されます。