- 各種定例会合においては,サービスの分類問題や国内規制等に関する技術的な議論が行われた(詳細は本文2.参照) 。また,サービス貿易理事会においては,世界銀行によるサービス・データベースに関するプレゼンテーションなどが行われた。なお,金融サービス貿易と開発に関するワークショップも開催され,規制の自由化や金融危機における各国の措置について意見交換が行われた。
- サービス貿易の更なる自由化に関し,我が国を含む有志国を中心に新たな協定の策定に向けた議論が続けられてきたが,6月クラスター会合開催期間中も,その枠組みや内容について集中的に議論が行われた(その結果として,後日(7月5日),これまでの議論をとりまとめたプレス発表(和文仮訳(PDF)
・英文(PDF)
)が行われた)。
1.概要
6月25日から29日まで,ジュネーブにおいてWTOサービス・クラスター会合(注1)が開催された。昨年12月のWTO第8回閣僚会議を踏まえ,サービス貿易の更なる自由化をどのように進めていくか,各国首都からの多くの参加を得て議論が行われた。
(注1)WTOサービス交渉は,関連する各種会合を一時期(1~2週間)にまとめて実施 しており,これら一連の会合を併せて「サービス・クラスター会合」と称している。)
2.各種定例会合
サービス貿易理事会定例会合をはじめ,各種定例会合が行われたところ,その概要は以下のとおり。
(1)サービス貿易理事会
国境を越える電子商取引に関して中小企業が直面する課題及び国際携帯ローミング(3月のクラスター会合の際に行われた国際携帯ローミングのシンポジウムに関するフォローアップ)について議論が行われた。
また,世銀が作成したサービス・データベース(103カ国,金融・電気通信・小売・輸送・自由職業サービスの5分野及び第1,3,4モードを対象とし,外国サービスやサービス提供者に対する規制や差別的措置を調査したもの)に関するプレゼンテーションが行われた(なお 同データベースに関する世銀のホームページを参照)。
さらに,米国から,サービス新協定に関する有志国会合の議論の現状(下記4.参照)が報告され,今後も作業を強化していく意向が示された。他方,新興国などからは,マルチの取組を害するのではないかなどの懸念が示された。
(2)金融サービス委員会
技術的議論については,W/120や金融附属書における分類の相違点について研究を行う必要があるか等今後の進め方について議論された他,金融サービス貿易と開発に関するワークショップを踏まえた議論がなされた。また,金融サービス貿易の最近の進展については,信用秩序の維持のための措置等に関する議論のあり方や各国の経験についての情報交換を含めて,引き続き検討することとなった。
(注)金融サービス貿易と開発に関するワークショップ
今回のクラスター会合では,金融サービス貿易と開発に関するワークショップが開催され,各国の金融当局及び国際機関から,金融サービスの経済成長への貢献や,金融自由化と規制との関係性等についてプレゼンテーションが行われた。また当局からは,金融機関の構成をはじめとした国内の金融セクターの現状や,金融危機と自由化の経緯についても説明がなされた。
(3)特定約束委員会
Corporate Secretaries International Association(CSIA)によるプレゼンテーションが行われ,同団体より,コーポレート・ガバナンスやコンプライアンスに関するサービスがW/120で分類されていないことに関して問題意識が提示された。
分類問題では,コンピューター関連,電気通信及び音響映像サービスにつき,議論を終了した。前回会合で初めて取り上げられたエネルギーサービスの分類について引き続き議論された。また今回新たに気候関連サービスの分類が取り上げられ,OECDなど他の国際機関の活動成果を参考にしつつ,そもそも多くの分野にまたがる同サービスをどのように定義するかなどについて活発な議論が行われた。
次回会合では,エネルギーサービス,気候関連サービスにつき引き続き議論するとともに,郵便・クーリエサービス,流通サービスに関する分類問題が取り上げられる予定。
(4)国内規制作業部会
我が国を始めとする複数の加盟国は,自国の国内規制措置(資格・免許に関する申請書の提出,不完全な申請に対する措置,認証された写しの受理,申請の拒否に関する慣行などに関する論点)に関する事例を紹介したほか,同作業部会における将来の議論のありかた(分野横断的な規律に加えて,分野別規律の作成に関する議論も対象とするか否か)について検討が行われた。
(5) GATSルール作業部会
セーフガード措置,政府調達,補助金について議論が行われた。セーフガードに関する核となる要素を整理した文書ガイドが事務局から提出された。政府調達に関しても事務局が作業するよう提案があった。また,TPRB(貿易政策検討機関)における補助金関連の事例をまとめた事務局文書(2007年作成)につき,更新することとなった。
3.世銀によるロジスティクス指標に関するプレゼンテーション
世銀が作成したロジスティクス指標(LPI:Logistics Performance Index)に関するプレゼンテーションがなされた。税関の効率・インフラの質・貨物の追跡能力といったLPI算出のために行った調査項目や方法に関する説明とともに,LPIの意義について説明があった。
4.サービス貿易新協定に関する有志国会合
我が国を含む有志国(注2)が中心となり,新たな協定の策定に向けた議論が続けられてきたが,6月クラスター会合開催期間中も,その枠組みや内容について集中的に議論が行われ,9月以降作業を加速化することについて一致をみた(その結果として,後日(7月5日),これまでの議論をとりまとめたプレス発表(和文仮訳(PDF)・英文(PDF)
)が行われた)。
(注2)日,米,EU,豪州,カナダ,チリ,コロンビア,コスタリカ,香港,イスラエル, メキシコ,ニュージーランド,ノルウェー,パキスタン,ペルー,韓国,シンガポール,スイス,台湾,トルコの20カ国・地域が有志国として議論に参加。プレス発表に最終的に国名を記載したのは,シンガポール及びチリを除く18カ国・地域。
5.次回クラスター会合
10月1日の週に開催の予定。
サービス交渉の最新情報や詳細については,以下の外務省ホームページをご参照ください。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/wto/service/index.html