経済

日本のりんご火傷病に対する検疫措置(DS245)

2007年7月13日更新

(1)申立国

米国

(2)問題の措置

日本がりんご輸入解禁の条件として課している火傷病(注)に対する検疫措置(米国内のりんご果樹園周囲に500メートルの緩衝地帯を設置すること等)。

(注)火傷病は、りんご、ナシ等の果樹やサンザシ等の花木類に伝染する病害で、日本国内では未発生のものです。

(3)紛争の経緯及び論点等

2002年3月1日の米国による協議要請を受けて、4月18日にジュネーブで二国間協議が行われましたが、紛争の解決に至らず、米国の要請により、同年6月3日にパネルが設置されました。

米国は、「成熟した病徴のない」りんご生果実には火傷病が存在しないため火傷病の感染経路にはなり得ず、米国産りんご生果実に対する日本の植物検疫措置には科学的根拠がないので、衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)に違反すると主張しました。日本からは、「成熟した病徴のない」りんご生果実に火傷病が存在するとの研究報告があり、米国産りんご生果実に関する植物検疫措置は適切な危険性評価に基づくもので、十分な科学的根拠を有すると反論しました。その後、同年7月15日にパネル報告書が配布されましたが、同報告書は日本の主張を認めないものであったため、日本は8月28日、上級委員会に申立てを行いました。上級委員会における口頭陳述において、さらに日本の立場を主張しましたが、上級委員会は米国の主張を認める報告書を11月26日に発出しました。この上級委員会報告書は、12月10日のDSB特別会合において、前記のパネル報告書とともに採択されました。

上級委員会認定のポイントは、以下のとおりです。

日本はDSBの勧告を受けて、2004年1月9日のDSB特別会合において、日本の検疫措置をWTO協定に整合的に実施するという意図表明を行い、その後米国との間で3回にわたり技術協議を行いましたが、新しい措置について米国と合意に達することができませんでした。同年6月30日、日本は現行措置を改正しましたが、米国は日本の改正が不十分であるとして、対抗措置の申請及び日本の履行した措置がWTO協定整合的か否かを判断する再パネルの設置を要請し、2004年7月30日、この再パネルが設置されました。同再パネルは、「成熟した病徴のないりんご果実であれば火傷病を伝搬するリスクは無視できる」という科学的な根拠に基づいて、日本の措置は過剰でありSPS協定に違反しているとの判断を行いました。この再パネル報告は、2005年6月23日に加盟国に配布され、公表されました。

この結果を受け、日本は、果樹園周囲の緩衝地帯設置や果実の表面殺菌措置を廃止する等の火傷病検疫措置を改正し、同年8月30日に「相互に合意された解決」についての日米共同書簡をWTO事務局に提出し、この二国間了解は同月31日に開催されたDSB会合で承認されました。

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