経済外交
国連貿易開発会議(UNCTAD)
United Nations Conference on Trade and Development
令和4年8月25日
1 設立の経緯
開発途上国の経済的困難が国際的な協力によって解決されない限り、世界の平和や繁栄もあり得ないとの考えの下、いわゆる「南北問題」の存在を指摘する声が1960年代に高まった。このような考え方を背景として開発途上国は1962年7月カイロに集まり、貿易と開発に関する会議の開催を求める「カイロ宣言」を採択した。
次いで、同年8月に第34回経済社会理事会でかかる会議の開催を支持する決議が採択され、同年秋の第17回国連総会では同会議の議題案の作成等の準備作業の大要を指示した決議第1785号が採択された。
上記決議に基づいて、経済社会理事会及びその準備委員会での審議を経て、国連貿易開発会議(UNCTAD)が1964年3月より3ヶ月にわたってジュネーブで開催された。当初、この会議は常設的なものとは考えられてはいなかったが、同年12月の国連総会は同会議の勧告に基づいてUNCTADを総会の機関として設置する決議第1995号を採択した。
2 目的
UNCTADは開発と貿易、資金、技術、投資及び持続可能な開発の分野における相互に関連する問題を統合して取り扱うための国連の中心的な場である。その目的は途上国の貿易、投資、開発の機会を最大化し、グローバリゼーションから生じる問題に直面する途上国を支援し、対等な立場で世界経済へ統合することである。
3 加盟国
195か国(国連加盟国+バチカン、パレスチナ)が加盟。
日本は設立時より加盟。
4 組織
- (1)総会
UNCTADのマンデート及び優先的取組事項を決定。4年に1回開催- 第12回総会:2008年4月(於:アクラ(ガーナ))開催。成果文書アクラ・アコードを採択。
- 第13回総会:2012年4月(於:ドーハ(カタール))開催。成果文書ドーハ・マンデート及び議長宣言ドーハ・マナールを採択。
- 第14回総会:2016年4月(於:ナイロビ(ケニア))開催。「決定から行動へ:貿易と開発のための包括的かつ公平なグローバル経済環境への移行」のテーマの下、各国首席代表による一般討論演説に加え、貿易と開発に関する様々な問題を扱うテーマ別討論会等、様々な会合が開催。「ナイロビ合意」を採択。
- 第15回総会:2021年10月にジュネーブ及びバルバドスを結んだハイブリッド形式で開催。「不平等及び脆弱性から全ての人の繁栄へ」のテーマの下、各国代表による一般討論やハイレベル・セッションが開催され、ブリッジタウン盟約(the Bridgetown Covenant)及びスピリット・オブ・スパイツタウン(the Spirit of Speightstown)が採択された。
- (2)貿易開発理事会(Trade and Development Board:TDB)
毎年1回の通常会期と3回を限度とした執行会期を開催。総会にて採択される中期行動計画と言うべき成果文書に基づき、毎年の具体的活動方針検討や、中期計画進捗状況レビューを行うほか、開発途上国の貿易と開発に関連した重要且つ広範囲な問題を討議。また、下部機関である2常設委員会(貿易開発委員会、投資・企業・開発委員会)及び各種専門家会合からの報告を受ける。
この他、緊急の議題が生じた際は特別会期が開催される。 - (3)委員会
2つの委員会があり、毎年1回開催される。- ア 貿易・開発委員会
- イ 投資・企業・開発委員会
- (4)事務局長
グリンスパン事務局長(前イベロアメリカ事務局長)(2021年9月~) - (5)本部所在地
ジュネーブ(スイス) - (6)職員数
約460名(邦人職員6名)(2021年)
5 活動内容
- (1)政府間会合
総会及び貿易開発理事会をはじめとして、コンセンサス形成のための様々な意見交換の場を設けている。 - (2)調査研究及び政策分析
年に1回、貿易開発報告書(TDR)、世界投資報告書(WIR)、後発開発途上国(LDC)報告書を出版する他、デジタル経済報告書等出版物多数あり。 - (3)技術協力
貿易、投資及び関連分野における開発途上国の能力向上のための技術支援プロジェクトを実施している。
6 財政
UNCTADの予算は国連通常予算及び任意拠出金より成り立っている。2020年の通常予算は約68百万ドル、任意拠出金は約32百万ドル。日本は通常予算の約8.564%を負担(2020年)。