
第8回国連改革に関するパブリックフォーラム(概要)
平成22年4月9日
3月30日、JICA地球ひろばにおいて、外務省と「国連改革を考えるNGO連絡会」との共催により、第8回国連改革に関するパブリックフォーラムが開催され、NGO関係者、政府関係者、学術関係者、報道関係者、一般市民を含む約80名が参加し、「グローバルな枠組みと日本の役割」と題し、日本が更なる国連改革に向けてどのように取組を進めていくべきなのか議論を行ったところ、概要は以下の通り。(プログラム及び主な発表者・参加者は別添(PDF)
参照。)
開会挨拶
冒頭、本フォーラムが5年前にNGOと外務省の間の画期的な意見交換の場として開始された経緯や、この5年間に起こった米国でのオバマ大統領政権の誕生や日本での政権交代などの国内外の情勢の変化が説明され、NGO側も政府側も各々が地球的規模の課題の解決に向けて取り組む必要があることが述べられた。
また、今年度の主要な外交日程の説明がなされた上で、外交課題が山積している中、政府とNGOを初めとする様々なセクター間の意見交換の場が必要であることが強調された。また、今後、企業、学生などの参加を広げ、セクターを越えて連携、協力をしながら国連に関する情報共有や議論を進めていくことが重要であると表明された。
セッション1「グローバルな意思決定枠組みのあり方:気候変動、開発、人権の視点から」
気候変動、開発、人権等に関してグローバルな意思決定の枠組みをどのように連携していけるかという課題について意見交換が行われ、前半は、主に昨年開催された国連気候変動枠組条約(FCCC)第15回締約国会議(COP15)が事例として取り上げられ、後半は生物多様性条約(CBD)第10回締約国会議(COP10)を題材により広いテーマでの意思決定の枠組みについての討論が行われた。議論の概要は以下の通り。
- COP3や京都議定書を巡る気候変動に対処するための国際社会の課題、COP15/コペンハーゲン
合意に見られる日本や各国の対応の説明がなされ、今後の国連の課題や役割、また、政府やNGOを含む日本の課題や役割について意見が述べられた。
- 実際にCOP15での会合に参加した経験を基に、右会合の流れ、会合の結果についての概要の説明がなされた。また、会合の意思決定に使われるコンセンサス方式に関する論点について述べられ、コンセンサス形成に向けた様々な面からの分析が行われた。
- ミレニアム開発目標(MDGs)、人間の安全保障、生物多様性についての概要が説明され、総論として国連には普遍性と包括性という強みがある反面、意思決定の効率性や実効性という面では限界があり、本年2010年は開発問題における国連の役割を見つめ直す良い時期であることが強調された。
- 開発に関係する立場から、自らが所属するNGOのラオスの農村での生活を例としてあげつつ、本年名古屋で開催される予定の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)について、右条約は環境、開発、人権等、広範な内容を含んでおり、持続可能な社会の構築へのビジョンを明示する必要性が強調された。また、COP10に向けた関心、期待が表明され、議論枠組みに対する懸念が示された。
セッション2「軍縮と安全保障」
国連政策の中でも、最近特に関心が高まっている「軍縮」と「安全保障」というテーマを取り上げ、これらをどのように進めていくのか、また、日本として核軍縮を進めつつ安全保障をどのように担保していくのか、という課題について討論が行われた。議論の概要は、以下の通り。
- 日本自身が核抑止を信じ、それから脱却しようとしていないとの問題意識を提起した上で、核抑止に代わる安全保障政策・安全保障体制の構築がなければ核軍縮は実現不可能であり、核軍縮のモメンタムを不可逆なものにしていく必要があると強調された。
- 日米同盟の観点から日本の核軍縮への取り組みについての意見が述べられ、オバマ大統領の就任や日本での政権交替が核軍縮や同盟関係に与える影響、日米同盟強化が周辺国に与える影響、地域の安全保障と核軍縮・核不拡散の関係等についての説明が行われた。
- 国連における軍縮と安全保障の議論の現状についての概観に引き続き、国連の文脈での軍縮と安全保障に関し、多国間でのルール作りと軍縮・不拡散に関する議論の活性化という二つのアプローチが相互に連動している状況と日本の取り組みについての説明が行われた。
- 一般参加者からは、核軍縮と核廃絶の観念が曖昧になっているのではないかとの懸念が示された。
セッション3「総括討議」
全体の総括が行われた。議論の概要は以下の通り。
- 戦後冷戦構造の崩壊とともに、国連を一つの舞台として地球規模課題の問題について闊達に議論できる環境が構築されてきたという最近の歴史を振り返りつつ、本日の議論の意義についての背景説明及び総括がなされた。
- FCCCやCBD、NPTなどそれぞれの課題に専門的に取り組む必要がある一方、総合的なビジョンを提示することの重要性が表明され、NGO、外務省、政府間の問題意識の共有が必要であると強調された。こうしたビジョンを議論し、共有するための場は拡充される必要がある。また同じステークホルダーの調整に関して、CBDの中のローカル・コミュニティの重視など、それぞれの課題で優先順位を決める必要があるのではないかと指摘された。さらに、外交政策のフレームワークに関する議論では、今後事前の対応を充実しなければならないとの意見が提示された。
- MDGs達成をとりまく諸課題の現状の分析やMDGsの関連で自身が所属しているNGOの活動の紹介が行われた。特にディーセントワークについて焦点が当てられ、数値だけの経済成長を求める支援ではなく、本当に人が人間らしく生きられる支援が重要であると強調され、セクター間連携・ネットワークの強化、軍備に使用している巨額な資金をディーセントワーク対策に使用すべき等の提言が行われた。
- 国連に対する諸政策の立案の過程で本日パネリストや参加者からいただいた有意義な意見を参考にしていきたい旨表明された。また、人権部分の議論の補足として、新政権の下で、個人通報制度、人権擁護機関の設置、子の親権等の人権の課題について前向きに検討が進められていることが紹介された。日本政府として望ましい貢献のあり方としては、資金面での貢献が制約を受けている中、アジェンダセッティング等知的分野で貢献していくことが望ましい旨強調され、国連安保理に関して、4月、日本は安保理議長国を務めることになっており、国際社会の関心の高い議題に関して公開討論を開催すること等を通じて、議長として貢献していきたいとの意見が述べられた。
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