
第10回国連改革に関するパブリックフォーラム(概要)
平成24年3月22日
3月19日,JICA地球ひろばにおいて,外務省と「国連改革を考えるNGO連絡会」の共催により,第10回国連改革に関するパブリックフォーラムが開催され,NGO関係者,政府関係者,一般市民を含む約60名が参加し,「防災の将来 ~市民社会と政府の連携をめざして~」と題して,東日本大震災の経験と教訓を今後の取組にどう活かすかという観点から議論を行った。概要は以下のとおり。(プログラム及び主な参加者(PDF)
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セッション1 「地域コミュニティとの連携に向けて」
- 本年7月に我が国が主催して開催する大規模自然災害に関するハイレベル国際会議について,大規模自然災害や東日本大震災の経験を踏まえて,防災に関する教訓を国際社会と共有するために準備を進めているとの説明があった。
- 気仙沼の被災の状況と海の生態系の復活,漁業者・研究者による調査活動についての説明がなされるとともに,特に防災に関する復興プロセスにおける政府・自治体からの情報提供の必要性,被災民・地域住民の声に耳を傾けることの重要性,意思決定プロセスの透明性確保の重要性が指摘された。
- 被災の現場で起きている深刻な問題として,生物多様性の破壊とそれと関連する農業者,漁業者などが営む生業の消滅に言及がなされ,この回復が課題であるとの指摘があった。また,コミュニティは地域によって多様であり,信仰を含めた伝統的な知識や自然環境を含めた再定義が必要であり,コミュニティに対する主体性の尊重と配慮の不足が政府に対する信頼の欠如につながっている可能性があるとの指摘があった。
セッション2 「国際協力と国内活動の接点」
- 政府が行う緊急人道支援の取組の現状について説明があった。その際,被災国政府・自治体,外国政府,国際機関・赤十字,NGOといったアクターがそれぞれどのような役割を果たすかについて情報共有することが重要であると強調された。
- 国際協力NGOの経験を通じて得られた東日本での緊急支援の成果と課題が紹介された。成果としては,経験を生かして活動が迅速に行われたこと,資源の動員力があったこと,さらに行政を補完する機能を果たしたことに加え,企業との協調が進展したことが挙げられた。課題としては,今後の地元団体への引き継ぎ,福島の経験をどうグローバル化するか,配慮すべき人権基準への準拠,正しい情報に基づく支援の調整などソフトの支援に理解と助成を受けられなかったことが指摘された。
- ボランティアという外部者が地域コミュニティとの協力の下で震災復興に関与した石巻市の成功事例について紹介があった。一方で,ボランティアを受け入れることに抵抗を感じない社会づくりや各国政府,国際機関,国際NGOなどの国際的な支援を受けるためのシステムの整備を含めた「受援力」(援助を受け入れる力)をつけることの必要性も指摘された。また,コミュニティについては,深く傷ついた地域では地元のイニシアチブに任せるだけでは自立的なプロセスにはつながらない可能性があり,そのようなケースでは,外部からの人材が加わることを含めてコミュニティの再建を考えることが必要であるとの指摘があった。
総括セッション 「コミュニティベースの防災の実現に向けて」
- 災害の被害者は,災害弱者(女性,子ども,障害者,高齢者,外国人など)に対しても,他の市民と同様の権利を保障されなければならないことが指摘された。特に,東日本大震災において,災害の被害を受けやすい女性のニーズが踏まえた対応がなされていなかったこと,福祉避難所がなかったことなども紹介された。この関連で,重要な国の指針が現場レベルでは周知されておらず,実施されないという課題も指摘された。この問題は人権保障の第一義的責任を負う政府が対応すべきものではあるが,一方で市民社会もモニタリングを行うなど役割を果たしうることが指摘された。
- 東日本大震災において,政府とNGOの連絡調整は何度も行われたが,情報が錯綜していて,全体像の把握が十分ではなかったとの指摘があった。7月のハイレベル国際会議に向けては,兵庫行動計画をレビューしつつ,こうした全体像の把握や調整に関する課題が何であったが共有される必要性が指摘された。
- 以上の議論を総括する形で,コミュニティについては多様性を十分に踏まえた上で,必要な場合には外部の関与を得つつ,その機能の回復について実体を把握しながら,きめ細かに取り組んでいくことが重要であると指摘された。また,災害の経験や教訓について国際社会と共有する場合には,成功例やよい側面のみではなく,反省し改善すべき点も率直に留意すべきであるとの指摘があり,このフォーラムだけではなく,こうした作業の積み重ねを国内プロセスとして,7月に向けて進めてほしいという期待表明があった。
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