世界中が期待と不安をもって見つめたベルリンの壁崩壊から今年ではや10年を迎えます。振り返って見れば、この10年の間、国際社会は冷戦後の安定的国際秩序を模索し続けてきました。一方、私たちは今、新たな世紀とともに、新たなミレニアム(千年紀)をも迎える歴史的な瞬間を経験しようとしています。このような中、私たちの責務は、「冷戦後」の国際秩序構築にとどまらず、人類の未来をも見据えて、世界全体の安定と繁栄の基盤となる国際秩序の構築に取り組んでいくことであると言えましょう。
折しも欧州では、単一通貨ユーロが発足しました。今世紀、二度の大戦で戦火を交えた国々が、新たな世紀に向けて一つの共同体として統合を深めつつあります。わが国も、国民が、より安全な国際環境の中で、より豊かな生活ができるよう、積極的な外交活動を続けてきていますが、山積する課題を解決しながら、新たな世紀、新たなミレニアムに相応しい国際的枠組みを作り上げていくために、いまだ為すべきことは多く、政・官・民を問わずあらゆる英知を結集してこれにあたることが求められています。
このような問題意識に立って、外務省では日頃より学界の有識者と、外交政策について緊密に意見交換を行い、有益な提言を得てきていますが、この度、以下の各氏より、「21世紀に向けた日本外交の課題」という、誠に時宜を得たテーマで提言をいただきました。私は、1999年を、新たな世紀そして新たなミレニアムに向けて何を為すべきかを幅広い視点から考える年にしたいと思っております。その観点から、この提言は、非常に示唆に富むものであり、今後、新たな世紀に向けた日本外交の指針を考えていくにあたり、本提言を十分参考とし、更に議論を深めていきたいと考え、ここに提言内容を紹介させていただく次第です。
外務大臣 高村 正彦
提言作成メンバー(五十音順)
猪口 孝 東京大学教授
北岡 伸一 東京大学教授
国分 良成 慶應義塾大学教授
田中 明彦 東京大学教授
袴田 茂樹 青山学院大学教授
山内 昌之 東京大学教授
山影 進 東京大学教授