平成21年6月26日
25日及び26日、イタリア・トリエステにおいて開催されたG8外相会合の概要は以下の通り(G8各国より外相(一部代理)が出席。我が国より中曽根外務大臣が出席)。26日のG8外相による共同記者会見において、議長声明(骨子、仮訳)が発出された。
テロ、過激主義、国際組織犯罪、気候変動等の新たな不安定化要素は相互に関係しており、また、昨年来の世界金融経済危機や食料危機は、国際社会の安定に深刻な影響を及ぼしているとの認識で一致。各国とも、こうした事態に対処するためには、問題の根本にある貧困、ガバナンス強化、教育等の分野に包括的に取り組む重要性について強調。
ソマリア沖及びアフリカ東岸の海賊事案の急増に対する懸念を共有。海賊対策のためには、海上における軍艦等の活動に加え、沿岸国の取締能力や法的枠組の強化が必要であるとの意見で一致。中曽根大臣より、海賊の根絶には、海賊問題の根本原因であるソマリアの不安定な情勢や周辺国が直面する貧困等の問題にも多層的に取り組むことが重要である旨述べ、各国とも支持した。
(1)各国より、2010年のNPT運用検討会議等を見据えた国際的な核軍縮・不拡散への取組を強化する重要性が強調された。G8として、より安全な世界を追求すること、そして、核のない世界のための状況を作ることについてのコミットメントを表明。また、全ての核兵器国に対し、更なる核軍縮措置をとるよう求めることで一致。
(2)中曽根大臣より、国際社会は核兵器のない世界に向けて現実的かつ着実に前進していくことが重要であり、国際的核不拡散体制を堅持、強化していく必要がある旨述べた上で、中国やNPTの枠外に留まる国を含む全ての核保有国による核軍縮の必要性、CTBT発効促進やFMCTの交渉開始など多国間による取組の必要性を強調した。また、原子力の平和利用に当たっての核不拡散、原子力安全、核セキュリティ(「3S」)の確保とそのための新規導入国への協力が必要である点も強調した。
アフガニスタン及びパキスタンの安定と発展のため、G8として引き続き支援をしていくことにコミットした。26日午後のG8と両国との会合で更に議論していくこととなった。
(1)中曽根大臣より、議論をリードする形で概要以下を発言。
(イ)国連安保理決議第1874号の実効性を確保するため、同決議に盛り込まれた武器禁輸、貨物検査、金融面等の措置を、国際社会が真摯に実施することが重要であり、G8各国が率先して実施していくことを求めたい。
(ロ)「対話の窓」を開けつつ、北朝鮮に対し、圧力を強め「強硬路線はコストが高く、対話に戻る方が得である」と認識させることが重要である。
(ハ)拉致問題を含む北朝鮮の人権状況の改善は、国際社会としても取り組むべき問題であり、引き続きG8として状況を注視し、北朝鮮に対し具体的行動を要請すべき。
(2)これを受けて各国より、北朝鮮の行動は断固として非難すべきである、国際社会が一致して安保理決議1874の履行に取り組むよう求めるとの点が強調された。また、北朝鮮の拉致問題を含む人道上の問題について、北朝鮮が直ちに対応するよう要求するとの点で一致した。
(1)各国より、イランにおける大統領選挙後の情勢、特に暴力や言論の抑圧等に対し、強い懸念が表明された。また、イランの主権を完全に尊重するとともに、表現の自由が確保されるよう要請した。
(2)イランの核開発について外交的解決策を見出すことに引き続きコミット。米国の対話政策などの機会をイランが逃さないことを真剣に期待するとの認識で一致した。イランの核開発がもたらす脅威に対し、関連の国連安保理決議の遵守が重要であるとの認識で一致した。
(1)G8として、引き続き二国家解決を支持することで一致。すべての関係者に対し、ロードマップや国連安保理決議等に則って直接交渉が再開されるよう呼びかけた。イスラエル及びパレスチナの双方に対し、入植活動の停止やテロと暴力の終了を含むロードマップ上の義務を履行するよう呼びかけた。
(2)安全で一体性あるイラクを引き続き支援。
(3)6月にレバノン総選挙が平和的に実施されたことを祝福。
(1)スーダンについて、南北包括和平合意(CPA)の確実な履行が重要であるとの点で一致した。ダルフールに関しては、カタール主導の和平プロセスを支持し、まずは早期の停戦合意が必要との点で一致した。
(2)ソマリア情勢の安定は、ソマリア沖の海賊対策の観点から重要との認識で一致。そのために、暫定連邦「政府」(TFG)のキャパビルや、アフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)への支援が重要であるとの点で一致した。
(3)その他のアフリカの地域についても意見交換を行い、G8間の協力を一層強化していくこととなった。