G8外相会合議長声明(骨子)
2009年6月26日
(和文仮訳、英文)
国際的な安全は、国境を越える影響を与えるテロ、国際組織犯罪、脆弱な制度、様々な不正売買などの現象に対する取組なくして確保できない。現在の経済状況、食料危機、エネルギー安全保障の欠如、気候変動は、世界が今まで以上に相互に関連していることをさらに証明している。世界金融危機は世界の貧困層の脆弱性を増大させ、上記の他の要素と相俟って、政治的緊張を拡大し、社会不安を助長する可能性がある。
こうした状況においては、平和の確保、紛争の解決、持続的開発のための条件という共通の関心に焦点を当て、財政的、外交的手段を動員するための包括的、協調的、持続的なコミットメントが必要である。我々G8外相は立場を一つにし、平和と安全に対する新旧の脅威に対処する責任を認識し、それらの課題を効果的な国際協力を促進する機会へと変革するコミットメントを強調する。
不拡散・軍縮・原子力の平和利用
- 世界的な不拡散努力を強化する観点から、国際的な核不拡散体制を強化し、2010年NPT運用検討会議の成功のために努力する。
- より安全な世界を追求すること、そして核のない世界のための状況をつくることにコミット。特に、米国とロシアがSTARTⅠ後継条約の交渉を決定したことに敬意を表する。さらに、すべての核兵器国に対し、更なる核軍縮措置を取ることを求める。包括的核実験禁止条約の発効のための努力を強化。
テロ対策
- すべてのテロ行為を最も強い表現で非難。テロリズムと麻薬の違法売買、武器の密輸、腐敗などの他の不安定化要素との関係の増大を引き続き懸念。
- G8として、テロの資金源を絶つことが極めて重要であり、FATF勧告や関連の制裁レジーム措置を完全に実施していくことを支持。途上国におけるキャパシティ・ビルディングと技術支援イニシアティブを支援。
国際組織犯罪
- すべての関連の国連条約、特に国際組織犯罪防止条約及びその補足議定書、国連腐敗防止条約の普遍化と完全な履行を求める。
- 途上国の刑事司法制度を強化するためのキャパシティ・ビルディング支援と技術支援供与をコミット。UNODCとの協力及びG8間の協調を強化。
平和維持 / 平和構築
- 平和支援活動の能力強化に関するG8の取り組みの進捗状況につき、専門家による首脳への報告を期待。
- 国連の主導的な役割を認識し、国際的な調整を強化。警察及び文民を焦点とし、世界中の能力強化を支持。アフリカに注目し、AU等との連携を継続。
海賊
- アデン湾及びアフリカ東岸における海賊事案の増加を深刻に懸念。ソマリア沖海賊対策に関するコンタクトグループ(CGPCS)と国際海事機関(IMO)などの多国間の枠組を通じた国際的な努力や個別及び、共同による海上の作戦活動を歓迎。
- 貧困や紛争など国内外の不安定課題に対する地域の各国による対処を支援することにより、海賊の根本原因に対する国際的なコミットメントの強化の必要性について合意。沿岸国の取締能力や法的枠組の強化のための国際協力の重要性を認識
- G8諸国として国際社会の取組を最大限支持するため、地域における大使、専門家レベルによる会合を通じ、フォローアップを行うことに合意。
イラン
- イランの大統領選挙後の情勢を懸念。イラン市民の生命が失われた選挙後の暴力に遺憾の意を表明。イランに対し、表現の自由を含めた基本的人権を尊重することを求める
- 核問題について、外交的解決策を見出すことに引き続きコミット。米国による直接対話の用意やEU3+3による交渉再開の呼びかけなどを支持。イランが、この機会を逃さないことを切に希望する。
- イランの核計画がもたらす拡散のリスクを引き続き深刻に懸念。イランに対し、IAEAへの完全な協力、及び国連安保理決議の遵守を強く求める。
アフガニスタン・パキスタン
- アフガニスタン・パキスタンに対する支援に引き続きコミット。両国及び地域諸国との対話の結果は別途報告される。
北朝鮮
- 国連安保理決議1718に違反して行われた5月25日の核実験及び4月5日の弾道ミサイル技術を用いた発射を地域の平和と安定に対する脅威として、最も強い表現で非難。国連安保理決議1874号の採択を歓迎し、国際社会に対し、完全に履行することを求める。
- 北朝鮮に対し、すべての核兵器及び既存の核計画並びに弾道ミサイル計画を放棄するため、関連の国連安保理決議を完全に履行するよう要請。
- 北朝鮮がさらに状況を不安定化させる行動をとらないこと、六者会合への参加を再開することを要求する。
- 北朝鮮が拉致問題を含む人道上の問題に対する国際社会の懸念に直ちに取り組むことを要請。
中東
- 二国家解決を完全に支持。パレスチナ人に対する支援継続とパレスチナの民主的な制度の強化への強固なコミットメントを維持。
- すべての入植活動の凍結や暴力とテロリズムの終了などのロードマップ上の義務の履行を両当事者に求める。イスラエルとその近隣国との包括的和平実現を期待
- 安定かつ一体性を保つイラクを引き続き支持。6月7日のレバノン選挙が平穏に実施されたことを祝福。
ミャンマー
- 最近の情勢を深く懸念。スー・チー女史を含むすべての政治犯の釈放をミャンマー政府に求める。
- 国連事務総長の周旋努力を支持。事務総長特別顧問及び人権特別報告者との協力をミャンマー政府に求める。ミャンマーが実施する政治的進展に対して引き続き前向きに対応する用意あり。
スリランカ
- 国内避難民(IDP)のためにスリランカ政府が実施した措置及び国連機関との協力を認識し、更なる措置を奨励。人道支援機関のアクセスが確保されるべき。国民和解に向けた政治プロセスの進展のため、更なる努力が必要。
イエメン
- 海賊やテロとの闘い、さらに中東、湾岸及びアフリカの角の安全と安定にとって極めて重要なイエメンの一体性及び領土と国境の効果的管理の観点から、イエメンに対する国際的な支持を向上させる戦略的重要性を認識し、国際的な協力を強化することを支持。
BMENA
- G8とBMENAのパートナーシップを引き続き完全に支持。イタリアとモロッコによる共同議長の下で本年秋に開催が予定されている第6回「未来のためのフォーラム」を期待。
アフリカ
- 最近のアフリカのパートナーの取組に敬意。最近の自由かつ公正な選挙、歴史的高水準の経済成長を歓迎。
- 非民主的な政権移行の残存に深い懸念を表明。選挙を通じた憲法秩序の回復を求める。
- アフリカの政治的・経済的課題を認識。そのための国際協力の必要性を強調。
ソマリア
- 長期的不安定と人道危機に対する深い懸念を共有。暫定連邦「政府」(TFG)の国民和解と平和のための取組を支持。2009年4月のソマリア国際会議の成果を歓迎。国際社会が治安のための取組に更に関与することを要請。
スーダン
- 包括和平合意(CPA)の実施の重要性を強調。
- ダルフール和平交渉にすべての当事者が誠実にコミットするよう要請。治安強化のためにはダルフール国連AU合同ミッション(UNAMID)の役割が不可欠であり、その完全かつ効果的な展開が重要。人道機関と協働するようスーダン政府に求める。国連安保理決議の義務に従うようすべての当事者に求める。
大湖
- 大湖地域及び全アフリカの安全にとり、コンゴ民主共和国の安定は最重要。危機の解決のための新たな機会を生み出したコンゴ民主共和国・ルワンダ両政府間の協力を賞賛。すべての武装勢力の武装解除及び社会復帰を奨励。
ジンバブエ
- 国民和解に向けた進展あり。ジンバブエ国民及び移行政府の平和、安定、繁栄及び民主主義のための取組を支持。包括的政治合意の完全な適用を奨励。不法な農場の収奪や人権の抑圧は止められなければならない。
西アフリカ
- 地域の政治安定プロセスは依然として脆弱。最近の非憲法的な政権移行の連続に示されるように、法の支配は引き続き主要な課題。テロ、海洋の治安悪化、違法行為(麻薬、小型武器及び人身の取引、身代金目的の誘拐)が増加。地域の諸国の能力を強化するための取組を奨励し、支援を継続。
コーカサス
- 地域の安定達成のためのコミットメントを表明。すべての関係者に対し、未解決の紛争の平和的解決に向けて取り組み、人道支援を支持するよう奨励。
- 地域協力の発展を強く促す。アルメニアとトルコの関係正常化への取組を歓迎。OSCEミンスク・グループ共同議長によるナゴルノ・カラバフ紛争の平和的解決に向けた努力を歓迎。