
G8外相会合(概要)
平成23年3月15日

3月14日及び15日,フランス・パリにおいて開催されたG8外相会合の概要は以下の通り(G8各国外相(一部議題については代理)及びEU外交安保上級代表が出席。我が国より松本外務大臣が出席)。会合終了後の15日の共同記者会見において,議長総括(骨子)が発出されるとともに,独立声明(生物兵器禁止条約運用検討会議に向けたG8外相声明)が発出された。
1.東北地方太平洋沖地震
- (1)外相会合の3日前に発生した地震で我が国が多大な損害を被っていることについて,会合冒頭,ジュッペ仏外相(G8議長)から,心からのお見舞いと亡くなられた方々への哀悼の意,G8としての連帯の気持ちが表明され,困難な状況にも拘わらずG8外相会合に松本大臣が参加したことへの謝意が表明された。
- (2)以上を受けて松本大臣より,多くの国々からお見舞いの表明や支援の提供を頂いていることに心からの感謝を表明。地震多発国の我が国にとっても今回の地震・津波は想像を超える未曾有の規模であり,極めて多数の被害,犠牲が出ていること,政府として全力で復旧活動に取り組んでいること,日本国民の力と諸外国の協力により今回の大災害を乗り越えていきたいこと等述べた。
- (3)また,今回の地震災害を受けた原発事故の現状と対策についても,想定を超える事態にあたり本来の自動制御ではなく手動で原子炉の冷却のための作業をしていること,緊張感をもって対応していること等,14日及び15日にそれぞれ直近の状況を含めて説明した。
- (4)これに対し,出席各国からは,改めてお見舞いと連帯の気持ちが表明され,G8議長総括の冒頭に困難な状況の中で日本国民が冷静さを失わず勇気と威厳をもってことに当たっていることへの賞賛の念が示されるとともに,技術的な面も含めて支援を行う用意があるといった温かい発言があった。外相会合の締めくくりにあたり,松本大臣からは,各国からの励ましに深い謝意を表し,各国外相から寄せられた力を自らの力と変えて災害の克服に取り組んでいきたいと述べた。
2.中東・北アフリカ情勢(リビア情勢)
- (1)14日は,特にリビア情勢を中心に議論が行われ,各国は,カダフィ指導者及び当局によるリビア国民に対する暴力や攻撃を強く非難した。国連安保理決議1970号で示された一連の対リビア制裁措置を,迅速かつ確実に実施していくことの必要性が確認され,リビア当局に対する更なる措置の可能性についても議論された。
- (2)カダフィ指導者・当局に対する圧力を強め,暴力を停止させることが必要であることについては異論はなく,各国は,効果的な対応について引き続き安保理の場などを含めて議論をしていくことで一致。また,アラブ連盟やAUなど地域の諸国の意見を良く聞くことが重要である,これら組織が最近出した声明に注目しているといった意見も多数出された。
3.その他の中東・北アフリカ情勢
- (1)この地域は現在歴史的な転換点に立っており,この地域の諸国と国民による政治,経済,社会分野の変革に向けた意欲を前向きなものとして歓迎し,その努力を支えていくことで一致した。エジプト及びチュニジアにおける公正な選挙の実施などを支持・支援していくことや,中東和平プロセスが停滞する現状への憂慮などが表明された。
- (2)松本大臣からは,自由・民主主義という基本的価値を追求することの重要性に賛同した上で,成長を通じ一定の時間をかけて民主主義に移行した経験を持つアジア諸国の例を引きつつ,民主主義を政治的安定につなげることが重要である,国民が情報にアクセスできることも政治的安定の実現のためには重要である等と指摘した。
4.北朝鮮,イラン,核軍縮・不拡散
松本大臣からこれら3つの課題についてまとめた形で冒頭発言を行った。
- (1)このうち北朝鮮については,ウラン濃縮活動は明らかに安保理決議及び六者会合共同声明に違反するものであり,これを強く非難し,核放棄等を北朝鮮に強く迫るべきであると主張。同様の見解が各国から示され,今回の議長総括においては,北朝鮮によるウラン濃縮活動を安保理決議違反として非難することが明記された。松本大臣から,我が国としては,拉致,核,ミサイルといった北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的な解決に向けて,引き続き粘り強く取り組んでいく意向であるとして各国の理解と支持を求めるとともに,国際社会が一致して,引き続き関連安保理決議を着実に実施することが必要であることを指摘した。「対話のための対話」は不適切であり,北朝鮮が南北対話で非核化を含め前向きな姿勢を示し,自らのこれまでの約束を真剣に実施する意思を具体的行動で示すことが必要であるとも指摘した。
- (2)また,昨年G8は,核軍縮・不拡散分野で5月のNPT運用検討会議に向けた機運を高め,「行動計画」を採択することができたと指摘し,引き続きすべての核兵器国による透明性の向上と世界的な核軍縮の前進を図ることが重要である,日本は,非核兵器国の有志のグループを地域横断的に形成し,核リスクの削減に向けた現実的な提案を行うことを目指すなどの努力を続けている等と述べた。
- (3)イランについては,対話の機運が低下しているように見えることを心配しているとしつつ,「対話」と「圧力」のデュアル・トラック・アプローチは依然有効であり,日本はEU3+3の努力を支持していく考えである旨述べた。
5.その他,アフガニスタン,アフリカ(コートジボワール,スーダン,ソマリア),国際テロについても議論がなされた。
- (1)各国から,コートジボワールにおいて前大統領が権力委譲を拒み,治安が悪化している現状を憂慮する発言が相次いだ。また,スーダンについては,住民投票がおおむね平和裡に実施されたことを歓迎しつつ,不断の努力を続けていく必要があるとの意見が出された。またソマリアについては,海賊問題における国際社会の協力を評価しつつ,海賊問題の根本的な解決には海上における行動のみならずソマリア自体の体制強化や開発を長期的に支える取り組みが重要である旨指摘する国も多くあった。
- (2)松本大臣からは,本年1月の副大臣としてのAU執行理事会出席を紹介しつつ,アフリカの開発,平和の定着,グッドガバナンスの推進などの日本のTICADプロセスの取組を,資金的協力のみならず人材育成にも力を入れているなどの例を挙げつつ紹介した。また,我が国は海賊対策として関連の信託基金の拠出を通じてソマリア周辺国の司法能力強化に協力していること,航行の安全確保には海上のみならずソマリアの陸上に存在する問題の根源に取り組む必要があることなどの立場を述べた。
- (3)アフガニスタンについては,本年末のボン国際会議は,アフガニスタンの平和と安定の実現に向けて重要な節目であるとされ,治安分野とともに,和解・再統合を含む政治プロセスの進展が,今年のアフガニスタン情勢の鍵となるとの認識で一致した。このプロセスをアフガニスタン主導で進めつつ,G8含む国際社会がアフガニスタンの努力を支援していく必要があるとの意見が多く示された。