平成22年3月30日
3月29日及び30日、カナダ・ガティノーにおいて開催されたG8外相会合の概要は以下の通り(G8各国より外相が出席。我が国より岡田外務大臣が出席)。30日のG8外相による共同記者会見において、議長声明が発出されたほか、2本の独立声明が発出された。
(発出文書)
・アフガニスタンに関するG8外相声明(英文・和文)
・核不拡散・軍縮及び原子力の平和的利用に関するG8外相声明(英文・和文)
29日にモスクワ市の地下鉄で発生した爆発事案に関し、会合開始に先立ち独立した声明を発出するとともに(和文・英文)、会合の冒頭、ラブロフ露外相に対し犠牲になられた方々に対するお悔やみが伝えられた。各国は、如何なるテロ行為も断じて許されるものではなく、G8として引き続き協力し、テロ対策に取り組んでいくことで意見が一致した。カナダは、テロ対策をムスコカ・サミットで取り上げることも検討したいとしている。
(1)アフガニスタン・パキスタン
アフガニスタンについては、1月のロンドン会議の結果を踏まえ、カブール会議に向けてアフガニスタン政府が具体的な行動を実行することの重要性が確認されたとともに、G8として、より効果的な協調のあり方の検討も含め、引き続き支援を行っていくことで一致した。岡田大臣より、アフガニスタン政府が速やかに作業を進める必要がある旨強調するとともに、元タリバーン兵士の再統合は重要な課題であり、再統合基金の速やかな設立が望まれ、我が国としても積極的に取り組んでいる旨説明した。アフガニスタンにおける女性の地位向上や、G8をはじめとする先進国に対するイメージ回復の重要性についても議論が行われた。さらに、議長国カナダの主導で、アフガニスタンの安定のために不可欠なパキスタンとの国境地域の経済発展・貿易促進を目標とする「アフガニスタン・パキスタン国境地域繁栄イニシアティブ」が発表された。
(2)イエメン・ソマリア・サヘル地域
各国より、イエメンやソマリアは個別に異なる問題を抱えているが、アル・カーイダの存在やテロ、海賊などの共通の課題に直面しており、国際社会による支援の効率的、効果的な実施の観点から、引き続きG8が協調していくべきであるとの認識で一致した。また、GCC諸国、アフリカ連合(AU)、アラブ連盟など、地域の関与の重要性についても指摘があった。
(1)NPT運用検討会議
カバクテュランNPT運用検討会議議長より、2010年NPT運用検討会議の成功に向けて取り組むべき課題、G8に期待することについて説明があった。岡田大臣を含む各国より、難しい課題が多いが議長の調整力に期待する、今回のG8外相声明も核軍縮、原子力の平和的利用、中東決議等で途上国に配慮した内容となっており、各国との調整に是非活用していただきたい旨述べた。
岡田大臣より、「核兵器のない世界」の実現に向けてG8の強い決意を示すべきである旨、核兵器の役割の低減の重要性をG8の大きな目標として掲げるべきである旨主張した。各国は、核軍縮の重要性については認識を共有し、米露によるSTART後継条約交渉の妥結を祝福した。核兵器の役割については、各国の安全保障政策の観点から様々な議論が行われた。NPTの三本柱(核不拡散、軍縮、原子力の平和的利用)のそれぞれで前進を図り、NPT運用検討会議の成功に向けて取り組んでいくことで意見が一致した。
独立のG8外相声明は、核軍縮、不拡散、原子力の平和的利用、中東決議などの論点について、NPT運用検討会議を念頭に明確なメッセージを発出した。(核軍縮については、実践的措置に向けた努力を倍加するとの表現が盛り込まれた。)
(2)イラン
各国は、「対話」と「圧力」のデュアル・トラックを通じて関与を続けてきたが、国際社会からの建設的な提案にイランは前向きな反応を示していないとして、圧力トラックを具体化するべきとの見解が支配的であった。その一方、圧力は外交的関与の一環であり、イランが適切に対応すれば制裁は回避しうるとして、イランとの対話の窓を引き続き開けておくべきとの認識も共有された。各国とも、国際社会が一致して毅然とした対応を行うことが重要であり、ムスコカ・サミットで取り上げる可能性も念頭に、引き続きG8で緊密に連携していくことを確認した。
(3)北朝鮮
岡田大臣が議論をリードし、六者会合当事者の間で会合再開に向けた取組を継続していること、六者会合の再開は一定の進展にはなり得るが、それ自体が目的ではないこと、安保理決議に明確に規定されているとおり、あくまで核放棄を求め続けるべきであることを強調した。また、北朝鮮に対して核不拡散に重点を置いたアプローチをとることは、北朝鮮の核保有を受け入れたかのような印象を与えかねず、不適切である点を併せて指摘した。拉致問題を含めた北朝鮮における人権状況に関する懸念も含めて、各国ともこれらの認識を共有した。
(4)グローバル・パートナーシップ
各国とも、核軍縮・不拡散分野においてグローバル・パートナーシップが果たしてきた役割を積極的に評価。2012年以降のマンデート延長を探求するためには、対象国の拡大やニーズについて、詳細な分析が今後必要であるとの意見が多数を占めた。岡田大臣より、ロシアに対する支援は歴史的役割を終えつつあるが、ニーズ調査を行った上でマンデートの延長を検討することは我が国として支持しうる旨述べた。
(1)ハイチ
各国とも、現在のハイチは、人道支援が必要な時期から復興開発段階へと移行しつつあり、ハイチ自身がオーナーシップを発揮しながら、国際社会も腰を据えて中長期的な支援に尽力すべきとの意見で一致した。岡田大臣より、先週のハイチ訪問も踏まえ、地震発生前の状態に復旧するだけでは足りず、ハイチの将来のために、経済、産業に加えて、教育や医療などの基礎生活分野への支援の重要性を指摘した。ハイチのような大規模災害発生時の際の初動対応において、G8として連携を強化する余地があるとの指摘がなされた。
(2)ラテンアメリカ(犯罪/麻薬)
各国とも、ラテンアメリカ諸国で麻薬等の不正取引が増え、犯罪組織と絡んで治安の悪化がみられることや、ラテンアメリカから西アフリカを経て欧州へとつながる新たな密輸ルートが開拓されつつある状況について懸念を共有。また、麻薬取引がテロ・犯罪組織など不法集団の資金源となっていることに対する懸念も表明された。地域組織との連携や、治安機関同士の協力を通じて効果的な対策に取り組むためにG8として協調する必要があることで一致した。
(3)中東
各国より、当事者同士が直接話し合うことが極めて重要であり、間接交渉の開始が直接交渉へと発展することに対し強い期待感が表明された。また、イスラエル側による新たな入植地住宅の建設に対する懸念も共有。カルテットが、3月19日の共同声明において、アラブ・パレスチナ側にも真摯な努力を呼びかけていることについて、各国より支持が表明された。