11月5日(月曜日)午後,国連大学ウ・タント・ホールにて,シンポジウム「国連と日本のPKO20年 ~新たな課題への対応」が開催されました(外務省及び国連広報センターの共催)。このシンポジウムは,本年が,我が国が国連平和維持活動(PKO)への協力を開始してから20周年であり,また,国連においてもPKO局が設立されてから20周年にあたる節目の年であることを踏まえ,この間に,PKOがどのような役割を果たしてきたのか,激しく変容する国際情勢の中で,どのような課題が新たに生じており,国連はこれにどのように対応しようとしているのか,また日本はどのような貢献が可能なのか,等の論点について議論することを目的として開催されました。
冒頭,玄葉外務大臣より開会の挨拶を行いました。それに続き,第一部では「PKOの最近20年 ~国連の視点から」と題してラドスース国連PKO担当事務次長の基調講演が,第二部では「日本のPKO参加20年の歩み」についての報告が行われ,これらを踏まえて第三部では内外の著名な実務家及び識者の参加を得て,「PKOの今後の課題」についてのパネル・ディスカッションが行われました。シンポジウムには,政府関係者,在京外交団,NGO,報道関係者,学生等300名以上の聴衆が参加し,活発な議論が行われました。
シンポジウムの概要は以下のとおりです。
玄葉外務大臣による冒頭挨拶(概要)
- 国連のPKOが,国家間の停戦監視に加えて紛争後の国づくり支援へと役割を拡大していく中,我が国はこれまで合計13の国連PKOに7,800人にのぼる自衛官,警察官,文民の選挙監視要員等を派遣。本年9月現在の派遣要員数では,G8諸国中でも伊,仏に次いで第3位。質的にも,ゴラン高原での活動,ハイチでの復興・復旧支援や,南スーダンでの国づくりを支える我が国自衛隊部隊の活動は,プロフェッショナリズムに満ち,礼儀正しく,規律が高いとされている。日本国内においても,国連PKOへの我が国の協力に対する理解と支持は充分得られてきている。
- 我が国は,国連本部におけるPKOの政策議論にも積極的に貢献。国連総会の下にあるPKO特別委員会の副議長を務めるなど,国連PKOの在り方を巡る議論を積極的に主導。2005年と06年,2009年と10年は,安保理のPKO作業部会の議長を務めた。また財政面では第2位の財政貢献国。各PKOミッションの運用や在り方に大きな責任を持ち,PKOの今後についての議論にもより一層貢献をしていく。
- 一方,PKOの規模の拡大,任務の複雑化,活動の長期化は,国連にとっても,また国連加盟国にとっても,克服すべき大きな課題。限られたリソースの中でいかに効率的,且つ効果的なPKOを行うかというのは,まさに様々な議論が必要。また,PKOを実施するのには,高い能力を持った優秀な要員が求められており,日本としても,そのような分野で一層貢献をしなければならない。
(挨拶全文を参照。)
第一部 基調講演「PKOの最近20年 ~国連の視点から」
ラドスース国連事務次長による基調講演
~PKOの変遷~
- PKOは紛争の性質の変化に応じて発展してきた。PKOは,以前よりも多面的なものとなり,統合的な指揮の下に文民,軍事要員,警察要員が共に活動するものとなっている他,任務も複雑化している。現在,PKO局は,16のミッションを監督し,116の国が合計97,000人以上の軍事要員や警察要員を派遣。日本からは527名の要員が,ハイチ,南スーダン及びゴラン高原で活動し,南スーダンでは日本の施設部隊が重要な役割を果たしている。
~文民保護任務の課題~
- 1990年代のルワンダ,ボスニアでのPKOの経験は,文民保護の重要性についての教訓を与えた。文民保護の任務が与えられた最初のPKOはシエラレオネのミッションであり,今日,8つのミッションが文民保護の任務を有している。MONUSCO,UNMISS及びUNAMIDでは文民保護が主要な任務と位置づけられている。また,PKOは,文民保護のために武力の行使が授権されている点で特別なものでもある。他方で,文民保護は,多くの期待と課題ももたらした。PKOは,公平・同意・自衛の原則に基づいているが,これらの原則を変えるような様々な状況に直面している。PKOは反乱軍に対抗して政府を支援し,また,PKO受入国の政府が文民を害する主体となることもあった。このような事態への対応が課題の一つであるが,他方で,公平・同意・自衛の原則は今後もPKOにとり引き続き重要。
~PKOの即応態勢~
- PKOは起こり得る幅広い危機に常に対応できなければならず,安保理からの要請に速やかに展開できるように備えておく必要がある。効果的な対応のためには,加盟国,事務局,受入国,地域の全ての当事者のコミットメントが必要。安保理の任務を遂行する能力のある国はリソースを提供すべきであり,バードン・シェアリングが不可欠。この点で,日本は多くを提供することが可能であり,引き続き国連PKOに参加することを期待している。日本は,自衛隊派遣を通じての参加や他の要員派遣国の能力向上支援を行うことも可能。
~派遣国間の不均衡の問題~
- 国連PKO派遣国間に不均衡が存在するとの問題がある。PKOへの派遣は,南アジアやアフリカといった南側が中心であるが,このような加盟国間の不均衡は長期的には持続可能なものではない。資金,能力構築等を通じた日本による国際社会の平和と安全への貢献を軽視するつもりはないし,アフガニスタンでは,日本は国連で第2位のドナー国であり,2011年末まで日本は33億ドルの支援を実施している。また,日本はPKO予算に対する第二位の財政貢献国でもあり,日本政府による資金面の貢献は引き続き重要である。他方で,幅広い加盟国によるPKOの参加は重要であり,日本による国連PKOへの軍事・警察要員の派遣の強化を期待。日本の参加は,PKOの正統性と真のパートナーシップを高めるのみならず,専門分野における危機的なギャップを埋めること等を可能にすると考える。
~国連PKOの改革~
- PKOは,90年代のスレブレニツァ,ルワンダの失敗もあったが,これまでに大きな進化・改善を遂げている。2000年のブラヒミ報告,PKO局の改革,2009年に立ち上げられたニュー・ホライズン・イニシアチブを始めとする改革により,部隊管理,要員の安全,複雑かつ多面的な任務遂行の支援,PKOの任務のためのガイダンスや訓練等を改善してきた。能力志向型のアプローチを進めており,部隊間の相互運用性を高め,ミッションごとの特定のシナリオ・ベースの訓練を実施している。無人飛行機のシステム等の新たな技術にも注目。さらに,グローバル・フィールド支援戦略(GFSS)を通じて,現場のニーズに柔軟かつ迅速に対応できるよう,より効率的なフィールド支援を与えようとしている。日本は,2009年から11年の間の安保理PKO作業部会の議長及び2007年から09年の間の平和構築委員会の議長を務め,更に現在も同委員会の教訓作業部会の議長を務める等,国連の平和と安全の改革努力を推進してきた。今後も,改革に向けた日本の継続的な支援に期待している。
~統合型の国連モデル~
- 国連は,ポスト紛争国のニーズに対応するために複雑かつ統合的な展開をしてきたとの特別な経験を有している。統合型の国連モデルは,文民,警察及び軍事能力をつなぎ,それらを開発支援と組み合わせることのできる唯一の方途。また,国連PKOのパフォーマンスやアカウンタビリティを重視しており,そのために明確な基準作り,要員の作戦能力の評価等が必要。
神余隆博関西学院大学副学長によるコメント
- ブラヒミ報告によれば,国連がPeace support operationとして実行できるのは,PKO,平和構築,紛争の平和的解決(Peacemaking)という3つであり,これらの手段の間のバランス及びデマケ-ションという問題がある。紛争の前段階や紛争発生時の国連の対応の中には,PKOの予防的展開や和平合意達成後の早い段階でのPKO派遣等,PeacemakingとPKOが共存するような段階がある。この観点から,特別政治ミッション(SPM)とPKOの棲み分けがどうなっているかという問題がある。SPMは国連政務局が担当しているが,SPMの規模が拡大し,任務も多様化。PKOのような任務を含むものもあり,またUNAMAのようにPKO局が担当するSPMもある。SPMかPKOかについて,政務局とPKO局の間の戦略的な調整が行われているのか。また,国連は平和構築等の関連で統合ミッション(integrated mission)を目指しているが,平和構築や予防外交が統合された形で運用されていく必要がある。
- シリアについては,ロシア,中国の三度の拒否権行使のため安保理は機能していない。その状況下で設立されたUNSMISは,治安の悪化を受け8月に終了した。UNSMISのケースはブラヒミ報告やキャップストーン・ドクトリンで提唱されている「守るべき平和(a peace to keep)があることが前提である」とのPKOの原則に反することとならないか。シリアのような脆弱な停戦合意の下ではSPMの方がふさわしいとの考え方もある。安保理が機能しない中,国連加盟国は,緊急特別総会を開き「平和のための結集」決議によって対応することも考えられる。
- 文民保護に関しては,どの程度のことをPKOが行うことが想定されているのか。「保護する責任」のようなことまでが想定されているのか。ミッションごとのガイドラインは存在するのか。この任務をPKOが行うためには,安保理の全面的な支援と「十分な資金や手段を伴う明確で達成可能なマンデート」が必要。PKO予算に限界があり,軍事要員や文民要員が足りず,十分な訓練も受けていない状況でこの任務を行うことが可能かということが問題の一つになっている。
第二部 報告「日本のPKO参加20年の歩み」
髙橋礼一郎内閣府国際平和協力本部事務局長による報告
- 湾岸戦争後,日本の貢献のあり方を問われると同時に,当時の日本の強い経済力を背景にして人的な面で貢献すべきという高揚した雰囲気があった。こうした中,憲法9条の解釈,冷戦時代に積み重ねた国会答弁等との整合性に関する複雑な政治的議論を重ね,PKO法が誕生。
- カンボジアでは2名の殉職者を出すという非常に痛ましい事件があったが,我が国は,これまでに伝統的なPKOや多機能型PKOの双方で着実な実績を積み重ねており,その活動は国連や他国から高い評価を受けている。国内でも,2011年の内閣府世論調査では,国民の約8割が我が国のPKO参加を支持している。
- ODAやNGOとの連携を重視しており,例えば,ハイチにおける活動では自衛隊が瓦礫除去を行った後,ODAで住宅建設を行う,あるいはNGO運営の盲学校の施設解体や瓦礫の除去を自衛隊が請け負うなどの連携プレーが多数見られた。また,「絆プロジェクト」と称して,ハイチの人々の能力向上支援,施設機材・重機の操作などの教育を自衛隊が直接実施。
- 国連PKOの変遷に伴い,日本のPKOへの協力を現実に即したものにするためには,法制側面,能力面で様々な課題がある。我が国の国内法は国連標準よりも制約が多く,例えば,武器使用権限について,現行法上,宿営地の共同防衛や駆け付け警護は実施不可能である。また,現行のPKO法で規定されている任務は限定的であり,例えば,国連PKOの主要な任務の一つである国軍の創設支援はPKO法に列挙されておらず,我が国は実施することができない。
- 能力面については,例えばアフガニスタン等への日本の開発,キャパビル支援の経験は,PKOでの国造り型ミッションへも活用できると考えられ,そのような人材を開発し,いつでも派遣できるようリザーブしておくことが重要。
- このような課題に対応するためには,法改正も視野に入れた検討が必要。また,政治の関与と強いリーダーシップが必要。
折木良一防衛大臣補佐官によるコメント
- 自衛隊の海外派遣に関する活動は,安定した安全保障環境の構築に向けた取組として防衛大綱で策定された。2010年の新しい防衛大綱では「グローバルな安全保障の改善」を防衛力の1つの役割として規定し,海外活動を実施。そのうち,UNDOFの活動からは16年を経て大きな教訓を得ることができ,人材育成の面でも大きな成果があった。
- 自分が統幕長として関与したハイチでは事前に国際緊急援助隊を派遣し,現地で情報収集を行い,如何にアプローチしていくかを調整し,また米国の多大な支援も得て,2週間程度でスムーズに展開できた。他方で,南スーダンでは今年1月から派遣を開始したが,アフリカ中央部での活動は初めてであり,輸送の問題等で大きな問題を抱えていた。
- 待機態勢は,07年から5つの各方面隊持ち回りで常時派遣できる態勢を維持(航空・海上自衛隊でも同様)。実際に派遣されるか否かは別として8~9種類の予防注射をしながら要員は常に待機しており,09年には国連の待機制度に登録。一昨年からは統合幕僚学校に国際協力センターを設置し,派遣要員に対する基礎的な講習,国連の派遣部隊の教育,運用の企画立案などの教育も実施。ただし,準備,派遣,支援する部隊を考えると派遣部隊の3倍の規模は必要。
- 92年と現在で,PKOに関する国民の評価で大きな乖離がある。カンボジア派遣の際は,なぜ派遣するのかという大きな疑問を持ちながら国民に送り出された一方で,10年後にはイラク派遣から戻ってきた要員を国民は温かく迎え入れてくれた。20年にわたるPKO活動の中で1人の死傷者を出さずにやってきたということも国民にとっては重要な要素と理解。
- 現場の活動指揮や規律の質は当然のこととして,海外勤務により要員は日本を意識し,日本国民としての目線で活動しているのが高い評価を得ている一番の理由。また,派遣国同士の信頼醸成も大きな要素であり,ハイチでは韓国軍と協力して支援にあたったが,現場レベルでの日韓の理解深化の場にもなり,大きな意義があった。
- 政策・法制面の問題は外務省・防衛省も議論を重ねており,高橋局長の問題意識を完全に共有。同じ駐屯地にいて,最悪のケースで外国部隊の防護できないというのは常識的に問題であり,信頼醸成の観点からも政治的な判断を期待。
第三部 パネル・ディスカッション 「PKOの今後の課題」
第一部及び第二部の議論を踏まえ,ラドスース国連事務次長のほか,R.ゴーワン米NY大学国際協力センター員,北岡伸一政策研究大学院大学教授,田邉揮司良防衛大学校幹事,西田恒夫国連代表部常駐代表がパネリストとして参加し,星野俊也大阪大学教授をモデレーターとして,PKOが直面する課題等の論点について主として以下のような意見が述べられました(順不同)。
【PKOが直面する課題とは】
~危険な地域への派遣,出口戦略の必要性,派遣国の南北格差~
- PKOが数々の困難にも拘わらず持続していることは評価できる。世界財政危機でも,シリア等一部の問題に関する安保理内での政治的分裂にも拘わらず,他のPKOについては常任理事国間でも協力が維持されている。運用上も,ハイチ大地震の壊滅的打撃からも回復し,コートジボワールでの政治混乱においても選挙の勝者と文民を守って役割を果たし,コンゴ(民)でも1年置きに危機が起きても文民保護任務を継続している。勿論,PKOは今後も問題に直面し続ける。中東のシリアに今後派遣される可能性のある新たなPKOも非常に危険な状況に送られるであろうし,レバノンでは恒常的に攻撃にさらされている。中東地域の他の国の政治的混乱に国連がPKOや政治ミッションで対応することを求められることもあるかもしれないが,いずれも危険は高い。
- PKOは問題の永続的解決策であってはならず,リベリア,コンゴ(民),コートジボワール,ダルフール等,アフリカの複数の大規模ミッションは,いずれは縮小・終了の方向に向かわなければならない。
- PKO要員中,OECD諸国は5%に過ぎず,95%は南半球の開発途上国の要員であり,負担が衡平に分担されているとは言えないので,いかなるものであれ,日本,ドイツや北欧諸国といった国々からの更なる貢献によるより均衡のとれた分担はPKOのパートナーシップを強化するだろう。
【PKOの活用の在り方とは】
~地域機関との協力,SPMとPKOの使い分け~
- PKOの諸課題への対策のひとつとして地域機関との協力があげられる。アフリカ連合(AU)とは,ダルフールで合同ミッションを設置し機能したが,今後は選好されないだろう。AUソマリア・ミッション(AMISOM)に対する支援は国連,EU等で行っているが,AUの軍と国連の政治支援が分かれている問題は残っている。マリ情勢については,西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が主導で軍を派遣してマリ国軍と協力し,他の国が有志国として協力するモデルが立案されている。コンゴ(民)東部についても大湖地域国際会議の「国際中立軍」設立の立案を国連が支援している。アフリカ以外の地域で,ASEAN,アラブ連盟,米州機構,中央アジアの上海協力機構等と協力していけるかも今後の検討事項となろう。
- SPMがPKOの代替策となり得るとの見方について,国際情勢にはカダフィ政権後のリビアのように,PKOに適さない情勢もあれば,選挙後のコートジボワールのように,現場に部隊がいるPKOでなければ解決にならない問題もある。SPMとPKOは同じ解決のための選択肢というより異なる種類のツールであり,国連(事務総長及び安保理)が適切な手段を選択出来る柔軟性を保持することが重要である。
【日本のPKOへの貢献の在り方とは】
~ 日本が比較優位を持つ分野をどのように活用するべきか~
- PKOの数量的拡大とともに,対象が国家間紛争から国内紛争に変わるにつれて,PKOの任務も変わり,日本が比較優位をもって参加出来る分野も飛躍的に増え,今後も増え続けていくと思われる。ハイチや南スーダン等,自衛隊の施設部隊を中心とする日本のこれまでの参加は高い評価を受けており,先進国内での貢献度も充分比肩し得るものとして自負出来る。質の高い貢献が重要であり,幅広く文民部門の専門的能力を含めたオールジャパンで資源を投入し,日本のもてる力を最大限に活かすべき。一方でPKOの原点は安全の確保であり,この分野でも日本にどのような貢献が出来るのか,具体的な議論を行う時に来ている。
- 日本が憲法上の制約を有していることは承知しており,それは尊重する。日本のPKO参加について,国連は大規模な歩兵部隊を求めているわけではない。それは他国から得られる。日本には高度な技術能力の提供を期待したい。医療,野戦病院,幕僚,情報将校,ヘリコプター等である。また,女性警察官の提供が期待される。
- 国連憲章下の国連の役割は,平和・安全,開発,人権の3つである。このうちPKOは本来,平和・安全に関する活動だが,最近は開発や人権も,平和構築や女性と紛争といった形でPKOの任務に含まれ,PKOが国連憲章上のその他の活動もやるようになっている。こうした分野について日本はこれまでODAで取り組んできた一方,PKOについては日本独特の形で参加してきたが,国連PKOの分野が拡大する中で,この日本の2本柱の取組の間にギャップが生まれてきている。その間隙を埋める活動は,PKO法の改正等により自衛隊が行うのか,ODAの枠組みを変えるのか,或いは個人が出て行く形にするのか等,考える必要がある。日本が比較優位を持つ分野で有効な貢献を行い,意味のある関連性を維持したステークホルダーとしての位置を保持することが重要。
~憲法9条に係る問題~
- 日本は憲法9条が制約なのではなく,憲法9条の特異な解釈が制約になっている。憲法9条が禁止しているのは日本と特定国間の武力紛争で,国連PKO枠内で必要な武器使用は含まれないというのが政治学者の共通見解だが,日本政府はそのような解釈をとっていない。かつて日本が支援したルワンダやカンボジアは今南スーダンで日本の自衛隊を守ってくれているが,日本もPKOに必要最小限の慎重な武器使用は可能であるべき。
~日本のPKOの「進化」と「発信」~
- 日本のPKO参加の課題は「進化」と「発信」の二点。「進化」については,カンボジアから10年後に東ティモールのPKOに参加した際,PKO任務の中でいかに国づくり支援を行うか模索し,自衛隊の施設・機材を現地政府に譲渡しそれを活用する能力提供をJICAに委ねる等行った。これが進化して,ハイチでも機材譲与の準備が進んでいるほか,南スーダンでは現地支援調整事務所を置いて,NGOやODAとの連携などオールジャパンの取組を行っているが,これは日本のPKO参加の発展型といえる。「発信」については,様々な自衛隊のノウハウを,PKO参加を通じて国際的にも発信していくことが,国際的評価にも繋がる。例えば国内での小さな災害派遣の積み重ねが国際貢献における兵站支援に繋がることもある。一方で,長期の国際派遣に対する隊員や家族のストレスケア等の経験が,3.11時の国内での自衛隊の働きぶりや活動に対する国民の信頼に繋がる等の作用もあった。
~日本人の事務総長特別代表,ミッション司令官を出すべきではないのか~
- 日本人の事務総長特別代表やミッション司令官を輩出すべき。そういう人がいるかどうかで日本国民の関心度も大いに異なる。また日本国内向けの関連情報も少なすぎる。日本の参加決定に要する時間が短くなったことは事実であり,中央即応集団等は良い。ソマリア沖海賊対策もPKOと精神は同じであり,他国民も守れるものであり個別的自衛権か集団的自衛権かといった問題を超えている。
なお,シンポジウムの様子は以下のサイトで動画でご覧になれます。