経済外交
2013 G8ロック・アーン・サミット 首脳コミュニケ(骨子)
【世界経済】
成長及び雇用の促進は,我々の最優先課題。米国,欧州,日本等の政策努力により下方リスクは減少したが,世界経済の成長見通しは引き続き弱い。日本の成長は短期の財政刺激策,大胆な金融政策,そして民間投資を推進する成長戦略に支えられている。信頼できる中期の財政計画も必要。回復強化のため,我々は以下に合意。
- 持続可能な回復をはぐくみ,世界経済の強じん性を取り戻すには確固たる行動が必要。先進国は,信頼できる財政計画を実施しつつ,内需支持策と構造改革のバランスをとる必要あり。
- 金融政策は,各中央銀行それぞれの権限に従って,引き続き回復を支え,国内の物価安定に向けられるべき。
- 財政政策調整は,経済状況に応じて短期的には機動的となることを可能とすべき。財政健全化のペースは,国内経済に応じ差異があるべき。
- 構造改革は持続可能な成長,長期的な生活水準の改善,競争力向上等の鍵。長期失業者及び若年層の質の高い雇用創出のため,緊急かつ具体的な措置が必要。
【貿易】
- 世界の経済成長の主要な原動力。保護主義を抑止し,野心的な貿易協定を締結することにより,国内外での貿易障壁を取り除く。
- EU-米国貿易協定の交渉開始,環太平洋パートナーシップ(TPP)の合意に向けた大きな進展,及び日EU経済連携協定の交渉開始を特に歓迎。可能な限り速やかにこれらすべての協定の完結を目指す。
- 多角的貿易体制を強化するとともに,国境を越える物品に関する手続の簡素化,迅速化に向けて官僚主義を排するための12月のWTOにおける合意を確保することにコミット。
【アフリカ貿易とインフラ】
- アフリカには,インフラ改善,貿易円滑化,貿易障壁の削減等を通じた包摂的で強じんな成長機会あり。これらを進める第5回アフリカ開発会議(TICADV)の貢献を歓迎。
- 途上国の貿易関連のインフラ事業に投資を促すため,民間部門や国際金融機関と連携し,G8が更なる措置を探求し,特定。
【租税】
- 新たな国際的基準として税務当局間における自動的な情報交換の構築にコミットし,政府が脱税者を見つけ処罰することを容易にする多国間モデルを早急に策定するため経済協力開発機構(OECD)と共に取り組む。
- 租税回避については,我々は,税源浸食と利益移転に対処するOECDの取組を支持する。我々は,多国籍企業が世界のどこで利益を生み,税を支払っているか税務当局へ報告するための共通のひな型作りに取り組む。
【法人等の透明性】
- 誰が実際に企業及び信託を所有し,また,利益を得ているかに関する情報を徴税当局や法執行機関が利用可能にするため国別行動計画を発表することに合意する。
【採取】
- 相当規模の国内採取産業を有する国や大規模な多国籍採取企業の母国は,採取透明性の世界基準を引き上げ,世界共通の報告基準に向けて行動。このような基準の下,企業は採取に関する支出の報告を義務付けられ,G8各国は情報開示遵守を確保。
- 採取部門の透明性・ガバナンス向上を目指すパートナーシップを立ち上げ。
- 露と日本は,EITIの目標を支持すると共に,国内企業によるEITI支持を奨励。
【土地】
- 土地の透明性の更なる促進のための多国間の努力を歓迎。責任ある農業投資原則に関する協議の立ち上げを歓迎。自発的行動計画(VG)の実施を支持。
- 土地取引透明性の向上を目指すパートナーシップを立ち上げ。日・伊はFAO及び世銀を通じて新規支援プログラムを提供。
【オープンデータ】
- オープンデータ憲章に合意。同憲章実施のための国別行動計画を本年末までに策定。債権国報告システム(CRS)及び国際援助透明性イニシアティブ(IATI)の双方を含む「援助透明性に関する釜山共通基準」を2015年までに実施。
【説明責任】
- 包括的な2013年ロック・アーン説明責任報告書を歓迎。
【気候変動】
- 2015年に仏が議長国を務める用意がある気候変動枠組条約締約国会議(COP)の成功裏の合意に向けた国連事務総長の努力を歓迎。
【テロ対策】
- あらゆる形態のテロを非難し,テロのリスクを減少させるため協働する。
- 特に状況が深刻な北アフリカ諸国に関し,協調した対処が必要。以下の5つの行動優先分野を特定し,それら諸国と緊密に連携しつつ取組を進める。(1)治安と法の支配の能力構築,(2)不法取引犯罪への対処及び国境保安の強化,(3)暴力的過激主義への対抗,(4)多国籍企業の脆弱性の低減,(5)不安定化のより広い要因への対処。
【身代金目的の誘拐】
- 国連安保理決議1904に従い,テロリストに対する身代金の支払を全面的に拒否。
- 事態対処国への知識の共有等を含め,事態が発生した際の国家間の協力を強化。
- 国際社会の認識を深めるため,国連における新たなメカニズムに関する議論を求め,また,更なる安保理決議の検討を提案。
【外交政策】
シリア:シリアでの流血・人命損失を止めるための協働及び政治的手段を通じた平和達成のためのシリア国民への支援を決意。シリアでの人道的悲劇を深刻に懸念。難民受入れに関する隣国の重要な人道上の役割を認識。人道ニーズを踏まえ,格段の貢献を行う決意であり,シリア及び近隣国における人道目的のための約15億米ドルの追加的貢献を確認。他の国・機関にも同様の貢献を要請。危機に対する政治的な解決にコミット。移行政体に関する合意等を含むジュネーブ・コミュニケを実施するためのジュネーブ会議の早期開催を強く支持。会議における両者が,真剣かつ建設的に関与すべき。シリアにおいて増大するテロと過激派の脅威,及び紛争が一層宗派的な性質を帯びてきていることを深く懸念し,テロ打倒への会議参加者のコミットを要請。シリアでの化学兵器のいかなる使用も非難し,国連調査団のアクセスを可能とすることを呼びかけ。シリアでの人権侵害を最も強い言葉で非難。
リビア:リビアの新政府による進展を歓迎し,進展の継続を奨励。より安定し,民主的な体制への移行確保のため,国際社会は,継続的に関与すべき。すべてのリビア市民に対し,和解と新憲法制定の政治的なプロセスに関与することを奨励。
中東和平:公平,永続的かつ包括的な中東和平に早急に取り組む。二国家解決を支持。信頼構築に向けた措置,前提条件のない直接交渉再開に取り組むことを要請。国際社会がパレスチナ経済の再活性化のため最大限の支援を行うよう奨励。
アフガニスタン:アフガニスタン治安部隊が全土で治安を主導することを認識。アフガニスタン政府が,統治機構強化,腐敗・テロ・対策のコミットメントを実施できるよう引き続き支援。アフガニスタン政府が違法な麻薬製造・取引に効果的に対処する必要性を強調。大統領選・県議会選は「東京フレームワーク」の下,公正であるべき。アフガニスタン主導の和解プロセスを支持。G8は,権限移譲の年以降もコミット。
不拡散:G8の優先事項。大量破壊兵器の拡散は国際の平和と安全への主要な脅威。
イラン:イラン核計画は,深刻な懸念。国連安保理決議の度重なる違反を容認することはなく,国連制裁の完全な履行を国際社会に要請。イランが,国際原子力機関(IAEA)と完全に協力し,イランの核問題の外交的解決を見出すためEU3+3と関与することは不可欠かつ喫緊。イランに対し,人権に関する義務の完全な尊重を要請。ローハニ師の大統領選出に留意し,この機会を国際社会との相違の解消のために生かすことを要請。
北朝鮮:北朝鮮の核・弾道ミサイル計画を引き続き深く懸念。北朝鮮は,完全,検証可能かつ不可逆的に核・弾道ミサイル計画を放棄することにより,その国際的な義務を果たさなければならない。北朝鮮は,挑発行為を自制し,信頼性のある真正な多国間協議に建設的に関与し,関連する国連安保理決議及び六者会合共同声明の下での義務を遵守しなければならない。北朝鮮が義務を果たすことを拒否する中,北朝鮮に対する国連制裁の完全な実施の確保を国際社会に呼びかけ。北朝鮮に対し,拉致問題及び北朝鮮に戻された難民の取扱いを含む人権侵害に関する懸念に取り組むよう要請。
性的暴力防止: G8外相の「紛争下の性的暴力防止に関する宣言」を歓迎。