外交政策
第24回国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会(概要)
平成25年11月21日

1 会議概要
- 11月19及び20日,第24回国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会がパリで開催され,我が国から赤羽経済産業副大臣及び兒玉OECD代表部大使が出席した。
- 今次理事会では,トルコのユルドゥズ・エネルギー・天然資源大臣が議長を務め,IEA加盟国28ヵ国に加え,EU,IEA加盟を目指しているチリ及びエストニアの2ヵ国と,前回に続き主要な非加盟国(パートナー国)である中国,インド,ロシア,ブラジル,インドネシア,南アフリカ及びメキシコの7ヵ国のハイレベルが出席した。
- また,エネルギービジネス評議会に属する世界のエネルギー関連企業のCEO級も多数出席した。
- なお,エストニア国内の最終承認手続を残すものの,参加閣僚は同国のIEA加盟を歓迎した。
2 テーマ及び背景
- テーマ:「Global Synergy for Tomorrow’s Energy (明日のエネルギーのためのグローバル・シナジー)」。
- 今次会合は,世界のエネルギー地図が大きな構造変化に直面し,気候変動の影響の緩和が引き続き大きな課題であり,世界共通の経済的・環境的課題に対応するためには高いレベルでの国際的エネルギー協力が必要不可欠となっている状況の下で開催され,IEA加盟国,パートナー国,ビジネス界の相互の協力強化の重要性が再確認された。
3 主な成果文書
- 今次会合では,会合における議論の結果を踏まえ,議長より議長総括(英語本文(PDF)
,日本語仮訳(PDF)
)を発出。
- また,今次会合に参加したIEA加盟国の閣僚より,気候変動対策の重要性やIEAが提案する気候変動対策を支持する旨を記した気候変動に関するステートメント(英語本文(PDF)
,日本語仮訳(PDF)
)を発出。
- さらに,IEAとパートナー国6ヵ国(ブラジル,中国,インド,インドネシア,ロシア及び南アフリカ)は,IEAとのアソシエーションを追求することに関する相互の関心を表明する共同宣言(英語本文(PDF)
,日本語仮訳(PDF)
)を発出。
- なお,IEAとパートナー各国との間の個別の協力文書については,中国,インド,ロシアとの間では前回の閣僚理事会の際に合意された共同声明を,ブラジル,インドネシア,メキシコ,南アフリカとの間では同じく過去合意された共同作業計画を個別に更新。
(1) 議長総括の概要
- IEA設立40周年に際し,閣僚は,世界のエネルギー市場に直接的な影響を及ぼす,変遷するエネルギー風景や地政学によって提起された課題に対応するために必要な政策戦略を中心に議論を実施。
- エネルギー安全保障がIEAのマンデートの基盤であると認識しつつ,閣僚は,確実で且つ受容可能な価格で効率的なエネルギー供給を促進する必要性について合意。
- 閣僚は,各国の政策や状況に合致することを前提とした,天然資源の安全且つ持続可能な開発,新たな輸送路,再生可能エネルギー,及び原子力を含む低炭素技術による供給の多様化を歓迎。
- 閣僚は,エネルギー効率及びエネルギー多様化がエネルギー安全保障を高める際に果たす役割を認識。
- 閣僚はIEAと各パートナー国間の個別の共同声明及び共同作業計画の更新によって協力が強化されることを歓迎。
- 閣僚は,IEAとブラジル,中国,インド,インドネシア,ロシア,南アフリカによるアソシエーションを追求することに関する相互の関心を表明する共同宣言を歓迎。
- 閣僚は,エネルギーと気候変動の関係を強調した気候変動に関するステートメントを史上初めて発表。
- 閣僚は,受容可能な価格の近代的なエネルギーサービスへのアクセスを増大させる努力への支援を表明。
- 閣僚は,IEAにおける多国間の技術協力イニシアティブを含む,クリーンエネルギー技術に関する研究,開発及び普及を強化するための努力を促進することに合意。
(2) 気候変動ステートメントの概要
- 世界の温室効果ガス排出量の約3分の2はエネルギー部門によるものであり,エネルギー部門でとられる行動は気候変動を抑制する上で極めて重要。
- 2020年までにエネルギー部門の温室効果ガス排出量を削減するための大きな機会を提供する4つの実用的なエネルギー政策措置に関するIEAの分析を歓迎。
- 2015年に開催される気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)での妥結を目指す新たな合意に向けた自国の削減目標を策定する上で,これらの政策措置を考慮するよう奨励。
(3) IEAとパートナー国間の共同宣言の概要
- IEAとパートナー国であるブラジル,中国,インド,インドネシア,ロシア及び南アフリカは,グローバル・エネルギー問題やエネルギー安全保障は生産国、消費国、通過国による共通した解決策を必要とするとの共通理解に基づいて協力関係の一層の緊密化を追求する意図を表明。
- 多国間の協力(アソシエーション)を開始しようとする意図は,近年IEAとパートナー各国が個別に発展させている広範な協力に立脚。
- アソシエーションは,相互の関心分野において(IEAとパートナー国が)協働するための効率的で任意の手段を提供。
4 主な議論の内容
(1) 開会セッション「世界エネルギー展望2013年」(19日)
- エネルギー価格の地域間価格差がエネルギー効率やイノベーションに与える影響をはじめ,経済的にどのような影響を与えうるのか,2020年までに経済成長を止めることなく,温度上昇を抑制することが可能か,石油・ガス市場における諸課題等について議論が行われた。
- 赤羽経済産業副大臣から,リード・オフ・スピーカーとして,IEAが40周年を迎えたことに対し祝意を表明するとともに,シェール革命や福島原発事故等の影響による世界のエネルギー情勢の変化に焦点を当てつつ,エネルギー問題の解決にあたり,更なる技術の発展が進み,低廉かつ安定的なエネルギーの持続可能な供給が実現することへの期待や,我が国としては先進技術をもって貢献していく旨発言した。
- 全体セッションが行われた後,「競争力」,「石油とガス」,「気候変動」という3つのテーマによる分科会が開催され,それぞれのテーマに基づき活発な議論が行われた。
(2)第1セッション「変わりつつあるエネルギー地図がエネルギーの競争力に与えるインプリケーション(20日午前)
- 変わりつつある世界のエネルギー市場の構図やそれが地政学や競争力等に与える影響,透明かつ信頼できるエネルギー・データの重要性等に関する議論が行われた。
(3)第2セッション「気候変動とエネルギー:その相互作用」(20日午前)
- エネルギーが気候変動や環境に与える影響について,また逆に気候変動や環境がエネルギーに与える影響に関する議論が行われた。
(4)第3セッション「エネルギー安全保障と協力の再定義」(20日午後)
- エネルギー安全保障の概念の拡大,主要非加盟国との協力関係の重要性,エネルギー・グローバル・ガバナンスにおけるIEAの役割等に関する議論が行われた。
- 兒玉OECD代表部大使から,(ア)ガスの安全保障の重要性が一層高まっており,IEAがガスの供給途絶にも適切に対処するべく緊急時対応能力を向上させることが重要,(イ)より柔軟で,より透明性のあるガス市場がアジアにおいても構築されることにより,天然ガスの国際的取引が活性化することが重要,(ウ)日本は,エネルギー分野のODAにおいて,2011年までの5年間で,OECD・DACメンバー中トップドナー。世界の包括的なエネルギー安全保障の強化に資するべく,引き続きODAを有効活用していく,(エ)世界のエネルギー・ガバナンスのため,IEAがパートナー国との協調を強化していくことが不可欠,(オ)IEAが,他のエネルギー関連国際機関・フォーラムとの実質的な協力関係を着実に深化させながら,国際協力の中核として主導的な役割を果たし続けることを期待する旨発言した。(英語本文(PDF)
)