外交政策

平成25年9月25日
1.山本内閣府特命担当大臣の出席

(1)9月16日から20日まで,ウィーンにおいて国際原子力機関(IAEA)第57回総会が開催され,我が国政府代表として山本一太内閣府特命担当大臣(科学技術政策)が出席した。

(2)山本大臣は,総会初日に一般討論演説(演説順序は3番目)を行い,我が国の原子力政策について,安倍政権の下,責任あるエネルギー政策を策定すべく,前政権の方針をゼロベースで見直すと説明するとともに,汚染水問題を含む東京電力福島第一原発事故について,政府が責任を持って取り組み,IAEAを始めとする世界の技術や叡智を結集して対応する旨表明した。
(3)その他,山本大臣は,天野IAEA事務局長,モニーツ米国エネルギー長官,ビゴ仏原子力庁長官との会談を行い,汚染水問題を含む福島第一原発事故について,我が国の取組状況等を説明した。
 
2.事務局長演説

 総会初日冒頭の演説において,福島原発事故に関する包括的な報告書を2014年にまとめる旨発言した他,東京電力福島第一原発における汚染水流出には喫緊の対応が必要であり,IAEAはいつでも日本を支援する用意がある旨発言した。
 
3.主要な議題 

(1)天野事務局長の再任
本年3月のIAEA理事会において決定された同事務局長の再任につき,総会において同決定が承認され,本年12月1日より2期目に就任することが決定した。

(2)北朝鮮
北朝鮮の核問題について,北朝鮮による本年2月の核実験を非難し,5MW黒鉛減速炉及びウラン濃縮活動を再調整,再稼働させる旨の北朝鮮による最近の声明,ウラン濃縮施設の活動及び拡張等を含む現在進行中のすべての核活動につき深い遺憾の意を表明する等を内容とする「IAEAと北朝鮮との間のNPT保障措置協定の実施」に関する決議がコンセンサスで採択された。

(3)原子力安全
原子力安全については,昨年に引き続き,最高水準の原子力安全を達成することを目的として,IAEA原子力安全行動計画の包括的な実施を求めるとともに,福島第一原発事故の経験を今後の国際的な原子力安全に生かしていくとの方針やIAEAが作成する包括的報告書を2014年内に完成させる旨の決議がコンセンサスで採択された。

(4)核セキュリティ
昨年の総会と同様加盟国に対し,核物質及び原子力施設の高いレベルの核セキュリティを維持し,核セキュリティ強化のための国際的な取組に対して支援提供を検討すること等を求める決議がコンセンサスで採択された。

(5)中東におけるIAEA保障措置の適用
すべての中東域内国にNPTへの加入を求めるとともに,IAEA保障措置に関連する国際的な義務の遵守を求め,すべての関係国に域内の非核地帯設立に向けた取組を求める決議が,賛成多数で採択された(決議全体は賛成114(我が国他),反対0,棄権12,すべての域内国に対してNPTへの加入を求めるパラ2は分割投票にかけられ,賛成112(我が国他),反対2,棄権11。)。

(6)イスラエルの核能力
イスラエルの核能力に関し,核兵器の拡散が中東の安全と安定にもたらす影響について懸念を表明し,アラブ諸国が,イスラエルに対しNPTへの加入を求めること,及び,すべての核施設をIAEA保障措置下に置くことを要請する等を内容とする決議案をアラブ諸国が提出したが,反対多数で否決された。(賛成43,反対51(我が国他),棄権32。)

(7)保障措置の強化・効率化
保障措置協定に反する核物質の利用を防止するために,効率的な保障措置の必要性,各保障措置協定締結国が協定上の義務を完全に履行することの重要性を強調するとともに,本年9月に理事会に提出された「国レベルの保障措置実施の概念及び進展」に関する報告書について,事務局長が次回総会まで同報告を補完する文書を作成するとしていること等に留意する内容の保障措置決議案がコンセンサスで採択された。

(8)技術協力,原子力応用に関する決議
技術協力に関しては,技術協力活動強化の必要性を強調するとともに,技術協力プログラムを通じて加盟国間の原子力技術及び同ノウハウの移転を原子力の平和利用のために促進するよう事務局に求めること等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。また,原子力の応用に関しては,小中型炉を用いた飲用水の生成,サイバーズドルフ研究所の改修,アフリカ連合ツェツェ蠅及び眠り病撲滅キャンペーン(AU-PATTEC),及びアイソトープを利用した水資源管理におけるIAEAの活動の重要性を確認すること等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。

(9)新規加盟国
バハマ,ブルネイの新規加盟が承認された。
 
4.政府主催のサイドイベント

 16日,我が国政府は,今次総会のサイドイベントとして,東京電力福島第一原子力発電所事故に関する最新の技術情報及び汚染水問題への対応状況を国際社会に共有することを目的として説明会を実施した。

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