外交政策
「成長のための栄養:ビジネスと科学を通じた飢餓との闘い」イベント(概要)
平成25年6月10日
6月8日,英国(ロンドン)において,「成長のための栄養:ビジネスと科学を通じた飢餓との闘い」と題するイベントが開催されました。本イベントは二部構成となっており,同日午前には,「ハイレベル栄養イベント」が開催され,午後には,昨年のG8キャンプ・デービッド・サミットで立ち上げられた「食料安全保障及び栄養のためのニュー・アライアンス」のイベントが開催されました。
なお,今次イベントには,グリーニング英国際開発大臣をはじめとする開発協力を担当する各国閣僚級や援助機関の長,アフリカ諸国の首脳や閣僚級,民間企業や市民社会の代表らが出席し,我が国からは田中明彦国際協力機構(JICA)理事長(今次イベントには,外務省参与として参加)が出席しました。
1.ハイレベル栄養イベントの概要
(1)午前中のハイレベル栄養イベントは,2020年までに少なくとも2000万人の子どもを発育障害(stunting)から守り,170万人の命を救うことを目的に,英国政府,ブラジル政府,及びザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド財団(CIFF)の共催の下に開催されました。冒頭キャメロン英首相が挨拶を行った他,バンダ・マラウイ大統領,テメル・ブラジル副大統領,ケニー・アイルランド首相,ビル・ゲイツ・ゲイツ財団共同議長を含む多くの各国政府,国際機関,民間企業及び市民団体等の代表が参加しました。
(2)ドナーによる支援表明として,栄養分野への直接支援に総額約41.5億ドル,及び水・衛生,保健等栄養改善に資する間接支援(nutrition-sensitive assistance)として約190億ドルの支援が約束されました。また,14の途上国政府からも,自国の栄養不良対策のための予算を増額するとのコミットメントが表明されました。
(3)我が国を含む90以上の政府・民間企業・市民団体等が,成果文書である「成長のための世界的な栄養コンパクト」を承認しました。この進捗のフォローアップについては,本年から毎年,国連総会の際に年次報告書を発出し,ストックテイク会合を開催するとともに,ブラジル政府が本イベントにて開催を表明した2016年のリオ・オリンピックの際のハイレベル栄養イベントを通じて行っていくこととなりました。
(4)我が国からは,政府代表として,田中明彦外務省参与兼JICA理事長が出席し,TICADVで発表した栄養も含む保健分野への500億円の支援や,アフリカの乳幼児の栄養不良を予防するための支援を含む世界銀行を通じた1億ドルの支援等を表明しました。また、味の素株式会社より,JICAが支援し,同社がガーナで進めている,離乳食に添加する栄養サプリメントの製造と販売に関するBOPビジネスの取組が発表されました。
(5)なお,本イベントは,オリンピックの機会を活用して,地球規模の課題に対する具体的な行動を国際社会に求めようとするキャメロン英首相主導の試みの一環であり,昨年のロンドン・オリンピックの際に英国政府と2016年の夏期オリンピック開催国であるブラジル政府の共催にて開催された「飢餓サミット」に続く取組としても注目を集めた他,本イベントの開催に合わせて,ハイドパークで多くの市民が参加して行われた飢餓と栄養不良への対策を求めるIFキャンペーン(Enough Food for Everyone IF Campaign)とともに,メディアに大きく取り上げられました。
2.食料安全保障及び栄養のためのニュー・アライアンス・イベントの概要
(1)午後のニュー・アライアンスに関するイベントでは、これまでの進捗の確認と共に新たなパートナー国の拡大の公表が行われ,G8からの参加者に加え、バンダ・マラウイ大統領,ダンカン・コートジボワール首相,ピンダ・タンザニア首相、アナン元国連事務総長、ヌワンゼIFAD総裁を含む各国政府,国際機関,民間企業及び市民団体等の代表が参加しました。オープニング・セッションでは,アナン元国連事務総長より,アフリカ農業の変革の必要性,民間投資を小規模農家,特に女性に裨益するような責任ある形で推進することの重要性が指摘され、続いてグリーニング英国際開発大臣より,投資はアフリカの成長・農業開発の重要な触媒であり、政府によるビジネス環境整備が重要であることが強調されました。
(2)第1パネルでは,シーラン世界経済フォーラム副会長の司会の下,田中外務省参与兼JICA理事長及びファンティーノ・カナダ国際協力大臣,モザンビークの民間企業代表,ユニリーバCEO,オックスファム代表等がパネリストとなり,アフリカ農業における責任ある民間投資促進のための優先事項について議論されました。田中外務省参与兼JICA理事長より,TICADVで表明した小規模園芸農民組織強化プロジェクト(SHEP)の拡大及びアフリカ稲作振興のための共同体(CARD)の取組を紹介し,今後G8が我が国の財政的貢献の下,関連国際機関による「責任ある農業投資に関する未来志向の調査研究」を実施する旨発表しました。また、セネガルがニュー・アライアンスに参加予定であることが発表された他,民間投資と共に公共投資の重要性等も指摘されました。
(3)第2パネルでは,シャーUSAID長官の司会の下,ニュー・アライアンスの進捗報告書が公表され、コートジボワール首相,タンザニア首相,エチオピア農業変革庁CEOよりそれぞれの協力枠組みの進捗が報告されました。また,各国で活動している民間企業の代表より,公的資金による中小企業支援や農村部での電力等のインフラ整備等の支援の必要性が指摘されました。
(4)第3パネルでは,ピエバルクス開発担当欧州委員の司会の下,マラウイ,ベナン,ナイジェリアが新たなパートナー国となり,協力枠組みが完成したことが発表されました。バンダ・マラウイ大統領,アリファリ・ベナン外務大臣,アデシナ・ナイジェリア農業・農村開発大臣より,これらの国の協力枠組みにおける女性の能力強化支援,気候変動への対応,ビジネスとしての農業の改革と強化及び栄養改善に向けた強い決意と民間投資への期待が表明されました。また、新たなパートナー国となった各国の民間企業代表からも期待が表明されました。
(5)クロージング・セッションでは,ロビンソン元アイルランド大統領より,民間企業の役割と同時に政治の強い意志も必要であること,ナバロ国連事務総長特別代表(食料安全保障・栄養担当)より,地域住民,企業,政府の3者が取組の主役であり,民主的な政府,責任ある統治,市民社会組織の存在が重要であること,ピース・アフリカ連合委員会農村経済・農業委員より包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)促進への取組への感謝が表明され,最後にグリーニング・英国際開発大臣より,本日表明した活動の成果への期待が表明されました。
- 成長のための世界的な栄養コンパクト(PDF)
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