ODAと地球規模の課題
第36回南極条約協議国会議(ATCM36)概要
- 南極における環境の保護、捜索救難活動について集中的な議論。2014年からの複数年戦略計画を採択。
- 環境上の緊急事態から生じる責任に関する南極環境保護議定書の附属書VIについて、協議国の約半数が締結又は議会に提出済み、その他の国の大半も締結手続きを進めていることが明らかになった。我が国としても早急に検討する必要がある。
2.各論
(1)新規協議国の参加
チェコが2014年4月より新たな協議国として迎えられることが全会一致で決定された。
(2)環境上の緊急事態から生じる責任に関する附属書
環境上の緊急事態から生じる責任に関する南極条約環境保護議定書の附属書VIを大多数の国が締結していることが報告され、南極で環境損害が生じた際の環境保護に対する協議国の準備が大きく前進していることが判明した。我が国としても同附属書の国内体制の整備に向けて検討を進めていく必要がある。
(参考)附属書VIの締結状況
- 前回の協議国会議までに締結済み:スウェーデン、フィンランド、イタリア、ペルー、ポーランド、スペイン
- 今会議の直前、又は会議中に締結:ノルウェー、NZ、英、ロシア
- 議会で承認済み:豪、蘭
- 議会に提出済み:米
- 法案作成作業中:仏、独、中、ウルグアイ、ブラジル
(3)南極における捜索救難
近年南極において船舶等の事故が頻発していることから、捜索救難活動に関する特別作業部会が23日に開催された。これまで南極観測実施責任者評議会(COMNAP)で実施した2回のワークショップにより、南極域を担当する5つの救難調整センター(RCC)と各国の南極観測実施責任者及びRCC間の情報共有が進み、より円滑な捜索救難(SAR)活動が可能となっている。今後もCOMNAPが定期的にワークショップを開催し、漁船や観光船等の遭難に対して迅速な救難活動ができるよう、各南極基地にあるSAR活動に利用可能な施設等の情報を共有する等の決議が採択された。
(4)観光・非政府活動への対応
近年、年間3万人前後の観光客が南極を訪れており、大型観光船のみならずヨット等小型船舶を使ったものや冒険旅行など、活動の形態も多様化している。このような状況を受けて、情報交換のあり方や観光活動の種類の整理などに的を絞って議論が行われた。
(5)南極地域の環境保護
南極地域には、環境上、科学上、歴史上、芸術上若しくは原生地域としての顕著な価値又は科学的調査の保護のため、72の南極特別保護地区(Antarctic Specially Protected Areas; 以下「ASPA」)、7の南極特別管理地区(Antarctic Specially Managed Areas; 以下「ASMA」)、及び86の南極史跡記念物(Historic Sites and Monuments; 以下「HSM」)が設定されている。これらASPA及びASMAには、それぞれが有する価値を保護するため、地区毎の管理計画が策定されており、これらに基づき、厳正な保護がなされているところである。今次会議では、16地区のASPAの現行管理計画の改正、1地区のASPAの管理計画の新規採択、1地区のASMAの現行管理計画の改正、4カ所の新規HSMの追加等が採択された。
(6)会議の運営に関する事項
会議の効率的な運営のために、今後どのような問題を優先的に扱うかを示す作業計画の作成が議論され、来年は情報交換のあり方、航空及び海上の安全、及び地域管理と観光関連施設のあり方に重点を置いて議論するとともに、毎年優先事項を見直していくことになった。
(7)次回会議
第37回南極条約協議国会議は、2014年5月12日から21日まで、ブラジリアで開催される予定。
南極条約は、1959年に採択され、1961年に発効。2013年5月29日現在、締約国数は50。そのうち、我が国を含む29カ国が協議国となっている。我が国は、同条約の原署名国であり、1960年に同条約を締結、協議国として、南極地域における平和の維持、科学的調査の自由の保障とそのための国際協力、軍事利用の禁止、領土権主張の凍結、環境保全と海洋生物資源の保存等の面で、積極的役割を果たしてきている。その後、1991年には環境保護に関する南極条約議定書が採択され、環境影響評価(附属書I)、南極の動物相及び植物相の保存(附属書 II)、廃棄物の処分及び廃棄物の処理(附属書 III)、海洋汚染の防止(附属書 IV)、南極特別保護地区規定等(附属書 V)と共に1998年に発効、南極の環境及び生態系の包括的保護が進められている。